西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その13

「おい弟…、おれさままたここに。陣を張ろ〜と想うから、お前ちょっと偵察ゆって来い…」

猪八戒に、…如意棒でちょいちょい指図する孫悟空

…「え〜、やだよ。何でいつもオイラなのさ…、兄貴がダメなら弟分にゆかせりゃい〜じゃないか?」

猪八戒は、既に荷物は下ろしてますがだだをこねます…。

「おれさまとしては、…それでも構わん。…ど〜する沙悟浄、ゆくか?」

三蔵法師が降りてゆる竜馬の後ろを…、孫悟空は覗きました。

「い〜よ、兄さん達…。ぼく、…ゆって来る」

…荷物を下ろして、沙悟浄は出発します。沙悟浄は降妖杖を構え…、充分に警戒して山道を慎重に登ってゆきました。幸いにも、現在のトコロ怪しい気配はありません…。

「ど〜もこの辺りには、…妖怪達の軍勢はいなさそ〜だけれど。…油断するワケにはゆかない、いつ襲って来るかわからないからね」

山道を登る沙悟浄は…、「じょうろ投資信託出張所」と看板を掲げた小屋を見つけます。

「これは一体なんだ、お金のお話ならぼく少し興味あるなぁ…」

するとその小屋から、…栗色の髪を2本のおさげにした背の低い女性が出て来ました。…サングラスをかけ黒いスーツで変装してますが、これはあのじょうろなのです。

「お兄さん…、ちょ〜どゆい時に通りかかりました!!今とっても耳寄りなお話があるんですが、お時間はございますか…?」

じょうろは、…もみもみもみてしていました。

…「そのお話、お金は殖えるんですか?」

失礼かな…、と想い遠慮がちに尋ねる沙悟浄

「殖えます殖えます、それもタ〜イヘンな額が…。おいくらとはなかなかゆい難いですが、…少なく見積もってまぁ10倍は」

…そろばんを取り出し、バチバチ弾くじょうろ。

「じゅ、10倍…、そのお話は一口おいくらです!?」

沙悟浄は、想像してゆます…。

(お金さえあれば、…先ずお師匠さまのお袈裟も新しく出来るし。…街に辿り着けば、みんなで気の利いたお宿にも泊まって気持ちを落ち着けられる)

でれでれ笑う…、沙悟浄

「当社は、これはも〜よそと違ってリーズナブル…。な、な、何と、…一口銅銭一枚からお受けつけ可能なのです!!」

…ニヤッとするじょうろ。沙悟浄は…、ゆわれるままにお財布を開きました。中には、銅銭が

9枚程…。

「これ全部預けますから、…あとはよろしくお願いします!」

…銅銭を受け取った途端に、走って逃げ出すじょうろ。

「どろぼうだ…、ぼくらの旅費を返せっ!!」

沙悟浄には、お金を盗られたショックから周りの景色が目に入っていません…。じょうろを追うのに無我夢中で、…そのじょうろが「何か」をピョンと飛び越えたのには気がつかなかったのです。

…ズボっ!

「うわ落とし穴だ…、ど〜しよう」

沙悟浄の落ちた落とし穴は、なかなかの深さで…。ちょっと沙悟浄一人の力では、…出られそ〜にありません。

…「あら三蔵法師のお弟子さんお奇遇ね、出して差しあげてもよろしくってよ?でもあたしがそ〜するには…、あなたにおとなしくしてもらわなくっちゃ」

余裕に笑いながら、サングラスを外したじょうろは…。沙悟浄の落ちた落とし穴を、…覗きました。