再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その70

「今日さ、お仕事終わったら飲みゆこ〜よ…。良太くん早番じゃない…、私日勤だからちょっと待っててよ」

…安野さんはお昼休憩からあがると、そんなお話を持ちかける。

「ゆいですよ、…またいつもの"とりよし"でしょ?」

二つ返事で引き受ける良太、それから三時間ぐらい経って…。おヤツ介助も終わり…、早番のあがる時間夕方4:00となった。

…「おつかれさまで〜す、あがりますから。それじゃあみなさん、…ぼく次はあさって来まのでそれまでお元気で」

幸楽苑」に勤める介護士と入居者さんにあいさつすると、良太はタイム・カードを切って…。更衣室で着替える。日勤が終わるのは夕方5:30なので…、一時間半時間をつぶさなければならなかった。

…「そ〜ゆえばこの時間、ヒマなのはぼくだけじゃなくて。入居者さんも介護士も、…特にやるコトないんだよね」

喫煙所に移動すると、ポケットから「セブン・スター」を取り出し…。火を点けて煙を吐き出しながら…、良太は想う。入居者さん達のおヤツが、…15:00から始まり。そんなの30分もあれば終わってしまう、…そして夕ごはんの為に食堂に集まってもらうのが17:00頃からだから。その一時間半は空いてゆるのだ、モチロンお疲れになっている入居者さんはお部屋でやすまれた方がゆいだろ〜…。でも良太と仲のゆい石井さんみたいに…、「この鬼平犯科帳も何回観たかわからねぇや」とゆ〜方もいらっしゃった。

…「"何か"演るなら、この時間だな」

そして何より、…その時間は介護士にとって。こなさなければならない業務も、取り立ててない…。…強いていえば日勤が夜勤に引き継ぐ為、生活記録をまとめるそのぐらいだ。良太は煙草を三本吹かしながら、…そこまで考えをまとめた。

「ぼく、"何か"レクリエーションを演りたいんです…」

それから二時間ぐらい経って…、良太は安野さんと「とりよし」で飲んでゆる。

…「さっきぼくが待ってた時間って、あれみんなやるコトないじゃないですか?」

生ビールをゴクゴク飲む安野さん、…安野さんは良太より断然お酒が強かった。

「確かに、あの時間ヒマなんだよね…。私生活記録まとめてたケド…、それもそんなかからないし。…でも起きてらっしゃる入居者さん、そんなにいる?いつも三人ぐらいじゃない、…まぁT.V.観てるよりはゆいのかな」

「セブン・スター」を吹かし、良太も残った生ビールのジョッキを空けてしまう…。

「それでお金がかけられないとなると…、ど〜しよう」

…しばらく黙っていた安野さんだが、再び口を開いた。

「あのさ、…先ず体操でも演ってみたら?体操なら、調べればすぐ出来るしカンタンでしょ…?いきなりレクリエーションってゆ〜と難しいから…、体操なら健康にもゆいしさ。…先ず、実績を作らないと」

安野さんの言葉が、…良太にもピンと来る。

「それ、ゆいですね…。じゃ〜ぼく…、起きてらっしゃる三人の入居者さん相手に体操演ろ〜。…体操なら続けるのもラクだし、安野さんありがとうございます」

体操なら、…確かに他の介護士の助けもいらないだろ〜。よし明日のおやすみは、勝美さんと大宮でデートだ…。