アーシャ南の大陸に舞う その28

アーシャは、試しに前へ一歩踏み出してみます…。

「よし…、まだゆける!!」

…確信したアーシャは、「魔法の盾」を構え「カリフの剣」を一振りしました。

「来なさいザハス、…まだ決着はついてないわ!」

アーシャは、一喝します…。

「クックック…、ずい分威勢がい〜。…伝説の勇者などとはゆっても、その程度の力か。決着などいつでもつけられる、…どれも〜少し遊んでやるか」

片方の腕をアーシャのトコロまで伸ばしたザハスは、手のひらから小さな竜巻きを発生させました…。アーシャは…、走って走ってかわします。…そこに襲いかかる、も〜片方の腕。それをかい潜り、…ジャンプしよ〜とするアーシャ。

ズキッ、アーシャの体に痛みが走り…。アーシャは…、一瞬ひるんでしまいます。…そこに覆い被さる、ザハスの手のひら。「小さな竜巻きが来る」、…アーシャは想いましたが。ザハスは、手を引っ込めました…。

「フッ…、私はゆったハズだ。…まだ決着はつけんとな、そら逃げ惑うがい〜。何なら、…命乞いの一つでもしてみるか?」

「プイプイ…!!」

ぺぺは…、それを聞いて激昂します。…ザハスに向かって、ものすごい勢いで突撃しました。

「こうるさいヤツだ、…黙っておれ」

腕を伸ばし手のひらから小さな竜巻きを発生させるザハス、しかしぺぺの勢いはそんなコトでは止まりません…。

「ならば…、こ〜してやろう。…力で押し潰してくれる!」

ザハスは息を吸い込むと、…稲妻をまとって突進します。バキッ、っとぺぺとザハスは正面からぶつかりました…。

「プイプイ!!」…、押し合いは一進一退です。…がますますザハスは放電し、徐々に押し始めました。

「ぐおぉ、…フル・パワーだ!」

遂に弾き飛ばされるぺぺ、しかしザハスも相当息があがったよ〜です…。

「ゼーゼー…、ようやくおとなしくなったか。…しかし油断は禁物だな、これでそこのダンツにまで余計なコトをされては。ど〜なるか、…伝説の勇者今こそ決着をつけてやる」

ザハスは両の手のひらを揃え、アーシャに向けました…。そして…、そこから放たれる突風と大量のかまいたち

…「うっ、く」

突風と切り傷の痛みで、…全く身動きの取れないアーシャ。盾で防ぎ、致命傷はまぬがれますが…。腕や脚を細かく切り裂かれ…、アーシャはおしりから地面につきます。…少しずつではあっても、確実に流れる血。アーシャは、…頭がクラクラし始めてゆました。

「覚悟は出来たか、伝説の勇者よ…。お前の命は…、も〜一吹きでかき消えてしまうだろう。…神にでも祈るがい〜、所詮無力な存在である神にな」

両の手のひらを、…揃えるザハス。

「わしには、何も出来んのか…。ぺぺ殿もあんなに勇敢に立ち向かったとゆ〜のに…、わしは無力なのか。…ん、そ〜じゃ!!」

荷物から大慌てで巻き物を取り出し、…ダンツは急いでお経を唱えます。

「死ね、アーシャよ…」

ザハスの手のひらから…、突風が吹き荒れ始めた時。…ザハスの前に、立ちはだかるダンツ。

「ダンツさん、…だめっ!」

ところが、ダンツはザハスの前にしっかり踏ん張ってゆました…。

「アーシャ殿…、今わしの周りは"魔法の壁"に覆われておる。…しばらくは持ちこたえられるじゃろう、この隙にわしを踏み台にして。ザハス本体の竜巻きの中の、…心臓に一撃をお見舞いするんじゃ。さぁ、早く…!!」

ダンツの勇気に…、ザハスの怒りは頂点に達したよ〜です。

「…この虫けらめ、邪魔しよって。さっさと消え失せろ、…お前は私の」

最後の力を振り絞って、駆け出すアーシャ…。アーシャは…、素早くジャンプして。…ダンツさんの肩を蹴り、さらに高く跳びあがりました。

「バ、バカな、…私が敗れるとゆ〜のか?ワレラ星人め、話が違うではないか…!」

ザハス本体の竜巻きの上空をとったアーシャは…、そのまま剣を体の下に構え。…「下突き攻撃」で、ザハスの巨大な心臓を貫きます。

「グワッグワッ、…グワ〜!!!」

嵐の魔人は七色に輝いて爆発し、そのあとには元の姿に戻った…。

人間の…、ザハスが倒れてゆたのです。

 

アーシャ南の大陸に舞う その27

…果たして、ザハスは正体を現しました!!ワレラ星人に魂を売ったザハスは、…巨大な心臓の周りに茶褐色の竜巻が渦を巻き。そこから長〜く伸びた両の腕、そして不気味に光る二つの瞳とゆ〜…。異形の姿です…、アーシャは悲しいと想いました。

…「ど〜したのだ、伝説の勇者とやら。かかって来ないなら、…こちらからゆくぞ!」

長い腕の片方を、アーシャに向けて伸ばし…。上空で手のひらを下に向けると…、そこから小さな竜巻を発生させるザハス。

…「このぐらい、何てコトないわ!!」

アーシャは、…バク転で難なくかわします。

「まぁ、今のは小手調だ…。お次は…、少し課題を難しくしてやろ〜」

…ザハスは、も〜片方の腕を伸ばし同じよ〜に小さな竜巻でアーシャに攻撃しました。

「それは、…通用しないってゆったでしょ!」

ダッシュして前にかわすアーシャ、トコロがそこにもう一本の腕が襲いかかります…。アーシャは…、地面を蹴って左によけます。

…「さぁさ、まだ続くぞ。次は、…ど〜だ」

そこにさらに、最初の腕が迫って来ました…。しかしそれを…、アーシャは前転でかい潜ります。

…「もしかしたら、あの手には攻撃が通用するかも知れない」

とっさにそ〜考えたアーシャは、…立ち上がると同時に跳ねあがり。長い腕の先端の手に、斬りつけました…。

「ギャッ」…、と叫ぶと腕を引っ込めるザハス。

…「フン、小賢しい真似を。だが、…私の力はこれだけではないぞ!!」

息を、吸い込み始めるザハス…。すると…、ザハスの本体の竜巻の周りに風が集まり。…放電して、稲妻をまといます。

「ゆくぞ、…伝説の勇者。これでも、食らえ…」

ザハスは、アーシャに向かってまっすぐに突進しました…。

「ずいぶん…、のんびりなのね。…私のスピードに、ついて来られる?」

素早く、…駆け出すアーシャ。そのうしろを、辺りの木々をなぎ倒しながら追うザハス…。ジャンプしたり前転したりを繰り返しながら…、どこかに弱点が無いか。…様子をうかがうアーシャ、「やっぱりあの巨きな心臓かしらね?」

しかし、…下手に手を出せばあの稲妻に巻き込まれかねません。「も〜少し、このままこ〜していよ〜」とアーシャは逃げの一手です…。

「いつまでも…、逃げられると思うなよゼー」

…アーシャは、ザハスの息があがり勢いが弱まったのを確認します。

「そ〜よね、…あなたのゆ〜とおりだわ!」

振り返ると、アーシャは全体重をかけて…。突きを繰り出しました…、バチバチッ!!…稲妻と竜巻の勢いにさえぎられて、決定打とはなりませんでしたが手応えはあったよ〜です。

「ウグっ」、…ザハスは、後ろに退がってアーシャから距離を取りました。

「ぐぐッ、おのれ私の邪魔をするのはダンツだけではなかったか…。い〜だろう…、とどめをさしてやる!」

…両の手のひらを揃えて、アーシャに向けるザハス。

「これが、…私の必殺技だ。格の違いを、よく味わえっ…!!」

ザハスの両の手のひらから…、まるで散弾銃のよ〜に…。た〜っくさんのかまいたちが、…突風と共に放射状に飛び出します。

…「くっ、これは」

アーシャは、…突風の勢いで身動きが取れません。そこに、大量のかまいたちがおそいかかりました…。

ズバッ…、ビシッ!

…盾で防ぐアーシャですが、全てを受け止めるワケにはゆきません。盾で覆われていない、…腕や脚に多くの激しい切り傷を負います。

「だ、大丈夫か、アーシャ殿…!!」

ぺぺに守られながら…、心配して叫ぶダンツ。

…「ヘーキですよ、ダンツさん。このぐらい、…何でもないです」

アーシャの言葉は、強がりでした…。確かに致命傷ではありませんが…、傷口はズキズキと痛みます。…このままではやがて、アーシャ最大の武器である。スピードが、…発揮出来なくなるでしょう。

「伝説の勇者よ、お前にはこの攻撃はかわせんらしい…。ど〜やら…、勝負あったな」

…ザハスはそ〜語ると、巨大な瞳をニヤリとさせました。

アーシャ南の大陸に舞う その26

山頂まで、…も〜少しのトコまで来てゆるアーシャ達。…空気も薄くなり、背の高い木ももはや見当たりません。ゴツゴツした岩場に…、短い草が点在しています。フと下を見るアーシャ、すると何と…。遥か彼方に小さくなった、…ダオカーナ寺院から出火し不吉な影が舞っていました。

…「ダンツさん、早く戻りましょう。でないと…、みんながみんなが!!」

アーシャは、動揺を隠せません…。

「恐らく、…モンスター達の襲撃じゃろうな。…持ちこたえられる、とゆいが」

アーシャの声に…、振り返って下を眺めるダンツ。

「何で、そんなに落ち着いてるんですか…。ゆくわよ、…ぺぺ!」

…口笛を吹こうと口に指を当てるアーシャ、とその腕を抑えるダンツ。

「情に流されてはゆかん…、アーシャ殿!!ダオカーナにも、戦力はある…。わしら僧達は、…みんな戦えるんじゃ!…それよりも、現在のわしらは。一刻も早く…、ザハスとワレラ星人を倒し。神さまの像を修復するコトじゃ、それさえ済めば全て終わるんじゃから…」

ダンツは、…敢えて厳しい口調でアーシャを戒めます。

…「でも、でも私は」

目に…、涙を浮かべるアーシャ。

「悔しいのは、わしも一緒じゃよ…。どちらにせよ、…ここからでは間に合わん」

…アーシャは、わっと大泣きしてしまいました。

「プイプイ」…、アーシャに「いこいこい〜こ」するぺぺ。

ダンツは工作隊と相談し、しばらくこの場でやすむコトにします…。アーシャの気分が、…戻るまで先へは進めません。

…それから、しばらくして。

「みなさん…、タイヘンごめんなさい。私、も〜大丈夫です…。却って、…時間をかけてしまいました」

…ダンツは、岩場から立ち上がりました。

「責めても…、仕方がないんじゃ。何、これから取り戻してもらうからの…」

ほのかに笑う、…ダンツ。

…アーシャの気持ちが落ち着くと、再び出発です。しかし…、周りは岩が多く。工作隊の資材車は、前に進めません…。

「モンスター達を警戒せねばいかんとゆっても、…これはさすがにぺぺ殿の力を借りなくてはな。…ぺぺ殿、お願い出来るか?」

「プイプイ」…、ぺぺにはお安い御用でした。両手で、ひょいと資材車を持ち上げると…。先まで進んで、…降ろします。

…「さすがの大力、アーシャ殿の旅を影で支えるだけはある」

ぺぺのパワーに…、ダンツもうなりました。そんなコトを繰り返して、少しずつ進みます…。

そして、…いよいよ山頂でした。…山頂には、2/3が崩れた神さまの像の上に一人の男が座っています。

「ザハス…、お主何故神さまを裏切ったんじゃ!!?」

男の顔を見るなり、叫ぶダンツ…。ど〜やら、…この黒い法衣に身を包んだ男こそ。…ザハスのよ〜でした。

「あなたが…、ザハスなのね?こんなコト今すぐ止めて、まだ間に合うわ…!」

アーシャの叫びに、…ニヤリと笑うザハス。

…「お前が、噂に名高い。伝説の勇者アーシャか…、私はお前などに用はない。私の目的は、ダオカーナ寺院と神などとゆ〜…。下らない存在への崇拝を止めさせ、…そこのダンツと名乗る虫けらを殺すコトだからだ」

…ザハスの言葉に、ダンツは驚いたよ〜です。

「わしを殺すじゃと…、お主の目的とわしに。何の関係が、あるんじゃ…!!?」

ザハスは、…ダンツの言葉に怒りで顔を歪めました。

…「何だと、白を切るつもりかダンツ?私は…、お前のそ〜ゆうトコロが気に食わん。だから、ネルムに気に入られるのだろう…」

神さまの像から、…飛び降りるザハス。

…「まぁゆい、力の差を思い知らせてやろ〜。ワレラ星人さまから賜った…、この魔人の姿でな!」

山頂全体が、振動し始めます…。

「みんな、…退がって!!…ザハスの相手は、私がするわ!ぺぺは…、みんなを守ってあげて!!!」

アーシャは、ぴゅ〜い♪と口笛を吹きました…。

 

アーシャ南の大陸に舞う その25

果たして…、ダンツの予想通りでした。意識の無いアーシャと工作隊を狙って、モンスター達は次々と襲って来ます…。

「プイプイ」

現在戦っているモンスターは、…ガーゴイル2体。…みなさんは既にご存知の通り、ガーゴイルは遠くから火の玉を投げて来ました。ですから…、ぺぺは大きな体で文字通り盾になってゆます。

「わしはお経を唱え、"魔法の壁"を創る…。そ〜したら、…ぺぺ殿はガーゴイルに突撃してくだされ!!」

…とりだしたお経の、文言を唱えるダンツ。すると…、横にされてゆるアーシャと工作隊の周りが。丸く赤色に、覆われました…。

「プイプイ!」、…それを確認するとぺぺは。

…全力疾走で(決して速くはありません)、ガーゴイル達に突っ込み大きな爪二かきでやっつけます。

「あれ…、私ど〜したの?そ〜だ、ダンツさんが危ないと想ってそれから…?」

空が白み始めた頃、…遂にアーシャは意識を取り戻しました。

…「プイプイ、プイプイ♪」

大喜びのぺぺ…、ぺぺろぐぅは涙を流しませんが。もし人間だったら、泣き崩れてゆたでしょう…。

「ど〜したの、…ぺぺったらそんなに喜んで」

…工作隊の職人さん三人も、ホッと一安心したよ〜です。

「お主はな…、わしをかばったんじゃアーシャ殿。堕落僧に、毒矢で狙われておったわしをの…」

ダンツは、…下を向いたままアーシャにちかづきました。

…「あぁ、あれはその〜。ところで…、ダンツさんはご無事ですか?」

「何か」に、気づくダンツ…。

「わしの身は、…何でもないわい。…そんなコトより、アーシャ殿はも〜少しやすまれた方がゆいじゃろ〜。あまり時間は取れんが…、少なく共今日のお昼頃まではな」

丁寧に、頭を下げるアーシャ…。

「ご迷惑をおかけして、…申し訳ありませんが。…お言葉に甘えて、今しばらくはやすませていただこうと存じます」

とはゆっても…、アーシャは念の為「カリフの剣」と「魔法の盾」は近くに引き寄せます。

それからも、何度となくモンスター達との戦いがありましたが…。ぺぺとダンツは、…何とかアーシャを戦いに参加させずに済ませます。…夜も明けて朝になり、ダンツはぺぺに見張り番を任せて朝ごはんを摂りました。

「わしはな…、アーシャ殿。この南の大陸の、辺境の村ブロンテスに育ったんじゃ…」

お椀にほしいいを盛り、…一口二口すこしだけ水筒からお水をかけるダンツ。

…「ブロンテスの者達はみな貧しい、食べるモノに事欠くコトもある。わしのお家も…、例外では無かった」

アーシャは、うつむきます…。

「しかし子供は大勢ゆる、…わしは小さな頃からずっと働き通しじゃ」

…こんな話を聞くと、アーシャは申し訳なくなりました。アーシャのお家は…、エスタハーン村でもどちらかといえば裕福だったからです。

「わしは、ダオカーナ寺院にお勤め申してから…。精進を苦しいと想ったコトなど一度もないよ、…幼い頃の暮らしの方がずっと苦しかった」

…ダンツもまた、塩こんぶをうまそ〜に噛みました。

「わしは…、だから必ず立派な僧になって。生まれ故郷に錦を飾る、そ〜心に決めておったんじゃ…」

ゆいずらそ〜に、…しばらく黙るダンツ。

…「それが、あんな無茶な誓言になってしもうた。アーシャ殿…、すまなかった」

ダンツは、それだけ語るとアーシャに片手を差し出します…。

 

ダンツの謝罪のテーマ…

Georgia on my mind」 Ray Charles

https://youtu.be/dcODKvvVSOg

 

にっこり笑って、…その手を握り返すアーシャでした。

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その24

聖なる山アルクロドの、…かなり高いトコロまで登って来たアーシャ達。…しかし、アーシャには一つ気がかりになるコトがありました。

それは…、「今日の朝からモンスターによる襲撃が無い」です。

アーシャの実感からゆって、まだそれ程のモンスター達とは戦っていません…。もしザハスが率いる、…ワレラ星人の戦力がこの程度であるならば。…ダオカーナ寺院の僧達は、アーシャの力を借りるまでもなく。自力で解決出来るハズ…、それが何故?事態を怪しんだアーシャは、ダンツに相談してみよ〜と想いました…。

「ダンツさん、…ちょっとお話ゆいですか?」

…「一体、何の用じゃい?」

振り返るダンツの背後に…、キラリと光る「何か」がアーシャの目に入ります。「やじりだ」そ〜直感したアーシャは、とっさにダンツにタックルを浴びせました…。

「危ない、…ダンツさん!!」

…ダンツがよろめくと、ひょうっと矢が放たれ。アーシャの左脇ばらに…、突き刺さります。

「ちっアーシャめ、余計な真似を…!」

舌打ちしながら、…堕落僧が茂みから飛び出して来て。

…そのまま、走って逃げ去りました。

「お主…、待たんかい!!そ、そんなコトよりも、大丈夫かアーシャ殿…」

「プイプイ、…プイプイ!」

…倒れたアーシャのかたわらで、ぺぺがおろおろしています。ど〜やらアーシャは…、意識を失ってゆるよ〜でした。

「安心せい、ぺぺ殿…。わしには、…わずかだが医術の心得もあるし。…傷を癒すお経もある、ムッこれは」

傷口を拡げないよ〜に…、慎重にアーシャから矢を引き抜くダンツ。幸い堕落僧ですから、それ程剛い弓ではありません…。矢そのものの傷は浅いのですが、…この臭いは。

…「これはにごりへびの毒、猛毒じゃ」

このままでは…、アーシャは数時間で命を落とすでしょう。それを防ぐには、お経の前に何よりも迅速に毒を吸い出さなくてはなりません…。

「わしは、…ダオカーナ寺院に入門する時。…一生涯、女性には触れんと神さまに誓った。え〜い…、わしは何を迷っとるんじゃ!!アーシャ殿は、わしをかばったんじゃぞ…!」

アーシャの傷口の周りの衣服を破り捨てると、…口を当てるダンツ。…そのまま、何度も毒を吸い出しては吐き吸い出しては吐きを繰り返します。

「プイプイ」…、「まだじゃ、ぺぺ殿。血を浄化するお経があったハズ、確かここに…」

ダンツは巻き物を取り出すと、…開いてお経を唱え始めました。

…「摩訶不思議なる神さまわしらにそのみ力を

お示し下さい…、南無阿弥」

アーシャの左脇ばらに、手をかざすダンツ…。

「これで、…少しずつじゃが血液はキレイになる。…あとは、傷口をふさぐお経で」

ダンツは…、アーシャの毒矢による傷口の処置を終えます。荷物から取り出したござを敷いて、そこにアーシャを寝かせるダンツ…。

「アーシャ殿は、…も〜大丈夫じゃみんな。…しかし、しばらくは絶対安静。じゃから…、今日はここで野営とする…。工作隊は、…その準備にかかっとくれ。…ぺぺ殿は、わしと二人で不寝番じゃ!!ザハスは…、必ずモンスター達を差し向けて来る。アーシャ殿が戦えない現在は、ヤツらにとってまたとない機会じゃろ〜からな…。わしらは、…何としてもここを死守せんとゆかん!」

…「プイプイ!!!」

怒り心頭に達するぺぺ…、それはザハス達のやり方があまりに卑怯だったからです。

 

アーシャ南の大陸に舞う その23

まだ曇り空ですが、アーシャの苦手な雨は何とか止んでくれました…。アーシャ達がぬかるんだ山道を登ってゆくと…、キレイな泉がコンコンと湧いてゆます。…これを見たアーシャは、も〜大興奮!!

「みなさん、…申し訳ありませんが。ここで、私に水浴びをさせていただけませんか…?」

突然の申し出に…、ダンツはびっくりしてアーシャを振り向きました。

…「しょ〜がないのぅ、これだから女性は。まぁゆいわい、…わしらはこの先で待っとるからの。ゆこう、ぺぺ殿…」

「プイプイ」…、ダンツ、ぺぺ、それに工作隊の職人さん達三人が見えなくなると。…アーシャは、荷物から手桶とタオルそれに石けんを二つ取り出し。着ている服と下着を脱ぎます、…そして手桶に水を汲んで。ザブン、と一浴びしました…。

「くぅ〜…、最っ高!」

…美味しいモノを食べるのもおシャレも、アーシャはモチロン好きでしたが。何よりの大好物とゆえば、…それは体をキレイにするコトだったのです。タオルを濡らし石けんを泡立て、体を優しく洗い始めます…。石けんは…、アーシャの生まれ故郷エスタフ高原の特産品で。…お肌がもちもちし、タオルで拭いたあとも乾燥しません。

「これこれ、…これがたまらないのよ!!」

アーシャは、も〜一つのシャンプー石けんで髪もワシャワシャと洗いました…。全身と髪を…、たっぷりの水ですすいだアーシャは。…気分爽快、また冒険への意欲がむくむく湧いて来ます。

「冒険して、…体をスッキリさせる。こんなシアワセは、人生で他にないわねぇ〜…♪」

荷物から…、バス・タオルを取り出して。…全身の水気を、丁寧に拭い取りました。本当は、…アーシャはお洗濯もしたいのですが。さすがに、そこまでみんなを待たせるワケにはいきませんから…。髪の毛を後ろでフワッと束ねると…、荷物を背負ってみんなに追いつきます。

…またしばらく山道をゆくと、アーシャの視界に光り輝く鳩が入りました。

「ダンツさん、…素敵ですね。南の大陸には、あんなにロマンチックな鳥が飛んでるんですか…」

ダンツは…、アーシャの言葉にハッとします。

…「あれは、わしらダオカーナの者達が連絡に使う。"魔法の鳩"じゃ、…恐らく僧正さまからじゃろう。ダオカーナ寺院に、何かあったのかも知れん…」

空中で何度か旋回したのち…、「魔法の鳩」は降り立ってダンツの腕に留まりました。…ダンツは、「魔法の鳩」相手に「ムムッ」とか「おぅ」などとやってゆました。

「アーシャ殿、…た、タイヘンなコトになった!ザハス殿が、あのザハス殿が…」

ダンツの肩をユサユサし…、気をつけるアーシャ。

…「ダンツさん、しっかりして下さい。ど〜なさったんです、…みなさんは無事ですか?」

アーシャの言葉に、正気を取り戻すダンツ…。

「次の僧正に選出されると噂だったのに…、すまん取り乱してしまったわい。…みんなは無事じゃ、しかし恐ろしい真実が明らかになった。"何故ワレラ星人は神さまの像を破壊出来たのか?"、…やはりわしらの仲間に裏切り者がおった。真犯人が、わかったんじゃ…!!」

みんなに…、緊張が走ります。

…「それは、一体何者なんですか?」

口を切る、…アーシャ。

「最も最初に、闇に堕落した僧はザハスとゆ〜者だったんじゃ…。ヤツは…、ダオカーナ寺院の書庫を預かっておった。…そこを丹念に調べた結果、わしらにとって禁忌とされている。禁断の巻き物、…"ワレラ星人にコンタクトする呪文"の封が破られておったそうじゃ。わかるか、アーシャ殿…。これは…、これは」

…ダンツは、のどをゴクリと鳴らしました。

「ザハスは、…ワレラ星人の闇の誘惑に屈したのではなく。な、何と、自らの意志でワレラ星人を喚んだのじゃから…!」

この事実は…、全員にとって少なからずのショックです。…何故なら、これまでは誰もが。「悪いのはワレラ星人であって、…人間ではない」そ〜考えてゆたのですから。

「私は、そのザハスと戦います…。それでゆいですね…、ダンツさん?」

…アーシャは、静かに決意と覚悟を定めました。

 

 

 

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その22

朝になり目を覚まして、ぺぺの様子を見に山小屋の外に外に出るアーシャ…。すると外は雨です…、じっとりとしたイヤな雨。

…「大丈夫ぺぺ、何もなかった?」

「プイプイ」、…ぺぺは首を縦に振りました。

「ぺぺ、あとも〜少しお願いね…。私…、朝ごはん食べちゃうから」

…みんなで、順番に朝ごはんを食べ出発の準備を整えます。アーシャはレイン・コート、…ダンツと工作隊の職人さん達は笠とみのそれにそのままのぺぺ。

「お足元は悪いですが、それじゃ出発しましょうか…」

ダンツを先頭に…、職人さん達は車を引いて押し出発します。

…山道を登り続け、やがてお昼の少し前になりますが雨は降り止みません。

「ぺぺ、…ねぇ」

後ろを振り返る、アーシャ…。

「プイプイ?」…、「ううん、何でもないの」

…ダンツは、ひたすら前を見詰めて歩き続けました。そ〜なのです、…アーシャは雨が苦手なのです。アーシャが育ったエスタフ高原は、一年中カラッとしてゆて…。時折り降る雨も…、ほとんどは一時でした。

…「モンスター達が、襲ってくれば」

アーシャは、…そんなコトを考えています。モンスター達との戦いになれば、自然に集中出来る…。集中してしまえば…、この雨も気にならない。…アーシャは、相手が誰であれ。戦って「負ける」、…そ〜は思いません。冒険の旅に出発する以前の修行時代、師匠であるセーブ仙人との立ち合いで…。当然…、アーシャは毎日のよ〜に負かされました。…でも、アーシャは一度だって「負ける」とは思わなかったのでした。

「プイプイ」、…アーシャに元気が無いのを察するぺぺ。工作隊は、どろに足を取られながら車を進めるのに必死です…。思えば、ダーナ川での冒険の時もそ〜でした。水の神殿の辺りは…、よく雨が降る。…あの時は、よくぺぺに弱音を吐きました。でも現在のアーシャは、…ダンツや工作隊を守らなければならない立場です。

「伝説の勇者である自分が弱音を吐けば、それは即座に士気に関わる…」

不意に…、メリクルを想うアーシャ。…実は、MWの天候は。天空の城の民が、…古くからのしきたりにのっとり厳格に決定してゆるのです。太陽や月を引く、天馬の馬車…。雨雲は…、海藻の一種であるカマーフを。…天空の城の地下(雲の中です)の工房で、職人さん達が編んでゆるのでした。アーシャは、…空を仰ぎます。

「この雨は、メリクル達が降らしてくれている…」

そ〜は想っても…、憂鬱は晴れません。…それでも、しばらくの間メリクルの言葉や姿が。浮かんでは消え、…ほんの一時気を紛らわせたのは事実だったのでした。

「アーシャ殿、安心せい…。この雨はじき止むわい…、雲ゆきを見ればわかる」

…アーシャは、恥ずかしくなりました。「ダンツさんは何も気づいてはいない」、…そ〜思ってゆたからです。

「ご心配をおかけして申し訳ありません、私雨が苦手で…」

振り返らないダンツは…、背中越しにアーシャに語りかけました。

…「苦手なモノぐらい、誰にだってあるわい。わしゃクモが苦手じゃ、…どんなにちっこくてもな」

アーシャの気持ちは、ほんのわずか和らいだのです…。