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真夏の夜の夢 2

伝次郎は、広いホールに案内され、そこで席に着きました。

辺りを見渡すと、肌の白いの黒いの、目の青いの茶色いの。

その他にも、戦国時代風の甲冑を着けた侍や、三国志に出てくる武将、それにスパルタの兵士など、様々な人々が入り混じっていました。

中には、アメリカ兵もいるようです。

伝次郎「あらら…、アメさんもおるのう。こんなトコを、誰か偉いさんにでも見つかったら、大目玉だべ。あん、そういえばあの勲章…、あれはウチの将軍様でねぇか?あんな偉い人が、アメさんと一緒に、飯食っとるんだったら、おらが食っていけねぇという法は、なかんべよ。こりゃあ、安心しただ。ゆっくりさせて、もらうべぇ。」

高そうなスーツに、身を包んだ男が一人、近寄ってきて、伝次郎に話しかけました。

男「もし、あなた今夜初めて、この館にいらっしゃったのですか?」

伝次郎「何だべ、あんた?そりゃあ、その通りだが…おらに何か、ようけ?」

男「いえ何、用という程の事は、ございませんよ。ただ、拝見した事のないお顔でしたので、お声をかけさせていただいたまでの、事です。」

伝次郎「ふぅん。するってぇと、あんたは長いんだべか?」

男「そうですねぇ…、人間の世界にいた頃の暦ですと、彼此500年位には、なりましょうかね?」

伝次郎「500年!?あんた、一体幾つだべ?それにしちゃあ…、随分若くみえるようだが。」

男「ここでは、時間はあってないような、モノなんですよ。キリスト様が言っておられるでしょう。天国では、永遠の命を得ると。ここが、その天国なのです。おっと、それでは失礼致します。私、ちょっとあちらから、呼ばれておりますので…。」

伝次郎は一人で、誰にともなく言いました。

伝次郎「天国だってか…。おら、あんまりひもじくて、死んじまったんだべか?それにしちゃあ、腹も減っとる。人は死んじまっても、飢えた渇いたに、苦しめられるんだべか?」

そうこうしている内に、ホールの正面にローマ風の甲冑を着た、立派な男と、先程の蛇と名乗った男が、立ちました。

そして、低くてよく通る声で、話し始めました。

「諸君、今宵はよく来てくれた!私の名は、ルシファー。天にいる天使達を統べている、天使の長である。私は天使の長として、キリスト様のお手伝いをするべく、この館を建てた。ここは、戦いに疲れた魂を招き、その疲れを癒す、戦士達の憩いの場なのだ。諸君、この館で、充分に休息を、取ってほしい。そして力を蓄えて、再び勇敢な戦士として、戦場に戻って欲しい。ここでは諸君が望む物は、全て手に入る。何、遠慮など必要ない。全ては私が、朝な夕なに、神に祈りを捧げ、その恩寵として授かった物なのだから。」

蛇「そうでごさいます。ルシファー様は、キリスト様の一番のしもべ。聖書には、書かれていませんがね。それが、真実なのです。人間達の中で、最も苦しみ疲れているのは、一体どなた様でしょう?それはあなた達、戦いの地へと赴く、勇敢な戦士達です!ルシファー様は、その…。」

伝次郎は、痺れを切らして、叫びました。

伝次郎「いい加減に、長いべ。早く、飯をもってくるだー!」

ルシファーと蛇は、突然の事に驚いた様子でしたが、すぐ気をとり直し、再び話し始めました。

ルシファー「ウム、今の叫びは、真に尤もである。豪勢なる料理が、諸君を待っている。これらの料理は、諸君ら一人一人の舌に合わせて、味を整えてあるのだ。それでは諸君、楽しんでくれ給え!夜はまだ、始まったばかりだ。」