2014-12-01から1ヶ月間の記事一覧

遥かなる旅 15

エリヤとゴドの二人は、地の果てまで連れてこられて、そこで解放されました。ガヌフ船長は、勝ち誇った様に、言いました。ガヌフ「地の果てに留まる者は、自らの欲望に狂い、命を落とすという。精々、苦しめ。そうでなければ、連れてきた甲斐がないからな。…

遥かなる旅 14

その領主様の名前は、スペトと言いました。スペトは、スペインのバスク地方の辺りを、治めていました。領主として、家督を継ぐまでは、海軍にいた経験があり、なかなかの切れ者だったのです。スペトは、周辺の領主達に呼び掛け、独自に海上パトロール隊を、…

遥かなる旅 13

エリヤとゴドは、昔海賊の一味でした。ガヌフ船長が指揮する、双頭の毒蛇号に乗っていたのです。双頭の毒蛇号は、今日も新たな標的を見つけ、今にも襲いかかろうとしていました。ガヌフ「行くぞ、野郎共!ブラックジャックを掲げて、あの貿易船に、体当たり…

遥かなる旅 12

エリヤとアベルは、既に船の上にいました。二人は、スペインの西端まで、徒歩で移動し、そこでエリヤの古い友人である、ゴド船長に、偶然出会ったのです。ゴド船長は、二人の申し出を快く引き受け、悲しみの山のある、地の果てまで、乗せて行ってくれる事に…

遥かなる旅 11

イザヤは、語り始めました。 イザヤ「私は、あの山に登った。そして、星々と語らった…。そして、悟ったのだ。人間の本質とは、苦しみと悲しみ、それしかないとな。」 エリヤは、頷きました。 エリヤ「確かにそれらは、人間が他者と関わる上で、重要な感情じ…

遥かなる旅 10

預言者イザヤは、小屋の中で、本を読んでいました。エリヤは、挨拶もせず、いきなり尋ねました。エリヤ「イザヤ、何を読んでおるんじゃ?」イザヤは目も上げず、答えました。イザヤ「ショーペンハウアー、読書について。」オラワンは、にこにこしながら、お…

遥かなる旅 9

二人が、迷いの森目指して歩いていると、通りに面した雑貨屋から、一人の男が、転がり出て来ました。雑貨屋「出て行け、気狂いの手下め!お前に売るものなんて、ありゃあしないんだ。」出てきた男は、せむしで醜い顔を、していました。せむし「勘弁するズラ…

遥かなる旅 8

二人は陸路で、西へ西へと、進んで行きました。そしてその道すがら、ちょうどイタリアに差し掛かった辺りでの、出来事でした。二人はいつもの様に、宿で一晩明かし、朝、出発する準備を整えていました。宿の主人は、二人に好感を持っていて、親しみを込めて…

遥かなる旅 7

アベルは、昨晩と同じ扉を、再び開けました。やはり、お客さんはいない様でしたし、老婆は同じ様に座っていて、二人をジロリと、睨みつけました。アベルは、慌てて言いました。アベル「いや、今日は違うんですよ!お金を、用意してきたんです。昨日の分も払…

遥かなる旅 6

アベルは、扉を開けました。アベル「夜分遅くに、すいません…、今晩ここに、泊めていただけないでしょうか?」扉の向こうは、小さな食堂になっていて、中には不機嫌そうな老婆が、薄汚れた猫を抱えて、椅子に座っておりました。猫は、二人を見るなり、威嚇し…

遥かなる旅 5

アベルは、叫びました。アベル「エリヤ様、何を仰られるんですか!?ぼくの力を、信じて下さい。ぼくはこう見えても、レスリングのアテネ大会で、金メダルを貰ったんです!どうか、やらせてください。あんな連中、敵じゃない…!」エリヤは、首を横に振りまし…

遥かなる旅 4

二人は、ギリシャから近い、大きな街にやって来ました。ここで、悲しみの山に向かう為の、準備をする為です。アベルは、素直に驚きました。アベル「うわあ、すごい人出ですね!ぼくは田舎育ちで、人混みには慣れていないから、人当たりしてしまいそうですよ……

遥かなる旅 3

皆が寝付いた後、アベルは一人外に出て、星を眺めました。 アベル「星は、あんなにも美しく、輝いている。こんなにも美しく、神々しくさえある存在が、邪悪な力で、ぼく達を脅かすなんて、ぼくにはとても考えられない。」 アベルは草の上に、座りました。 ア…

遥かなる旅 2

一同は、テーブルを囲んで、一緒に夕食をとりました。テーブルの上には、丸パンと羊の焼肉、新鮮なサラダに、チーズなどが並んでいました。パーンとエリヤは、ワインを。アベルとカルナ、それにカインは、羊のミルクを飲んでいます。カルナ「何もご用意でき…

遥かなる旅 1

この頃パーンは、家で過ごすことが、多くなっていました。羊の世話は、アベルに任せて、家で花の手入れをしたり、カインと遊んであげたり、していたのです。パーン「ほら、カイン。お父さんに向かって、ボールを投げてごらん。」カイン「………。」カインは、地…

ルシファーさまお受難 5

ルシファーが自室に戻ると、コピンが泣いていました。 コピン「えーん、えーん!ダメだぁー、ルシファ〜様ぁ!天国と戦争をしちゃあ…。」 ルシファーは、一瞬顔色を失いました。 そして、こういう考えが、頭の中を一瞬で駆け巡りました。 生かしては、おけな…

ルシファーさまお受難 4

ルシファーの口に、おせち料理を全て詰め込むと、コピンは言いました。コピン「ルシファ〜様。お弁当の後は、お昼寝のお時間で、ございますですよ〜。じゃあ、お休みなさい!」そう言うと、コピンはあっという間に、寝入ってしまいました。ルシファーは、膨…

ルシファーさまお受難 3

コピンは、微妙な表情で言いました。 コピン「コピンちゃん、これから愛して愛してやまない、ルシファ〜様の為に、お掃除をさせていただきますです。」 コピンは、持ってきたバスケットから、ハタキを取り出しました。 そして、あっちへパタパタ、こっちへパ…

ルシファーさまお受難 2

天神様は思慮深く、話を切り出しました。天神様「ところで、ルシファー殿。今度の、天国攻めの件なのだが…。」ルシファーは、心躍りました。ルシファー「竜王はどうだ、動くか?」天神様は、嬉しそうに頷きました。天神様「動くとも。我々は同じ志の元にある…

ルシファーさまお受難 1

ルシファーは、バァル・ベバブの反乱によって、地獄を追われました。間一髪のところで、助けに来たかぐや姫によって、天神様の住む「鳳の城」に案内され、そこで傷を癒しておりました。ルシファーは、順調に回復しておりました。天神様や、その配下の者達の…

美しき詩人の愛 6

翌朝ヨハネは、目を覚ますと机に向かい、物語の残りを、一気に書き上げました。 ある日、メトカとマルワの二人が、お昼ご飯を食べに、家に戻ると、お父さんがいました。 お父さんは、力なくうなだれて、何かブツブツと、言っていました。 マルワ「ただいまお…

美しき詩人の愛 5

そしてある日、マグダレーナの前に、フラリとヨハネが現れました。マグダレーナ「どうしてたの、ヨハネ?私、心配してたのよ…。でも、よかった。こうして、姿を見せてくれたんだから。」ヨハネは、目を爛々と輝かせて、言いました。ヨハネ「もう、仕事は終わ…

美しき詩人の愛 4

マグダレーナは、書きかけの原稿から、目をあげて、いいました。マグタレーナ「うん、面白いと思うわ。地上に生きる人達の、喜びや悲しみが、描かれていて…。でもそんな事、言っちゃいけないわね。私達だって、かってはそうだったんだから。」ヨハネはそうい…

美しき詩人の愛 3

次の日マルワは、メトカを連れて、野原へ花摘みに出かけました。そして、二人でカゴいっぱいに、花を摘むと、それを売りに、街へ行きました。メトカは、不思議に思った事があったので、それをマルワに尋ねました。メトカ「ねぇ、マルワ。マルワの、お父さん…

美しき詩人の愛 2

「頼りない天使」天国に、メトカという名前の、天使がいました。メトカは、まだ見習いの天使で、天使の学校に通っていました。しかし、天使としては落第生で、お父様の有難い話も上の空だったし、聖書もろくろく読み込んでいませんでした。ある時メトカは、…

美しき詩人の愛 1

福音史家ヨハネは、悩んでいました。新作「頼りない天使」という物語が、どうしても完成しなかったのです。ヨハネ「ぼくは、どうしちまったんだろう?構想は、あるのに…。物語が、活き活きと動き出さないんだ。今まで、こんな事無かったのに…。」これまでの…

麗しの聖母 ネタバレ注意!

「カウボーイ・ビパップ〜Tank!〜」 菅野よう子 https://youtu.be/2VsgkIE-RHg 麗しの聖母の設定を、バラそうかな、と思いました。 そういうのが嫌いだったり、自分で想像するのが楽しい、という人は、読まないで下さい。 全部、ぼくの創作です。 聖母マリア…

最初のはじめに

「Heartbeat(Remix)」 Annie/Florian Wyle https://youtu.be/xWPTKF0sytc どうも、こんにちは。 オートマールスム(白)です。 いつも、読んでくれてありがとうございます。 麗しの聖母も、最初にアップしてから、少し加筆しています。 細かい、加筆修正がおお…

最後のまとめ

「Rhythm a ning」 Thelonious Monk https://youtu.be/Bmg_cuPg2Ig どうもです。 オートマールスム(白)です。 色々書いてみて、思うのですが…。 よく作家さんとか、監督さんが、作品のテーマが伝わるとか、そうでないとか、言いますね。 でも、ぼくはそれは…

麗しの聖母 後編

その夜、マリアは夢を見ました。 マリアは、森の中を、一人でさまよっていました。 マリアは、森を出ようと、躍起になって歩きましたが、どの道もこの道も、同じ道に見えるのでした。 マリア「どの道が、正しいのだろう…?私には、辿るべき道を、見つける事…