プラプリル姫に従う戦士達や侍女達に連れられて…、よ〜やくペペに抱かれたアーシャはエスタハーンの村に帰って来ました。
アーシャのお母さんは、涙を流してペペに近寄ります…。
…「よかったアーシャ、お前がこのエスタハーン村に無事帰って来てくれて」
アーシャはお母さんにあいさつする為に、…ペペの腕から地面に降りました。
「お母さん、心配しないで…」
するとど〜でしょう…、アーシャは一歩二歩と歩くウチ。
…ひざから崩れ落ちて、その場で意識を失なってしまったのです。
エスタハーン村では、…村でただ一人のお医者さまがアーシャの容態を確認していました。
…「これはな、恐らくワレラ星人の邪眼の後遺症じゃ」
ベッドに横たわるアーシャの脇では…、お医者さまとアーシャのお父さんが話をしてゆます。
「ワレラ星人の邪眼とゆ〜と、あの一瞬で全身が石になってしまうとゆ〜…」
お医者さまは、…うなずきました。
「そ〜じゃ、…今のアーシャはな。…体にはどこにも異常はない、ところが邪眼の恐怖が心に残り。気力が体にみなぎらん…、これでは自由に動けないワケじゃ」
アーシャのお父さんはまだアーシャのことが心配ではありましたが、命に別状はないと知ると少し安心もしたのです…。
「ま、…大丈夫じゃろう。…戦いは終わった、あとはこの村でゆっくり過ごすウチ。自然と体も動くよ〜になるハズじゃ…、くれぐれも無理は禁物じゃがな」
お医者さまはそ〜ゆうと、診療道具をバッグに詰めて帰ってゆきました…。
それから一週間が過ぎた頃、…「ぴゅーい」とペペを呼ぶ口笛がエスタハーンの村に鳴り響きます。
…「アーシャ、お医者さまも無理するなとゆったでしょ。安静にして…、ゆっくり休んでいなさい!!」
アーシャはペペに抱き抱えられると、自分のおウチのテントを出てゆきました…。
「お母さん、…私大丈夫。…ペペとお水汲んでくるから、いってきま〜す!」
水汲み場まで来ると…、アーシャはペペに降ろしてもらい。
自分の力でお水を汲もうとします、ところが何度試しても…。
お水の勢いに負け、…おけを支えてゆるコトが出来ません。
…「こんな私じゃダメなんだ、今の私はみんなにとってお荷物になってしまう」
アーシャはぺぺと共に歩いて帰ろうとしますが…、3歩目にはもう倒れてしまうのです。
そんなある日、アーシャの元に一通のお手紙が届きました…。
アーシャが宛名を見ると、…それは天空の城の民(兄)メリクルからだったのです。
…「ぼく達、モンスター・ワールドに生きる全ての者を救ってくれたアーシャ。元気にしてゆるだろうか…、ぼく達天空の民も少しずつ平穏な暮らしを取り戻しつつある。ところでアーシャにはぼく達天空の民の為に、あれだけのコトをしてもらったのに…。ぼくらはお礼として何もしてない、…これでは全く恥とゆ〜モノだから。…今度天空の城で、アーシャへのお礼をしたい。来てくれるかな?…、メリクルより」
とありました、アーシャの小さな胸はささやかな悦びに染まったのです…。
アーシャのテントに、…メリクルからの使者が訪れました。
…「アーシャ、久し振りだね」
それは…、メリクルの弟マリクルだったのです。
「マリクルお久し振り、メリクルは…?」
メリクルは、…少し困ったよ〜に説明してくれました。
…「兄さんはね、天空の城の王子なんだよ。ぼくらの父さんと母さんは…、も〜ずい分昔になくなっちゃったんだケド。兄さんが後を継いで、まだ若いから王位には就いてないんだ…。大臣ゴンタと、…天空の城の執務に忙しいのさ」
…アーシャは驚きます、あのおとなしそ〜なメリクルが王子だったなんて。
ど〜りで…、マリクルも従者に天空の民を二人連れてゆます。
「マリクル、ごめんなさい…。私、…こんな体で」
ベッドの中のアーシャにマリクルは明るく「知ってるよ…、ぼく達天空の民はモンスター・ワールドのどこのコトも知ってるから。アーシャ、さ魔法のじゅうたんに乗って…」
アーシャはぺぺに抱きかかえられると、…マリクルの用意してくれた魔法のじゅうたんに乗りました。
…「さ出してくれ、メリクル兄さんがお待ちかねだ!!」
すると…、魔法のじゅうたんはあっとゆ〜間に空高く舞い上がり。
エスタハーンの村はすぐに見えなくなりました、マリクルは笑って…。
「アーシャ、…魔法のじゅうたんは気持ちい〜かい?」と尋ねましたが。
…アーシャはかつて自分が、自分の力で自由に魔法のじゅうたんを操ったのを思い出し、
「悔しい」…、そ〜想ったのです。
天空の城に着くと、早速王子であるメリクルの出迎えを受けました…。
「アーシャ、…よく来てくれた。…天空の民は、誰一人欠けるコトなくあなたへ感謝してゆる」
…そ〜語るメリクルの両の傍には、ビッシリと従者である天空の民が並んでゆます。
アーシャはメリクルの威厳のある態度に驚くのと…、自分の体が動かないのが恥ずかしくて何もゆえません。
「本来ならば、宴会を催し歓待の意を表明したいのだが…。あなたの体はそれを許さないよ〜だ、…取り敢えず寝室を用意させてもらった。…ゆっくり休んで欲しい、ご両親にはも〜お話は通してある」
寝室と聞くと…、アーシャの気持ちはドギマギしてしまいましたが。
「プイプイ…」
ぺぺと一緒なら、…と案内を受けたのです。
…メリクルの用意してくれたベッドは、天蓋つきのとても豪華なベッドで。
シーツは絹で出来てゆます…、毛布もとても見事な衣装で。
ベッドの豪華さにアーシャが目を見張っていると、侍女が部屋の扉をノックしました…。
「どうぞ、…入って下さい」
…すると侍女が部屋の扉を開け、そのあとからメリクルが入って来ました。
「アーシャ…、ベッドは気に入ってもらえたかな?」
アーシャは、自分の気持ちを素直に語ります…。
「あまりにも豪華過ぎて、…私は貧しい暮らしになれていますから」
…メリクルは、いんぎんに頭を下げました。
「気が回らなくて申し訳ない…、これは私からの贈り物だ」
メリクルは侍女に持たせてゆたお盆から、お香のセットをアーシャに渡します…。
「これは月読草から作ったお香で、…気持ちをリラックスさせ。…睡眠を促す効果がある、ゆっくり寝て欲しい。」
メリクルが部屋を出てゆったあと…、アーシャはすぐにお香を試しました。
部屋中に快い香りが充満し、ペペはすぐに眠りこけてしまいます…。
「もうペペったら、…気楽ね」
…しかしそ〜ゆうアーシャも、しばらくすると眠りに落ちてしまいました。
それから一週間程経つと…、メリクルが部屋を訪ねて来ました。
「アーシャ、だいぶ顔色がよくなった…」
それはアーシャも自覚してゆました、…メリクルからもらったお香とこのベッドのおかげで。
…この一週間、グッスリ眠れたのです。
「ありがとうメリクル…、でもこれ以上お世話になるワケには」
メリクルは侍女を呼ぶと、小さな木の実を手に取りました…。
「これは、…チカカの実。…南の大陸で取れる木の実なのだが、強精作用がある」
そ〜ゆうと…、アーシャに優しく手渡しました。
アーシャは早速口にするとその辛いコト辛いコト、驚いてしまいくしゃみが止まりません…。
「すまない、…説明が足りなかった。…味に少しクセがある、今夜からあなたの食事の際にこれを提供しよ〜と想う」
メリクルが出てゆってしまうと…、アーシャは自分の気持ちがどこか高ぶるのを感じます。
…「ペペ、メリクルって好きな人いるのかな?」
ペペは、…首を傾げて「プイプイ」と返事をしました。
それから一週間が経った頃、再びメリクルが訪れました…。
「アーシャ…、調子はど〜だろう?」
…アーシャの瞳には、爛々とした光が戻ってゆたのです。
「メリクル、…私元気かも」
メリクルは、伏し目がちにアーシャに言葉をかけました…。
「それがあなたのいけないトコロだ…、アーシャ。…あなたは、あまりにもがんばり過ぎる。とはゆえ、…気力が出て来たのなら。」
メリクルは…、アーシャの手を取って促します。
「今侍女達に準備をさせる、この部屋にこの鉄製の手すりを置いて…」
メリクルは、…自分でその手すりで体を支え実演して見せました。
…「リハビリをしよう、アーシャ。体は何でもないのだから…、気持ちがノった今こそ。体を動かしてみるべきだろう、がんばって欲しい…」
アーシャはペペに抱かれて、…手すりのそばまでやって来ました。
…「出来るかな、ペペ?」
手すりに寄りかかりながら…、アーシャは10歩まで歩けたのです。
「プイプイ」と、ペペも喜びました…。
それからまた一週間が過ぎて、…メリクルはアーシャの部屋を訪れました。
…「さすが、アーシャ。も〜部屋の中を自由に歩き回れるとは…、さすが鍛えられ方が違う」
アーシャは窓辺から、エスタハーンの村を眺めています…。
「アーシャ、…あなたへのお礼もこれで最後だ。」
…メリクルは侍女を呼ぶと、ギターを持たせました。
「これは私に出来る…、精一杯のあなたへのお礼だ。拙いが、聴いてもらいたい…」
その歌は、…こんな感じです。
テーマ…
「Don't think twice it's alright」 Bob Dylan
https://youtu.be/1iHhWh9FtsQ
…それから、毎晩寝る前にはメリクルがやって来て。
この歌を聴かせてくれました…、そしてアーシャの恐怖は少しずつ溶けていきました。
アーシャは、遂にエスタハーンの村に帰るコトに決めたのです…。
それをメリクルに告げると、…メリクルは止めませんでした。
…天空の城の大広間で、アーシャを送り出すべく。
多くの民が集まってゆます…、メリクルは王座から。
「本来ならば、勇者であるアーシャを送り出す為の…。祝典を開くのが礼節ではあるが、…アーシャの体はまだそれを許さないだろう。…これが、私からの天空の民として。最低限のマナーである…、ごあいさつとする」
メリクルは王座から降り、アーシャの前でひざまずくと…。
その手の甲を取り、…接吻を贈りました。
…アーシャの体は、その時恐怖から自由になったのです。