戦士クリムは…、「ねこの通り道亭」に一人歩いて帰ります。自分の部屋に戻ると、ベッドに仰向けになって天井を見詰めました…。無邪気に感動して自分をホめてくれる、…学生ラルムの姿がボウっと浮かんでは消えてゆきます。
…「別にぼくは、勇者になりたいワケじゃないんだ」
素敵なおよめさん…、一瞬そんな言葉が脳裏をよぎりました。壁に向かって、戦士クリムは体を転がします…。ど〜してだろ〜、…何も悲しくないのに胸が締めつけられる。
…やがて、夕ごはんの時間になりました。今日の夕ごはんは、「ねこの通り道亭」女将の手作り煮込みハンバーグです。アルミ・ホイルの中でグツグツ煮える煮込みハンバーグに…、神官マルミも魔女ケレナも満足そ〜でした。
「ごはん美味しいと、旅は愉しいですよね…」
「ホ〜ント、…ここはゆい宿だわ」
…ナイフとフォークを手にして、二人は早速食べ始めます。
「あっ…、美味しい!!」
しかし戦士クリムは、一応アルミ・ホイルは開いたモノの…。煮込みハンバーグのうえに乗る、…しめじをフォークでつつくだけでした。
…「ど〜したんですクリムさん美味しいですよ、それともおなかでも痛いんですか?」
「アタシわかった…、おひるいっぱい食べたんでしょ?どっかに、美味しいお店でも見つけて…」
神官マルミの心配も魔女ケレナの冗談も、…現在の戦士クリムには現実にはなりません。
…「ごちそ〜さま」
戦士クリムは…、席を立ちます。
「クリムさん、本当に調子が悪いんじゃ…」
「ど〜したのよクリム、…こんなに美味しいのに」
…二人は驚いて目を見張りましたが、戦士クリムは部屋に戻ってしまいました。
部屋でボンヤリしている…、戦士クリム。すると、誰かが部屋をノックします…。それでも、…戦士クリムは黙ってゆました。ど〜返事をしたらゆいのか、わからなかったからです…。やがて、…ドアは開きました。
…「ほら、やっぱりいるじゃない。クリム、アタシ達これから飲みにゆこ〜って相談してたの。まぐろカツの美味しいお店見つけちゃって…、飲んでウさを晴そ」
「いきましょ〜よ、クリムさん…。ケレナさんのお話だと本当に美味しいらしくて、…たまの休日なんですから」
…ドアを開けたのは、魔女ケレナと神官マルミです。うつむいたまま…、戦士クリムは小声で返事をしました。
「い〜よ、ぼくは…」
ど〜もただゴトではない、…と神官マルミは察します。
…「クリムさんど〜なさったんです、全然元気がないじゃないですか?今朝はなんでもなさそ〜だったのに…、ツラいコトは一人で抱えると押しつぶされちゃいますから」
戦士クリムは、顔をあげません…。
「ぼくにも、…わからないんだ」
…ど〜声をかけたモノか、神官マルミも迷いました。
「アタシ…、わかっちゃった!」
突然大きな声をあげる、魔女ケレナ…。
「ズバリ恋でしょ、…クリム」
…戦士クリムは、ビクッと身を震わせます。意外な思いつきに…、神官マルミはキョトンとしてゆました。
「えっそんな、そ〜なんですかクリムさん…?」
頭のうしろで腕を組んだ魔女ケレナは、…してやったりとゆ〜表情です。
…「そ〜に決まってるじゃ〜ん、さぁさぁクリム白状しなさい」
神官マルミと魔女ケレナに迫られて…、戦士クリムも遂に決心しました。
「うん、そ〜かも知れない…。でも、…自分でもわからなくて」
…神官マルミと魔女ケレナは、顔を見合わせるとニヤッととします。