西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その15

「ど〜しちまったってゆ〜んだ、二人共戻って来ないなんて…。まさか妖怪達が…、大群で押し寄せて来てるのか!!?」

…自ら陣を張った場所で、ゆったり来たりうろうろ繰り返す孫悟空

「落ち着きなさい、…悟空。八戒や悟浄が心配なお気持ちは、私とて同じだよ…」

その時です…、突如若い女性の叫び声が響きました。

…「きゃ〜助けて、私が虎に襲われてるぅ!」

三蔵法師は、…ガバッと立ちあがります。

「ご、悟空、聞いたかね…!!?若い女性の叫び声だった…、助けを求めてゆる」

…こめかみを、ポリポリかく孫悟空

「"何か"おかし〜と想いません、…お師匠さま?"私が襲われてる"って、そんな余裕ありませんよフツーは…。おれさまの考えでは…、絶対妖怪のワナですね」

孫悟空に詰め寄る、三蔵法師

「確かに、…あなたのゆ〜通りかも知れないね。しかし、もし実際に若い女性が虎に襲われてゆたら…。ど〜なると想う…、もはやありがたいお経など何の意味もなくなってしまうよ!…荷物の類は、ここで竜馬に任せるとしよ〜。私も走るから、…是非ゆっておやり」

三蔵法師孫悟空は、声のする方へ走ってゆきます…。すると今にも…、虎が若い女性に襲いかかろ〜としてるではありませんか。

…「誰か助けて下さい、虎が今にも私に襲いかかりそ〜なんです!!」

悲しみの涙を、…ハラハラ流す三蔵法師

「悟空や、この光景をご覧…。こ〜して今にも…、尊い生命が失われかねないんだから」

孫悟空は、はなくそをほじってました。

「お師匠さま、…今にもって。最初の叫び声を聞いてから、お師匠さまとおれさまが到着するまで…。どれだけ経ってると…、お考えですか?」

…「ゆいから助けておやり!」

仕方なく虎のおしりを、…軽く引っ叩く孫悟空。虎は、「キャインッ」と鳴くとどこかへ逃げ去りました…。

「ありがとうございます…、孫悟空さま!!」

若い女性は、両拳を握り合わせ。熱心に、…孫悟空を見詰めます。

「悟空、あなたは一体何故返事をしないのかね…?」

改めて如意棒を構える…、孫悟空

…「おれさままだ名乗っていないじゃありませんか、それなのに名前を知ってるなんて。こいつは間違いなく妖怪で、…例の。"名前を呼ばれて返事をすると中に閉じ込められてしまう"、っつ〜紅ひさごを隠してるに決まってます…」

しかし若い女性は…、大して気にも留めない様子でした。

…「あなたのおかげで私の命が助かったんです、二枚目の孫悟空さま」

若い女性は、…ぐいぐい孫悟空に迫ります。

「悟空、確かにあなたのゆ〜通りかもわからない…。しかし人から名前を呼ばれたのに…、返事すらしないとは。…それでは、やはりありがたいお経も何の意味も持たないだろ〜」

少し、…イライラし始める孫悟空

「じゃあ、お師匠さまが為さったらゆいじゃありませんか…?おれさまは…、責任取りませんよ」

…その言葉を聞いて、若い女性は三蔵法師へ向きを変えました。

「私の命の恩人、…素敵な三蔵法師さま!!」

三蔵法師は、若い女性にうなずきます…。

「うんうんよかったね…、生命が助かっうわ〜!」

…あっとゆ〜間に、紅ひさごに吸い込まれてしまう三蔵法師。何とこの若い女性とゆ〜のはじょうろで、…三蔵法師を計略にかけたのでした!!じょうろは、すぐさまキツツキに化けると…。あッとゆ〜間に…、飛び去ります。

…「あっ待てこん畜生、逃さねぇぞ!」

筋斗雲に飛び乗り、…あとを追う孫悟空。しかしこの平頂山は、ゆわばじょうろ達のなわばり…。キツツキに化けたじょうろは…、木立ちの中に紛れまんまと逃げおおせたのでした。

 

悔しくて地団駄を踏む孫悟空のテーマ…

「Go easy now」 The Hellacopters

https://youtu.be/YTzQzqauayE

 

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その14

…「おかしいな、戻って来ねぇや」

孫悟空は、…イライラしたよ〜に地面を如意棒でド突きます。

「偵察の途中で、一人でお斎にでも預かってるんじゃないの…?」

九歯のまぐわを一応手にしてはゆるモノの…、座り込んですっかりリラックス・ムードの猪八戒

…「バカゆってんなよ、お前じゃないんだから。もしかしたら、…先まで見にゆき過ぎてるのかも知れん。弟、お前ちょっと呼び戻して来い」

座ってる猪八戒のおしりを、如意棒でズンと突く孫悟空…。

「イテテ…、ヒドいや兄貴は。…わかった、わかったからゆきますよ」

猪八戒は、…自分のおしりをなでなで出発しました。

「おい駆け足だぞ、悟浄に追いつかなくちゃ意味ないんだからな…!!」

慌てて走り出す猪八戒…、しかしそれも孫悟空が見えてる間だけのコトです。

…「全く兄貴と来たら、人遣いが荒いよ。偵察なんて自分で筋斗雲に乗って、…さっさと戻って来りゃい〜んだ。あ〜はらが減ったなぁ、おっあれは何だ…?」

ブツブツひとり言を口にしながら…、山道を登る猪八戒の目に。…「峠のわんこそば屋」とゆ〜看板を掲げた、小屋が入ります。

「わんこそばか美味そ〜だな、…ぶひぶひ。でもお金持ってるのは沙悟浄だし、それだって大した額じゃないから…」

そこに…、かっぽう着に身を包んだじょうろが小屋から出て来ました。

…「お兄さん、とってもタイミングがバッチ・グ〜!今ウチの"峠のわんこそば屋は、…創業記念で。な、な、なんと、何杯食べても無料の大々々サービス…!!」

猪八戒は…、だらしなく笑いました。

…「そ〜か、弟分のヤツここに立ち寄ってたから遅くなったんだ。よし、…オイラも入ってみよ〜。何兄貴だってあとで教えてやれば、喜んでやって来るだろ〜よ…」

「ほいっ…、お客さま一名さまご案な〜い!」

…じょうろに誘われるまま、猪八戒は"峠のわんこそば屋ののれんをくぐり。席に着いて、…わんこそばを待ちました。

「お客さん、ほいっわんこそば一丁…!!」

最初の一杯を…、するするすする猪八戒

…「なかなかゆいお味だね、こんな山の中に出店してるのはもったいない」

じょうろは、…すかさず次の一杯を猪八戒のお椀に盛ります。

「ウチは、支店なんですよ…。本店は唐の都にあるんです…、ほいっ一丁!」

…何ともゆえず、満足そ〜な猪八戒

「こっちは、…精進中でね。なかなか満足に食事にありつけないから、たまにはしっかり食べさせてもらえるのはありがたいよ…」

じょうろは…、次々と猪八戒のお椀にわんこそばをブッ込みました。…始めこそ上機嫌な猪八戒でしたが、次第に雲ゆきが怪しくなって来ます。

「おネーちゃん、…も〜86杯目だよ。そろそろ、ゆいんじゃないの…?」

しかし…、じょうろはわんこそばをよそうのを止めません。

…「ほいっお客さん、ほいっ一丁ほいっ一丁!!」

さすがの猪八戒でも、…おなかはも〜パンパンでした。

「オイラのお袋は、ゆったんだ…。出されたモノは全部平らげなさい…、それが作って下さった方への礼儀よと」

…そして遂に103杯目で、猪八戒はひっくり返ります。じょうろは悠々と、…猪八戒に縄をかけました。

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その13

「おい弟…、おれさままたここに。陣を張ろ〜と想うから、お前ちょっと偵察ゆって来い…」

猪八戒に、…如意棒でちょいちょい指図する孫悟空

…「え〜、やだよ。何でいつもオイラなのさ…、兄貴がダメなら弟分にゆかせりゃい〜じゃないか?」

猪八戒は、既に荷物は下ろしてますがだだをこねます…。

「おれさまとしては、…それでも構わん。…ど〜する沙悟浄、ゆくか?」

三蔵法師が降りてゆる竜馬の後ろを…、孫悟空は覗きました。

「い〜よ、兄さん達…。ぼく、…ゆって来る」

…荷物を下ろして、沙悟浄は出発します。沙悟浄は降妖杖を構え…、充分に警戒して山道を慎重に登ってゆきました。幸いにも、現在のトコロ怪しい気配はありません…。

「ど〜もこの辺りには、…妖怪達の軍勢はいなさそ〜だけれど。…油断するワケにはゆかない、いつ襲って来るかわからないからね」

山道を登る沙悟浄は…、「じょうろ投資信託出張所」と看板を掲げた小屋を見つけます。

「これは一体なんだ、お金のお話ならぼく少し興味あるなぁ…」

するとその小屋から、…栗色の髪を2本のおさげにした背の低い女性が出て来ました。…サングラスをかけ黒いスーツで変装してますが、これはあのじょうろなのです。

「お兄さん…、ちょ〜どゆい時に通りかかりました!!今とっても耳寄りなお話があるんですが、お時間はございますか…?」

じょうろは、…もみもみもみてしていました。

…「そのお話、お金は殖えるんですか?」

失礼かな…、と想い遠慮がちに尋ねる沙悟浄

「殖えます殖えます、それもタ〜イヘンな額が…。おいくらとはなかなかゆい難いですが、…少なく見積もってまぁ10倍は」

…そろばんを取り出し、バチバチ弾くじょうろ。

「じゅ、10倍…、そのお話は一口おいくらです!?」

沙悟浄は、想像してゆます…。

(お金さえあれば、…先ずお師匠さまのお袈裟も新しく出来るし。…街に辿り着けば、みんなで気の利いたお宿にも泊まって気持ちを落ち着けられる)

でれでれ笑う…、沙悟浄

「当社は、これはも〜よそと違ってリーズナブル…。な、な、何と、…一口銅銭一枚からお受けつけ可能なのです!!」

…ニヤッとするじょうろ。沙悟浄は…、ゆわれるままにお財布を開きました。中には、銅銭が

9枚程…。

「これ全部預けますから、…あとはよろしくお願いします!」

…銅銭を受け取った途端に、走って逃げ出すじょうろ。

「どろぼうだ…、ぼくらの旅費を返せっ!!」

沙悟浄には、お金を盗られたショックから周りの景色が目に入っていません…。じょうろを追うのに無我夢中で、…そのじょうろが「何か」をピョンと飛び越えたのには気がつかなかったのです。

…ズボっ!

「うわ落とし穴だ…、ど〜しよう」

沙悟浄の落ちた落とし穴は、なかなかの深さで…。ちょっと沙悟浄一人の力では、…出られそ〜にありません。

…「あら三蔵法師のお弟子さんお奇遇ね、出して差しあげてもよろしくってよ?でもあたしがそ〜するには…、あなたにおとなしくしてもらわなくっちゃ」

余裕に笑いながら、サングラスを外したじょうろは…。沙悟浄の落ちた落とし穴を、…覗きました。

 

 

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その12

「ここは道もなだらかだし、悟空や少しやすも〜じゃないか…?そしてやすみながら…、私がみ仏の尊い教えについてあなた達に説いてあげるとしよ〜」

沙悟浄は、猪八戒の荷物からござを取り出し。それを敷いて、…三蔵法師を中心に。円の形になって、座りました…。

「み仏の尊い教えの中で最も大切なのは…、欲望に執着してはならないとゆ〜コトにあるのだ」

…穏やかな口調で、お説教を始める三蔵法師

「お師匠さま質問です、…オイラぶひぶひ。おなかが空いたら、ごはんが欲しくなっちまいます…。それでも…、いけないんですか?」

猪八戒は、始まるなり不満そ〜です。

「ゆい質問だよ、…八戒。私はね、おなかが空いたのなら…。ごはんは食べてもゆいだろ〜…、と考える。…しかし八戒、あなたはごはんをおなかいっぱい食べたがってしまうだろ〜?」

鋭く指摘する、…三蔵法師

「オイラのおなかは、こんなにおっきいから仕方ありません…」

ぽこぽこ…、猪八戒はおなかを叩きました。

…「それではゆけない、どんなに食べてもはら八分目までにしときなさい。みんな、…よく聞くんだよ。ここが、み仏の尊い教えの肝心なトコロなのだから…。欲望とゆ〜のは…、何でもたくさんたくさん気持ちよくなりたいと思う。…たくさんの評価たくさんのお金、た〜っくさんの女性」

沙悟浄は、…ドキっとして懐のお財布を握ります。

「ところがそれでは、人間いつまで経ってもシアワセにはなれない…。何でも…、"自分にちょ〜どゆい"がある。…それに満足なさい、とみ仏は教えてゆるのだね。だから昔の人はこ〜ゆったモノだ、…持って足るを知りなさいと」

沙悟浄に向き直る、三蔵法師…。

沙悟浄や…、真面目なのはあなたのゆいトコロだよ。…でも必要以上に、…金を大切にしてる」

孫悟空は、…嬉しそ〜に立ちあがりました。

「じゃあ、おれさま既に悟りを開いてるんだ…!!おれさまと来たら…、女性にもお金にもさして興味ないモンな」

…気持ちを落ち着けよ〜と、一呼吸置く三蔵法師

「あなたは戦いを好む、…悟空。あなたの戦いは、私を守る為…。それには…、私もいつも感謝してゆるよ。…しかし、自ら戦いを求めるてはよくないのだ」

孫悟空は、…しぶしぶそ〜に座ります。代わりに口を開く、沙悟浄…。

「それならば…、お師匠さまはきっとも〜お悟りでしょ〜?…だからこそはるばる、西天まで。ありがたいお経を受け取る、…旅に出発されたんですから」

三蔵法師は、目を伏せました…。

「みんな聞いて欲しい…、私は恥ずかしいのだが。…死ぬのが怖いのだ、本当に欲望が捨てられたなら。もし死んでしまっても、…〜運命〜として受け入れられるハズなのに。ところが不肖この私、死ぬの怖さに…。この旅の途上で…、夜目を覚ましてしまうコトが度々あるのだよ。…それを乗り越えさせる為に、み仏は。何度も妖怪に襲われる、…西天取経の旅を私に賜られたのだから」

その時、一人と三人のそばの木を突いてゆた…。キツツキが…、パッと飛び立ちます。

…「キキキ、このキツツキの姿が。あたしの化け術とも知らないで、…自分達の弱点を。み〜んなぺらぺらしゃべってくれたわ、これで…。お仕事がどんどこはかどっちゃう…、見てなさいあたしの知恵を!」

…キツツキに化けたじょうろは、蓮華洞目指して飛び去ってゆきました。

 

 

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その11

「何ィ〜敗走しただと、…それなら虎徹将軍はど〜した!!?」

…ここは蓮華洞、金角・銀角両大王は逃げ帰った妖怪から報告を受けました。

「それは…、三蔵法師のお供の一匹である。孫悟空がどこからともなく取り出した、とてつもなく大きいこん棒の一撃を受けられ…。あとからやって来た、…天の軍隊に捕らえられてございます」

…金角・銀角両大王に、恐れひれ伏し顔をあげられない手下の妖怪。

「フン…、どちらにせよお前らの命などど〜でもい〜コトだ。それよりも、芭蕉扇は持ち帰ったのだろ〜な、もしあれを失ったとゆ〜なら…」

手下の妖怪は、…ビクッとして芭蕉扇を差し出します。

…「将軍一体と兵50を出動させて、戻って来たのはたったの5体。ど〜するのだ兄者…、次は倍の数でゆくか?」

銀角大王は、手下の妖怪から芭蕉扇を納めました…。

「いや、…それではジリ貧になってしまう。…三蔵法師の三匹のお供は、噂に違わず相当手強いよ〜だな。力で押しても通用すまい…、将軍と兵を無駄に失うだけだ」

蓮華洞の中の、手下の妖怪達をへいげいする金角大王…。

「弟よここはな、…一つ知恵でゆこ〜じゃないか?…妖女を用いるのだ、あの三蔵法師を誘惑してたらし込ませる」

金角大王の意図に気づき…、銀角大王は高笑いします。

「そ〜か兄者、あいつの化け術を使わせるのだな…!」

金角大王も、…銀角大王にニヤッとしました。

…「そ〜だ弟、あいつならば三蔵法師のよ〜な朴念仁の。懐にも…、うまく入り込むだろ〜よ。我が妹じょうろを呼べ、出来る限り早急にな…!!」

ヒリついた緊張感を背に、…伝令の妖怪は走り出します。

…「なぁ兄者、アイツらまた攻めて来るかな?」

こちらは…、平頂山を登る三蔵法師一行。猪八戒は、先頭を進む孫悟空に心配そ〜に質問しました…。

「そりゃあ、…当然だろ〜な。…さっきの戦いは様子見だ、妖怪が兵を何体出したのかハッキリ確認出来なかったが」

退屈そ〜に…、如意棒をくるくる回す孫悟空

「お前の報告じゃ、…30体はいたんだろ…?…それなら妖怪は、全体で兵200を下るコトはあるまい。まだまだ…、妖怪の方が優勢なのさ」

沙悟浄が、三蔵法師の竜馬の後ろから口を挟みます…。

「フツーに考えれば、…次は数を増やすだろうね。…だんだんと、戦いは激しくなる」

はなくそをほじる…、孫悟空

「それなら、ハナシはラクなんだ…。相手は一回々々数を増やす、…こちらは一少しずつ撃退する。…もしそ〜なら、大して苦労もせず妖怪は全滅だわな」

孫悟空のモノゆいに…、煮え切らなさを感じる三蔵法師

「つまりあなたは、妖怪達は"何か“手を変えてくると…。計略を用いるとか、…そ〜ゆいたいのかね悟空」

孫悟空は、はなくそを飛ばしました…。

「現在の段階では何ともゆえません、…芭蕉扇の力で火攻めにして来るとか。…やり方は、いろいろ考えられます。ただ…、金角・銀角両大王は。天から、宝物を三つも盗み出した抜け目の無い妖怪です…。必ず、…何かしら企んで来るでしょう。…お師匠さま、戦いの基本は敵を侮らないコト。常に相手は自分より手強いと想定する…、それで初めて勝てる可能性が芽生えるってなモンなんですから」

みんな改めて、気持ちを引き締める三蔵法師一行だったのです…。

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その10

芭蕉扇を振り下ろす…、馬の頭をした妖怪。炎の渦が巻き起こり、真っ直ぐに孫悟空沙悟浄に向かって来ます…。

「危ない兄さん、…ゆくよ水とんの術!!」

…降妖杖で、地面を突く沙悟浄。するとゴボッと水が溢れ…、孫悟空沙悟浄の周りを水の壁が取り囲みました。しかし、孫悟空の三本の頭の毛までは間に合いません…。炎にあおられ、…焼けてちりぢりになってしまいます。

…「ど〜した、いつまで我慢できるかな?」

馬の頭をした妖怪は…、何度も芭蕉扇をあおぎました。だんだん辺り一面火の海となり、妖怪もだいぶ巻き込まれています…。

「兄さん、…この場はぼくの術で何とかなる。…でもあの芭蕉扇は、さすがに天の宝物だ。火を押し返すのは…、ちょっと無理かな」

地面を突いては、水を湧かせる沙悟浄…。

「残ってる妖怪は、…あと10体ぐらいか。…芭蕉扇さえ何とか出来れば、押し切れるんだが。ん…、そ〜だ!」

孫悟空は如意棒を構えると、「大きくなれっ」と唱えました…。みるみる大きくなる如意棒、…「もっともっとだぞっ」と孫悟空が何度も唱えると。…そのウチに、孫悟空の100倍の大きさになってしまいます。

「な、何ぃ…、あれは一体何なんだ!!?」

「よっこら、よ〜っい…!」

トンデモ大きい如意棒を倒し、…そのまま馬の頭をした妖怪を押し潰す孫悟空

…「あんなモノを振り回されたら、我々はすぐ全滅だぞ!!早く逃げるんだ…、バカ芭蕉扇を忘れるな。あれが無かったら、金角銀角両大王さまに俺たちは殺されてしまうっ…!」

残った妖怪達は、…芭蕉扇を抱え。…火を避けながら、懸命に逃走しました。しかし…、妖怪の陣地は。沙悟浄の水とんの術で、徐々に鎮火してゆきます…。

「ちっ、…ツまらねぇ。…何体か、逃しちまったな。弟悪いが…、お師匠さまのトコまでは歩ってくれ。おれさまは、ちょいと筋斗雲で天まで一っ飛びして…。やっつけた妖怪共を、…お縄にしてもらうよ〜要請してくっから」

…あッとゆ〜間に、筋斗雲で飛び去る孫悟空。それからしばらくして…、沙悟浄三蔵法師を守る猪八戒の陣地まで戻りました。

沙悟浄、妖怪達との戦いタイヘンご苦労だったね…。しかし私には、…一つだけ気になるコトがある。…あなたと孫悟空は、卑怯な真似をしたりしなかったろ〜ね?妖怪を戦いで降すのも…、み仏に仕える立派な修行のウチなのだから」

三蔵法師は、心配そ〜に沙悟浄に尋ねます…。

「はい、…ぼくは全くしてゆません。…でも兄さんは、不意打ちで妖怪の将軍を引っ叩きました」

やがて…、戻って来る孫悟空三蔵法師は、沙悟浄から聞いたお話を問いただしました…。

「お師匠さま、…お言葉を返すよ〜で申し訳ありません。…しかし、けんかのコトならばおれさまの領分。不意打ちを卑怯だ…、とお師匠さまは仰いますが。いざ戦いの場に臨んでは、武人は常に気を抜いてはゆけません…。ましてや命を賭けてゆるのですから、…不意打ち程度仕かけても仕かけられても理の当然なのです。…それをダメだなどと仰られては、おれさまままごとでもしてるしかなくなってしまいます」

自らの戦いについての哲学を述べる…、孫悟空

「悟空や、私は戦いについてはよくわからない…。しかしあなたの語る考えには、…うしろめたいトコロはないよ〜だ。…それならば、私は、あなたの言葉を信じるとしよ〜」

内心三蔵法師は…、孫悟空の立派さに感動すら覚えてゆたのでした。

西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その9

孫悟空沙悟浄を乗せた筋斗雲は、ぐんぐん空を飛び。あッとゆ〜間に、…妖怪の陣地へ到着します。

「なぁ弟、どいつが妖怪共の親分だと想う…?」

妖怪の陣地を見下ろしながら…、沙悟浄に尋ねる孫悟空

…「うん、ど〜だろねぇ。あっあいつじゃないかな、…体も一回り大きいし威張ってるから」

沙悟浄は、狙い違わずズバリ虎徹将軍を指さしました…。

「よし決まりだ…、アイツを最初にやっつけよ〜。…おれさま、先にゆくぞ!!」

沙悟浄に一言残すと、…孫悟空は筋斗雲を飛び降ります。

「ん、何の影だ…?」

虎徹将軍が異変に気づき…、空を見あげると。…そこには、孫悟空の如意棒が迫ってゆました。

ガツンッ!、…一切何も出来ずにノック・アウトされてしまう虎徹将軍。孫悟空は、如意棒を回転させ地面に突き立てると…。大きな声で…、名乗りをあげます。

…「やいやい、お前ら。このおれさまはな、…はるばる西天までありがたいお経を。受け取りにゆかれる三蔵法師お師匠さまの、一番弟子孫悟空だ…!!お前らこんな大勢集まりやがって…、ただではおかねぇからそ〜想え!」

…筋斗雲をゆっくり降下させ、ちょこんと降りる沙悟浄

「ぼくは、…三番弟子の沙悟浄だよ。ぼくも戦うから、覚悟してね…」

降妖杖を構える…、沙悟浄

…「ひ、ひ〜、虎徹将軍がやられてしまった」

妖怪達は、…まるっ切り逃げ腰でした。

「ばかモン、何を浮き足立っておるか…。敵は…、所詮たった二匹ぞ。…取り囲んで、袋叩きにしてしまえ!!」

他の妖怪より少し体の大きい、…馬の頭をした妖怪が敵に喝を入れます。これで妖怪達は、気を取り直し…。孫悟空沙悟浄の…、周りを包囲し始めました。

…「フン、そ〜来なくっちゃよ!こっちはも〜暴れる気になってんだ、…これだけがおれさまのお愉しみだからな」

孫悟空は、頭の毛を三本引き抜くと…。「変われっ」と唱えます…、すると三本の頭の毛は。…三匹の孫悟空に変身します(ただし如意棒は持ってません)。

「隊長、敵が敵が増えました…!!」

再び及び腰になる…、妖怪達。

…「おい、今さら逃げよ〜ったって遅いぞ。一体残らずやっつけてやる、…さぁゆくぞ!」

四匹のの孫悟空沙悟浄は、この大喝を合図に…。妖怪達に襲いかかります…、如意棒を手にした。…本物の孫悟空が先頭を切りました、本物の孫悟空がブーンッと如意棒を一振りすると。それだけで、…5体の妖怪をやっつけてしまします。

「ウキッ、オレたちも戦うぞキッキッ…!!」

頭の毛が変身した孫悟空達も…、始めは拳骨で。…やがてやっつけた妖怪から武器を奪うと、それを振り回して戦いました。モノの5分も経たないウチに、…妖怪達は20体以上が倒されてゆます。

「え〜い芭蕉扇だ、芭蕉扇を持てぃ…!」

部下とおぼしき妖怪にゆいつける…、先程の馬の頭をした妖怪。

…「はっ、ここに」

馬の頭をした妖怪は、…芭蕉扇を手にすると。大きく振り被りました…。

「者共…、退がれ退がれ。…この芭蕉扇で、全て焼き尽くしてくれる!!」

馬の頭をした妖怪は、…芭蕉扇を勢いよく振り下ろしたのです。