読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

遥かなる旅 13

エリヤとゴドは、昔海賊の一味でした。
ガヌフ船長が指揮する、双頭の毒蛇号に乗っていたのです。
双頭の毒蛇号は、今日も新たな標的を見つけ、今にも襲いかかろうとしていました。
ガヌフ「行くぞ、野郎共!ブラックジャックを掲げて、あの貿易船に、体当たりをぶちかましてやれ。全員、戦闘準備だ!抜かるなよ。」
エリヤとゴドは、ワクワクしていました。
ゴド「あの船には、黒胡椒やら何やら、香辛料が、山積みらしい。上手くいけば、宝石よりも儲かるぜ!ハハハ、金さえありゃあ、何でも出来らあ。女も抱ける、ルーレットで増やす事も出来る!」
エリヤ「ゴド、お前の言う女っていうのは、所詮商売女だろう?男だったら、沢山の女の心を掴んでみろよ。俺には、女が沢山いる。レムラに、ユタ。カムリにサラス…。」
ゴドは、反論しました。
ゴド「素人の女は、詰まらんよ。男を悦ばせるコツってものを、まるで心得ちゃいない…。その点、玄人は違うさ。金で繋がった関係だから、後腐れもないしな。」
エリヤは、そんなゴドを嘲笑いました。
エリヤ「お前は、即物的な奴だ。詩情ってものが、まるでない。女はな、どう口説くかってところが、面白いんだ…。なびいた後は、捨てるだけさ。その過程が、面白いんだよ。」
その時、双頭の毒蛇号は、憐れな犠牲者に、襲いかかりました。
船と船は激突し、どちらの船も大きく揺れました。
そして海賊達は、無数のフックのついたロープを投げ掛け、貿易船を引き寄せました。
ガヌフ船長の叫びが、海の上に響き渡りました。
ガヌフ「皆殺しにしろ!誰も彼も、血祭りにあげるんだ!」
海賊達は、ワラワラと貿易船に乗り込んでいきました。
勿論貿易船には、無数の護衛の兵士達が、海賊達を待ち構えていました。
ゴドは、刀を振り回して、叫びました。
ゴド「そらそら、雑魚は引っ込んでいな!俺の目当ては、お宝だけさ。逃げろ、逃げろ!さっさと、いなくなっちまえ。」
エリヤは一人一人、確実に殺していきます。
エリヤ「人を殺すってのは、何て楽しいんだ!血が騒ぐ、血が沸き立つ。どんどん来い!もっと、血を流すんだ。それだけが、俺の心を踊らせる…!」
護衛の兵士達は、次々と斃されたり、海に飛び込んで逃げたりしました。
最後には、指揮を執っていた隊長が、たった一人残されました。
隊長「降参だ、降参する…。積荷は全部やるから、私と乗組員の命は、保証しろ!」
海賊達は、積荷を次々と、双頭の大蛇号に積み込んで行きました。
ゴド「今回も楽勝だったな、エリヤ!だが問題は、あの業突く張りの、ガヌフだ。あいつは、獲物を独り占めして、殆ど俺たちには、分け前をよこさない…。なあエリヤ、いっそガヌフの野郎をやっちまって、俺たちでこの船を奪おうか?」
エリヤは、口に指を当てて、言いました。
エリヤ「バカ、人に聞かれたら、どうするんだ!そりゃあ俺だって、勿論そのつもりだ。俺程の男が、あんな器の小さい男に使われてるって法は、あるまいよ。だが、時期が肝心だ…。今はまだ、その時じゃないぞ。まだ、待っていろ。いずれは幾らでも、美味しい思いができるさ。」
そこへ、件のガヌフ船長がやってきました。
ガヌフ「エリヤ、ゴド、ご苦労だったな。お前達にも、たっぷり分け前はやるから、楽しみにしていろ。だが、その前にやってもらいたい仕事がある…。」
エリヤとゴドは、大体察しがついていました。
ガヌフ船長は、冷たい口調で言いました。
ガヌフ「残った連中を、始末しろ。それが終わったら、船に火を放て。いいな?」
面倒な事や、厄介な事など汚い仕事は、皆、エリヤとゴドに、回されるのでした。
しかし、二人はそうした事を、別段嫌がってはいませんでした。
二人とも、人を殺すことなんて、何とも思っていませんでしたし、船に火を点けたりするのなんて、むしろ爽快な、スカッとすることだと、思っていました。
ガヌフ船長から命じられた事は、二人は何でもやりました。殺人や放火の他にも、陸に上がって、強盗を働いたり、憐れな貴婦人を、強姦したりしました。
二人の悪業は、数え上げればきりがありません。
やがて、二人の悪名は、地中海中に轟きました。
エリヤとゴドの名前を聞けば、それが女性であれなら、恥ずかしさに顔を両手で覆い隠し、子供であれば、たちまち泣き出すほどだっのです。
しかし、各港を治めていた領主様達も、海賊達が暴れまわるのを、黙って見ていた訳では、ありません。
ある領主様を中心に、海賊退治の連合軍が結成され、その包囲網が、徐々にエリヤとゴドの乗る、双頭の毒蛇号にも迫っていたのです。