「おい弟…、おれさままたここに。陣を張ろ〜と想うから、お前ちょっと偵察ゆって来い…」
…「え〜、やだよ。何でいつもオイラなのさ…、兄貴がダメなら弟分にゆかせりゃい〜じゃないか?」
猪八戒は、既に荷物は下ろしてますがだだをこねます…。
「おれさまとしては、…それでも構わん。…ど〜する沙悟浄、ゆくか?」
「い〜よ、兄さん達…。ぼく、…ゆって来る」
…荷物を下ろして、沙悟浄は出発します。沙悟浄は降妖杖を構え…、充分に警戒して山道を慎重に登ってゆきました。幸いにも、現在のトコロ怪しい気配はありません…。
「ど〜もこの辺りには、…妖怪達の軍勢はいなさそ〜だけれど。…油断するワケにはゆかない、いつ襲って来るかわからないからね」
山道を登る沙悟浄は…、「じょうろ投資信託出張所」と看板を掲げた小屋を見つけます。
「これは一体なんだ、お金のお話ならぼく少し興味あるなぁ…」
するとその小屋から、…栗色の髪を2本のおさげにした背の低い女性が出て来ました。…サングラスをかけ黒いスーツで変装してますが、これはあのじょうろなのです。
「お兄さん…、ちょ〜どゆい時に通りかかりました!!今とっても耳寄りなお話があるんですが、お時間はございますか…?」
じょうろは、…もみもみもみてしていました。
…「そのお話、お金は殖えるんですか?」
失礼かな…、と想い遠慮がちに尋ねる沙悟浄。
「殖えます殖えます、それもタ〜イヘンな額が…。おいくらとはなかなかゆい難いですが、…少なく見積もってまぁ10倍は」
…そろばんを取り出し、バチバチ弾くじょうろ。
「じゅ、10倍…、そのお話は一口おいくらです!?」
沙悟浄は、想像してゆます…。
(お金さえあれば、…先ずお師匠さまのお袈裟も新しく出来るし。…街に辿り着けば、みんなで気の利いたお宿にも泊まって気持ちを落ち着けられる)
でれでれ笑う…、沙悟浄。
「当社は、これはも〜よそと違ってリーズナブル…。な、な、何と、…一口銅銭一枚からお受けつけ可能なのです!!」
…ニヤッとするじょうろ。沙悟浄は…、ゆわれるままにお財布を開きました。中には、銅銭が
9枚程…。
「これ全部預けますから、…あとはよろしくお願いします!」
…銅銭を受け取った途端に、走って逃げ出すじょうろ。
「どろぼうだ…、ぼくらの旅費を返せっ!!」
沙悟浄には、お金を盗られたショックから周りの景色が目に入っていません…。じょうろを追うのに無我夢中で、…そのじょうろが「何か」をピョンと飛び越えたのには気がつかなかったのです。
…ズボっ!
「うわ落とし穴だ…、ど〜しよう」
沙悟浄の落ちた落とし穴は、なかなかの深さで…。ちょっと沙悟浄一人の力では、…出られそ〜にありません。
…「あら三蔵法師のお弟子さんお奇遇ね、出して差しあげてもよろしくってよ?でもあたしがそ〜するには…、あなたにおとなしくしてもらわなくっちゃ」
余裕に笑いながら、サングラスを外したじょうろは…。沙悟浄の落ちた落とし穴を、…覗きました。