ただほどうまいモノはない?

谷口恭平(やぐち きょうへい)は小学2年生、今日はお小遣いをもらえる日だったから…。

300円握り締めて駄菓子屋さんへ急ぐ…、当然今日全部遣い切ってしまうのだ。

…学校が終わりおウチから駄菓子屋さんへの道程、恭平はさまざまな駄菓子の味を思い浮かべる。

駄菓子屋さんにあるのはお菓子ばかりではない、…お店の脇の薄暗いスペースにT.V.ゲームだってあるのだ。

「お金さえあれば楽しみは全て手に入る」、お母さんからもらった300円は…。

恭平にそんなちょっとした全能感をもたらした…、駄菓子屋さんに辿り着くと。

…30円で買えるカツをモティーフにしたお菓子を買い、油で口の周りをベタベタにしながら食べる。

大人になってしまった私にはも〜信じられないが、…子供の舌に駄菓子は何故あんなに美味しいのだろう?

他にも10円で買えるうなぎの蒲焼き風味を謳ったお菓子や、一袋20円のソース味のスナックなど…。

恭平は楽園にゆるよ〜な心持ちだった…、小腹が満たされると次はT.V.ゲームである。

…恭平は一回20円で遊べる、「忍者くん〜阿修羅ノ章〜」にハマってゆた。

何故かとゆえば、…主人公の忍者くんが赤くて「カッコゆい」と想ったのだ!!

他にも忍者くんに敵対する、魔物共がおどろおどろしくてやっつけるとスカッとする…。

ところが…、である。

…私は制作者である藤沢勉氏を心からリスペクトしてゆるので、ゆわせていただくが。

「忍者くん〜阿修羅ノ章〜」は子供が遊ぶのには難し過ぎた、…恭平のお小遣いはみるみるゲーム機に吸い込まれてゆき。

気がついた時には、もう10円しか残っていなかった…。

ところがである…、季節は夏そして先程食べてゆたしょっぱい駄菓子のせいで。

…ど〜しても「ガリガリ君・コーラ味」にかじりつきたくなってしまう、そしてアイス・クリームの冷凍機はお店の外にあり。

お店のおばぁちゃんはお店の中にいるのだ、…と今日の恭平は突然気がついてしまう。

しばらくソワソワT.V.ゲーム機の前をゆったり来たりしていたが、誰もいなくなった隙を見て…。

アイス・クリームの冷凍機から「ガリガリ君・コーラ味」をつまみ上げると…、走って逃げてしまったのだ。

…お店からだ〜いぶ離れた公園までやって来ると、恭平は「ガリガリ君」を袋から取り出してかぶりつく。

「あ、…美味しくない」

恭平は想った、…冷たいシャリシャリ感が体に染み渡らないのだ。

「盗んだ所為かな…」

フと脳裏をよぎったが…、とにかくのどの渇きは癒されたのだから。

…「知ったこっちゃないさ」

そう結論し、…おウチへ帰ってしまった。

 

ある日恭平は、近所の子供達と集まって遊んでゆる…。

すると…、集まった子供の一人が「けいどろ」を演ろうとゆいだした。

…同い年の女の子が、恭平にゆ〜。

「恭平くん、…どろぼう演りたいんでしょ?」

恭平は、「けいどろ」なら断然どろぼう派だった…。

そこにはT.V.で放送されてゆた…、アニメ「ルパンⅢ世」のえいきょうも当然ある。

…けいさつの追跡をかわし隠れ場所を確保しながら各地を転々とする、何てカッコい〜んだろうと。

ところがである、…恭平は想った。

「あぁ、現在のぼくは本当にどろぼうなんだ…」

恭平はイライラし…、こ〜考えよ〜とする。

…「ぼくがホンモノのどろぼうがなんて誰も知らない、誰も知らないならどろぼうじゃないのと同じコトさ」

「けいどろ」は始まりどろぼう役の恭平は逃げた、…そしてお友達のおウチの物置に身を潜ませた。

一人で隠れてゆると、たまらなく不安になる…。

「もしかしたら…、今頃本物の警察がぼくを見つけようとしてゆてるんじゃないだろうか」

…恭平の頭に、お母さんやお父さんそれに弟の顔が思い浮かんだ。

「もしぼくがどろぼうとして逮捕されたら、…みんなはど〜想うだろう?」

そ〜考えると、このまま暗闇に一人消え去ってしまいたい気する…。

 

そしてまたしばらく経ったある日…、恭平の学校で盗難事件があった。

…クラスにいたお金持ちの子が持ってゆた、アニメのキャラクターがプリントされた筆箱が盗まれたのである。

授業が終わり、…帰りのホーム・ルームを急遽延長し学級会が開かれた。

お金持ちの子は壇上に立ち、「自分にとってその筆箱がいかに大切だったか?」を涙ながらに語る…。

だが恭平にとってそんなのど〜でもゆい…、ど〜せ出て来なければ新しい同じモノを買ってもらえるのだから。

…恭平にとって気がかりなのは、誰だかわからない。

盗んでしまったヤツの方だった、…恭平は想う。

「傷口が広がらないウチに、早く自首しろよ」、と…。

やがて先生が壇上に立ち…、盗みがいかにいけないコトか滔々と語った。

…恭平の考えでは発想が逆なのだ、これでは盗んだヤツはますます名乗りを上げにくくなる。

先生はゆった、…「先生はこれから一人ずつ面談をします」

生徒は全員廊下に立って並び、一人ずつ教室に入っては先生に「盗んでゆない」と誓うのだ…。

恭平が廊下で自分の番を待ってゆると…、列に並ぶ気弱で半分イジメられてる男の子が震えてゆる。

…恭平は「コイツが犯人だな」と当たりをつけた、しかしこのままでは恐らく先生にゲロってしまい。

イジメはエスカレートするだろう、…恭平はポケットに無造作に突っ込んであったわら半紙を取り出し。

えんぴつでメモを作成する…。

「ど〜せ新しいの買ってもらえるんだから…、黙っとけよ」

…そして震えてゆる気弱な子に渡した、その時恭平の心は決まる。

これから何をしなければならないか、…も〜あと戻りは出来ないのだ。

 

次のお小遣い日も、恭平は300円握り締めて駄菓子屋さんへ向かう…。

しかし…、今日の恭平は全然楽しい気持ちにはなれなかった。

…駄菓子屋さんのガラス戸を引くと、店番をしてゆるおばぁちゃんのトコロへまっすぐゆき。

「おばぁちゃんごめんなさい、…ぼく先月"ガリガリ君"盗んだんだ」

そ〜告げると、50円玉を一つ差し出したのだから…。

 

テーマ…

「15 step」 Radiohead

https://youtu.be/bgsmr7t8zGE