再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その68

「こんにちは入谷さん、はじめまして介護士の岡崎良太とゆいます…」

そ〜いって…、良太は頭を下げる。…今日は新しい入居者さん、入谷敏子さんがご入居された。

…「じゃ敏子さんは、みんなと一緒におやつ食べましょ〜ね」

遅番の安野さんが、…入谷さんを食堂におつれする。

「ではご家族のみなさまは、こちらの持ちモノ一覧表にご記入おねがいします…」

日勤である良太は…、新たな入居者さんの受け入れ業務に当たった。…まだ慣れてはいないが、安野さんに助けられながら何とかこなしてゆる。

「敏子さんの、…ご家庭でのご様子はいかがでしたか?」

ご家族さまに、施設での生活に必要な…。着替えや日用品の確認が終わると…、あとは入居される入居者さんの、これまでの生活振りや性格について聞き取りをおこなうのだ。…ど〜やらこの入谷敏子さんは、そこそこ認知症は進んでいるモノの。おとなしいご性格で、…好きキライなどもあまりないらしい。

「入谷さん、おヤツのお味はど〜でしたか…?」

ご家族さまは…、お部屋の整理を終えられたらお帰りのなるよ〜だ。…「えぇ、とっても美味しかったわ」、入谷さんはそ〜小さな声で返事をされる。おヤツのあとど〜過ごされるかは、…入居者さん方それぞれだ。食堂でT.V.をご覧になったり、ぬり絵などのカンタンなレクリエーションを為さったり。ご希望されれば、お部屋でお昼ねを続けられる方もいらっしゃる…。良太は日勤の業務である…、生活記録を書きながら。…時代劇を観てゆる、石井さんとお話していた。「ピンポーンピンポーン」、…ナース・コールが鳴る。お部屋の番号を確認すると、入谷さんのお部屋である…。「ぼくいきます」と周りに声をかけ…、良太は入谷さんのお部屋に向かった。

…「お父さんが帰って来るから、夕ごはんを作らないと。早く、…おウチに帰してちょうだい」

ここでゆ〜「お父さん」とは、ダンナさんのコトだが…。入谷さんのダンナさんは…、既に亡くなられている。…入谷さんの訴えを、うんうん聞いてゆる良太。10分ぐらいすると落ち着かれ、…良太は食堂に戻り生活記録の続きを書き始めた。それから5分経つと、またしても入谷さんからのナース・コールである…。も〜一度…、良太は入谷さんのお部屋を訪れる。

…「お父さんがも〜帰って来ちゃうわ、早く夕ごはん用意しないと」

要は、…先程と全く同じ内容だ。良太は、またうんうん聞いてゆる…。そして今度もやはり…、10分ぐらいで納得された。…お部屋を出る時良太は、「これは三回目があるかな?」と考える。その予想は当たっていて、…果たして三度目の正直であった。考え方を変える良太、「これは根性をすえなきゃダメだ…」良太はも〜それから…、ずっと入谷さんのお部屋にゆるコトにした。…入谷さんは夢にうなされるよ〜に、断続的に「お父さんの夕ごはん」について口にする。それを良太はずっと聞いていた、…話を聞いてゆるウチに少しずつ入谷さんの不安を実感する。一時間半が過ぎた頃、お部屋の扉がノックと共に開き安野さんが顔を出した…。

「入谷さん…、そろそろ夕ごはんのお時間ですよ」

…入谷さんのお話を聞くのに夢中で、良太は時間を忘れていたのである。入谷さんを車イスに移乗し、…食堂へお連れする良太。

「ずっとお話し聞いてたワケ、全く気がゆいわね…。生活記録は書いといたから…、安心して」

…そ〜ゆえば、すっかり忘れていた。そ〜なのだ、…日勤の業務は夜勤への引き継ぎまでである。