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帰ってきた男達 12

雛鳥の間を出た金時を、金時の倍ほどもある、豪華な甲冑に身を固めた大男が、すぐに呼び止めました。
大男「金時殿!よろしく頼みます。拙者、貴殿の指揮下に入る、海鳴将軍でござる!力を尽くし貴君の為、ひいては我等連合軍の勝利の為に、戦いますぞ。」
金時は、笑顔で受け答えました。
金時「うむ、こちらこそよろしく。私の勝利は、ルシファー殿の勝利。共に、力を合わせましょう…。」
海鳴将軍は、大きな口を開けてハキハキと、快活な様子で言いました。
海鳴「拙者、聞きましたぞ!これから、赤き龍の下へ赴かれるとか…。拙者は海の者ですが、今は貴君の配下でござる!自分の大将を、そんな危険なところに送り込んで、自分は安全な場所にいたとあっては、海の者の名折れ。是非、拙者も同行させて下され!心より、お願い申す。」
金時は、海鳴将軍の物言いに、気持ちの良さを感じ、心で微笑んで言いました。
金時「将軍、あなたの申し出は、今の私にとっては何よりありがたいものだ…。むしろ、私が頭を下げるべきであろう。頼む、私について来てくれるか?」
何か、口にしようとした海鳴将軍の背後から、ひょこっと浦島太郎が顔を出し、誰にはばかる事なく、口を開きました。
浦島太郎「私も行く、金時くん。君らだけじゃ、多分この作戦の意義を、理解できてないだろうから…。何、心配いらない。私は、君らの後ろにいて、口を出すだけだ。決して、手は出さないよ。でもね、万一の事があったら、どうやって私を逃がすか、それだけはよく考えてくれたまえ。私はね、まだクリアしてないゲームが沢山ある。ドラクエⅤもそうだし、真・女神転生も…。」
金時は、何とも言えない微笑を浮かべて、浦島太郎を黙らせました。
金時「わかってるよ、浦島くん…。私達は、君に戦う事なんて、要求してはいない。後ろに控えていて、助言だけしてくれればいいんだ。君の知恵を、頼りにしてるよ。」
三人は、空飛ぶ牛車の発着場に向かいました。
そこでは、一足先に来ていた、桃太郎が血相を変えていました。
桃太郎「金時殿!これから、私達は大変なところに向かうそうじゃないか?話が、違うんじゃないか…。私は兵を率いる為に、君について来たのに!もし、そうならそうで、早く言って欲しいものだよ。私には私で、気持ちの準備とかそういうものが、あるじゃないか…。」
金時は、カラッと笑って、応じました。
金時「すまんね、桃太郎くん!私にも、気の付く事と、付かん事がある。何にせよ、君の力が必要だ。つべこべ言わず、ついて来てくれ!」
こうして、渋る桃太郎も乗せて、牛車は空へと、飛び立ちました。

四人は、牛車の中で、作戦会議を開きました。
最初に、口を開いたのは、桃太郎。
桃太郎「何だか、随分恐ろしい所に、連れてかれるそうじゃないか…?何でも、その竜の叫び声を聞くだけで、気が狂ってしまうとか。金時殿、私には無理だ…。到底、耐えられっこない。」
海鳴将軍が、桃太郎の心配を、笑い飛ばしました。
海鳴「大丈夫だ、桃太郎殿!そこにいる金時殿は、な、ルシファー様から、物言う石を預かっておる。物言う石からは、ルシファー様の霊の力が、発しておるのだ!ルシファー様は、戦の神。その加護があれば、腹の底から勇気が湧いてきて、赤き竜の咆哮など物ともせんよ!しかし…。」
海鳴将軍は、真剣な面持ちで、金時の方へ向かいました。
海鳴「金時殿、ルシファー様と赤き竜の死闘については、聞いておられますかな?」
金時は、腕を組んだまま、抑揚なく返事をしました。
金時「聞いているさ…。激しかったらしいな。」
海鳴将軍は、足元に視線を移し、静かに語り始めました。
海鳴「拙者は見ての通り、決して戦の場にあって、働きが人に劣るという事は、ございますまい。拙者なりに努力して、これまでの数多くの戦に参加し、功を立て、名を上げて参りました。そのお陰で、今の地位があるのでござる…。しかし今回は、相手が悪いのではありますまいか?金時殿にあっては、出来るだけ戦を避ける努力をし…。」
金時の目には、燃え盛る炎が宿っていました。
金時「わかっている、海鳴将軍…。私は、君達をいたずらに死に至らしめる様な事は、しない。しかし、わかってほしいのだ!この戦には、私達地の者の、名誉がかかっている。私達は、何としても地獄の軍団を打ち破らねばならない!その為には、私自身が命を落とす事があっても…。」
金時の頭に、水をぶっかける様な調子で、浦島太郎が話し出しました。
浦島太郎「安心したまえ、金時くん。君は、死なんよ。赤き竜は、討てるだろう。ただし、海鳴将軍と桃太郎は、死ぬね。二人は、力が足らん。」
海鳴将軍は静かに頷き、桃太郎は大きな口をあんぐり開けました。
浦島太郎は、続けました。
浦島太郎「まあ、金時くんだって、再び戦の場に戻れるかと言えば、二度と出来んだろう。それでも、いいんだ。残った戦力同士がぶつかり合っても、赤き竜の咆哮が止んでるなら、連合軍は勝つよ。どっちにしたって、地獄の軍団はおしまいだからね。しかし…。」
金時は、鋭い目で浦島太郎の心を、見透かそうとしました。
浦島太郎「おお、何て怖い目だろう。あっちを向いててくれ、金時殿。話を続けるよ。地獄の軍団は、問題じゃないんだ。ルシファー様の、本当の狙いは天国を、私達の物にする事さ!」
三人は、揃って浦島太郎の顔を、見詰めました。