2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧
「セト、あなたはエマを妻として永遠に愛することを誓いますか?」 ソクロは、司祭としてセトに問うた。 「はい、…誓います。」 今度はエマに向かって、同じことを問う。 「エマ…、あなたは妻として…。」 ヘムの村の発掘現場での出来事から、数年の月日が流…
ゼクは上手くバランスの取れない足取りで、ヨタヨタとセトに近づいた。 「どう言ったらいいのか、よくわからないんだが…。」 セトは、ゼクの顔をじっと見る。 「悪気はないんだ…。ただ、行き掛かり上こういうことになっちまって。」 セトは、朗らかに笑った…
赤き竜は、ラルゴの姿を見ると激しく吠えた。 そして、大きく息を吸い込む。 炎の息吹が来る…! その場にいた人々は、戦慄した。 だが、ラルゴは落ち着いている。 まるで、場違いな人の様だ。 「赤き竜…。そういうのは、もう止めよう。人が傷つくだけじゃな…
ハウシンカは、ためらいがちに研究員達へ指示を出している。 ハウシンカの声が途切れる度、ザハイムは視線を送った。 転送機に様々な機器が連結されていく。 人々の祈りの代わりの、代替エネルギーを送り込む仕様になっているのだ。 「三番、四番、準備O.K.…
ザハイムとハウシンカは、赤き竜の頭に乗り発掘現場の上空にいた。 「さあ、そろそろ行きましょう…。楽しみね。ウズウズしちゃう。」 ザハイムは長い舌で、唇を舐める。 ハウシンカは、そんな様子を黙って見つめていた。 赤き竜は、ゆっくりと下降していく。…
「あっ、ゼクさん!大丈夫ですか?」 捜索に出ていた騎士は、倒れているゼクを発見した。 「そんな、これはひどい…。一体誰がどうやってこんな!」 騎士は左腕の無いゼクを抱きかかえ、自分の馬に乗せた。 「見つけたか?ハウシンカ様は…。これは!一体どう…
ここは影の国の中心にあたる城、「黒き子宮」。 最上階の王の間では、クリングゾール王が玉座に座り配下の者を待っていた。 影の国は、太陽が銀色で明るい光が射すことはない。 空はいつも不吉に赤く、銀色の太陽は決して沈まないのだ。 王の間も、青黒い闇…
ゼクとハウシンカは、山道を急いでいる。 ハウシンカは、異変を感じて空を見上げた。 「ゼク、ねえゼク。あれは…、一体?」 ゼクは気づかなかった。 「急げよ、ハウシンカ。日が暮れちまうぞ。」 その「何か」は、段々と大きくなってくる。 「変だよ、ゼク。…
セトとハウシンカは、二人きりで部屋にいた。セトは静かに、しかし断固とした口調で要求した。「ハウシンカ…。これで、最後。君へのお願いは、これで最後にしよう。ぼくは、君を傷つけたくない。"真理の書"を渡してくれ。…君が持ってるんだろう?」ハウシン…
時間を少し戻そう。ヘムの村で聖コノン騎士団とブラック・スワンが、狗香炉率いる影の国の軍勢と激突する少し前だ。時刻は夕方。仕事が終わる時刻。カトラナズの首都シュメクの通りも、家路を急ぐ人や買い物に出かける主婦が大勢いた。そんな頃、ザハイムは…
医務室は、いっぱいだった。 だからゼクは、自室で治療を受けている。 とは言っても、大きな外傷があった訳ではない。 額の傷も軽く、体力を消耗していただけだ。 念のためということで、医師は安静を命じた。 ゼクは、ソニーのウォークマンでJoao Gilberto…
「まだまだだぜ、行くぞ!」ゼクは踏み込んで、斬りつける。「フン、まだやれるな…。」狗香炉は、矛の柄で落ち着いて受けた。ゼクは、連続で斬り込んで行く。間合いを離されれば、不利になる…。だがゼクの攻撃がほんのわずか途切れると、すぐに狗香炉の鋭い…
聖コノン騎士団によるザハイム研究所発掘現場の占拠は、大したトラブルもなく進んだ。聖コノン騎士団が要求していたことは、あらゆる研究の停止と自室での待機といった程度のことであって、ほとんどの研究員は抵抗することなく従ったのた。ザハイム研究員達…
ルカーシは、狗香炉目掛けて突撃した。 「狗香炉覚悟しろ!このルカーシが相手だ!」 ルカーシは得物の両手持ちの大剣を、振り下ろした。 狗香炉は矛の柄で、受け止める。 火花が散った。 「お前が"天才剣士"と噂されるルカーシか…。どこまでわしの相手が出…
港町ミルムの隣、聖コノン騎士団の駐屯地…。セトはヘムの村のザハイム研究所発掘現場に、応援部隊を派遣しようとしていた。砦の門の内側には、騎士達二個小隊が整列している。「よく聞いてくれ!君達はこれから、ザハイム研究所発掘現場の護衛の任に当たる。…
ゼク発案の待ち伏せ作戦の決行から、三日目の夜。 「隊長、見て下さい!影の国の軍勢が、山道を登って来る…。なかなかの数だ。」 騎士の一人が、山道を埋め尽くす松明を見つけた。 「よ〜し、お前はそのまま後方のルカーシ殿とゼクさんに伝えて来るんだ。総…
「隊長、見えますか?あそこです!あそこに、サモン・ジェネレーターが…。」 騎士の一人が叫んだ。 「よし、ガトル…。お前の死は、無駄にはならなかったぞ!」 隊長と呼ばれた騎士は、傷付いたもう一人の騎士に肩を貸している。 「どうしますか?我々二人だ…
「おーし、待たせたなみんな!安心しろ、もう大丈夫だ!」 ゼクは、大声で叫ぶ。 仮設の聖壇が作られたサモン・ジェネレーターに、ゼクとソクロ、それにヘムの村発掘現場に駐留している聖コノン騎士団からの応援二個小隊が到着した。 これで、ヘムの村駐留の…
ゼクは、今日は非番だった。 発掘現場の宿舎で目を覚ますと、もう大分陽が高くなっている。 ゼクは、あくびをかみ殺しながらベッドから起き上がり、着替えを済ます。 Tシャツは特にこだわりはない。 普通に、Dickiesで購入した蹄鉄のロゴの入った赤い無難な…
悪鬼は、必要以上には近づいて来ない。 槍のリーチを活かして、遠間から突いて来た。 ゼクは刀身で受け流し、接近を試みる。 その間に壮年の騎士は脇に回り込み、攻撃を仕掛けた。 「こっちだ、行くぞ!」 壮年の騎士は、剣で力強く打ち込む。 悪鬼は槍の柄…
「ゼクさん、大変です…!」あれからしばらく経って、若い騎士は慌てて駆け戻ってきた。「どーした?何があった。」若い騎士はゼク達の所まで来ると、ゼイゼイと荒く息をして報告した。「この先で、サモン・ジェネレーターを発見しました!」ゼクとソクロは、…
ブラック・スワンとハウシンカ、ミミカは、ヘムの村のザハイム研究所発掘現場に戻った。 そこでブラック・スワンは聖コノン騎士団と共に、狗香炉率いる黒き騎士達との戦いに明け暮れる日々を送っていた。 オルト山の山道で、ゼクとソクロ、それに二人の騎士…
ハウシンカは、ザハイム研究所の所長室で報告をしていた。 「…結論としては、あの遺跡は人間を別な次元、或いは別な世界に送り込む為の装置の様です。」 ザハイムは自分のデスクのソファ・チェアに、体を沈み込ませた。 細い目の、穏やかな表情の人物だ。 年…
ブラック・スワンとハウシンカ、ミミカの五人は首都シュメクに到着した。 街の入り口、門の所に迎えの者が来ている。 騎士、それも将軍直属の者だ。 「ハウシンカ様ですね。ガウェイン様がお呼びです…。」 ハウシンカは静かに頷き、迎えの騎士の馬に乗り込む…
ゼクは、記憶の海を漂っている。 昔、小さな村があった。 そこには、聖なる槍の欠片が安置されていて、村の人々に愛されていた。 それを、影の国の蛇が嗅ぎつけたのである。 村は度々、黒き騎士達の襲撃を受ける様になり、人々は冒険者を雇った。 やって来た…
五人を乗せた船は、港街オクトパス・ガーデンに入港した。 船を降りた五人は、宿を取り荷物を下ろす。 話し合いの結果、ゼクは非番になった。 もう夕方だ…。 夕飯を食べに、街へ出る。 港街オクトパス・ガーデンは巨大な港街だ。 何隻もの商船や旅客船が港に…
ラルゴは、主ストーム・ライダーせんさんの、砕けた聖なる槍から復活したバイクに乗って、存在の本質に迫った。 そこは宇宙の果てであり、同時に宇宙の中心でもある。 レミロはそこで、「宇宙の意思」を名乗っていた。 ラルゴと主ストーム・ライダーせんさん…
ここは影の国。影の国の中心は、古きエデンにある城「黒き子宮」である。「黒き子宮」の主は、クリングゾール。影の国の王だ。クリングゾールは、奇怪な呪文を唱えている。内容は、普通の人間には理解できない。不服、怨嗟、嫉妬、そういう感情の集合体なの…
夜、ブラック・スワンは夕食を食べた後、甲板で酒を飲んでいた。 ゼクとローランドは、船に積んであるラム酒。 ソクロは、自分の持っているカルヴァドスだ。 武田邦彦氏の著書「早死したくなければ、タバコはやめないほうがいい」を眺めながら、チビリチビリ…
ブラック・スワンとハウシンカとミミカの五人は、船に乗っている。 大陸と大陸を結ぶ商船で、客室もあった。 ゼクは甲板で、風に当たっていた。 …海はいい。 ゼクが物思いに耽っていると、甲板にローランドの声が響き渡る。 「ゼク、俺と勝負しろ!」 訳がわ…