ちょうどいい隣人(Folding Space) 2

裕一は、御茶ノ水のディスク・ユニオンでバイトしていた。

店の中には、Bobby Bland「Call On Me」のレコードが響いている。
友人の細川修司は、頭を揺ら揺らと動かしていた。
「いいレコードだよな!クソぅ、オレこのレコードマジで欲しいよ…。」
裕一は、昨日の出来事を修司に語って聞かせた。
修司は、大笑いする。
「ざまあねーな!いやいや、そんな簡単にオンナなんかできる訳ねーよ。」
裕一は、言い訳を色々とした。
「恋人が欲しいんじゃない。エッチしてみたいんだよ。」
修司は、ニヤニヤしながら言う。
「じゃあ、フーゾクでも行けよ。もし、ホントに行ったら、オレも行ってみたいからレポートしてくれ!よろしく…。」
裕一は、話にならないと考えた。
「バカバカしい。」
裕一は家に帰ると、即ぐにネットで検索を始めた。
色々なお店と様々なプレイが、あるのだ…。
検討してみた結果、一軒のお店に絞り込む。
土浦のお店だ。
評判は、良かった!
明日は休みだ…。
彼は、早速行ってみる事に決めた。
 
夕方4:00頃、電車に乗り込む。
愛車のDragStarはアパートに駐車場が無く、実家に置いてきてしまっていたからだ。
洋服には、頓着しない。
大抵Abercrombie&Fitchで間に合わせている。
だがアンダーウェアにはこだわりがあり、上下ともグンゼだ。
グンゼはデザインこそオシャレではないが、アンダーウェアは肌触りの良さで選ぶべきであるというのが祐一の持論である。
他社製品など、論外なのだ!
因みにボディソープ・シャンプーは、ウル・オスだ。
これも譲れない。
都内のお店は高かったので、土浦まで行く事にしたのだった。
見慣れた住宅街は飛ぶ様に過ぎていき、段々と寂れた田舎の風景に移り変わる。
Metsのグレープ・フルーツ味のペットボトルを、グイッと勢いよく飲み干す。
強い炭酸に、頭が痛くなった。
それでも、気分は爽快ではない。
ハイレゾウォークマンで聴いていたのは、「Rock and Rollin'with Fats Domino
…妙に、そわそわした。
「たかだか、買うってだけの事でな〜。」
情けない様なみっともない様な…、とても楽しみな様であった。
裕一は、土浦のある駅で降りた。
予約した時刻まで、まだ少しある。
通りを歩いて行くと、とんかつ屋があった。
「腹でも、満たしていくか。」
のれんをくぐり、中に入った。
小さな店で、夫婦二人で経営している様だ。
彼は、カツ丼を頼み、しばらくすると出て来たのでそれを食べていた。
しかし、妙に視線が気になる。
…もしかすると、すべて見透かされているのかも知れない。
それは、時刻と場所柄を考えれば、妥当な想像である。
お店、というより、ソープ街自体が川沿いにあるのだ。
土手に沿って、歩いてみる。
夕陽が、西の空に沈みかけていた…。
ソープ街のすぐ裏手のサイクリング・ロードだが、おばちゃんも女子中学生もみんな気にせず、自転車を走らせたり並んで話をしながら歩っていた。
 
「Walkin'」 Thundercat
 
裕一は、今度はレモンジーナを買った。
何本飲んでも、喉が渇いた。
お店に入ってからの段取りは、生々しいので描写しない。
とにかく、女性の名前はヒツウと言った。
愛想が良くないというより、表情自体があまりない。
スレンダーで脚が長く、上品な体つきである。
しかし…、巧かった!
裕一は、全てを委ねた。
というよりも、何もわからなかったので、そうするしかなかったのである。
射精出来ないのでは?という、彼の恐れはすぐに吹き飛んだ。
最終的には、吹き飛び過ぎてしまう結果となった。
事が済んだ後、残った時間で彼女はマッサージをしてくれた。
彼は決して知る事はないが、ある一件以来彼女は"本当に納得"出来た時はそうするのだ。
裕一は、重たい体を引き摺ってアパートに帰って来た。
腰の辺りが、まだ熱を持っている様でもあったし、何となくだるかった。
それでも、心地よい倦怠感である。
何故だか知らないが、無性に亀田の柿の種をコカ・コーラで流し込みたくなってそうしていた。
押入れの隙間から、本田翼さんの写真集が顔を覗かせている。
だから彼は、勝利者であると確信した。
実際にそれは、自分の身に起きた事なのだから!!