美しき詩人の愛 3

次の日マルワは、メトカを連れて、野原へ花摘みに出かけました。
そして、二人でカゴいっぱいに、花を摘むと、それを売りに、街へ行きました。
メトカは、不思議に思った事があったので、それをマルワに尋ねました。
メトカ「ねぇ、マルワ。マルワの、お父さんはどうしたの?昨日は、帰ってこなかったみたいだけど…。」
マルワは、寂しそうに言いました。
マルワ「お父さんは毎日、私達が寝た後じゃないと、帰ってこないの。そして、私達が起きる前に、仕事を探しに行く…。朝早くから並ばないと、仕事がもらえないんだって。」
メトカは、少し悪い思いがしました。
マルワ「それでも、もらえる仕事はいつも、その日限り…。次の日は次の日で、また朝早くから並ばないと、いけない。
それなのに、もらえるお金はたった少し。だから母さんも、女中の仕事をしてるし、私もこうやって花売りをして、少しでも足しにしてるのよ。」
メトカは気になることが、あったので、それをまた聞きました。
メトカ「マルワはさ、学校には行ってないの?普通、君ぐらいの年の子は、学校に行くもんじゃないかな?」
マルワは、笑って言いました。
マルワ「あら、それならあなただって、一緒じゃない!私の周りには、学校に行ってない子は、結構いるわ。皆んなお金がなくて、行けなかったり、家の仕事の、手伝いをしたり…。学校に行ける子は、よっぽど恵まれた子よ。」
メトカは、人間達のその日のことしか考えない愚かさに、愕然とすると同時に、恵まれている自分を、恥ずかしく思いました。
そうこうしている間に、日も暮れて来ましたが、花は一向に売れません。
皆んな、今日食べる物を確保することに必死で、誰も花になんか、気をとめないのです。
メトカは、ガッカリしました。
メトカ「どうしよう…。全然、売れなかった。これじゃあ、今日の夕飯は食べられない。」
マルワは、特に気にする様子もなく、あっけらかんと言いました。
マルワ「気にしないで、メトカ。大体いつも、こんなものだから。大丈夫よ、お母さんはちやんと、夕飯を作ってくれてるわ。」
二人は、家に帰りました。
マルワのお母さんは、帰ってくるなり、悪態を吐きました。
お母さん「あなた達!どうせ花なんて、売れなかったんでしょう。あなた達に、食べさせる物は、何もないわ!でも、何も食べさせなかったら、明日から働けないでしょうから、いいわね!今日だけよ、今日だけは食べさせてあげる。」
そして、その今日だけは、毎日続いたのでした。
メトカは、人間の表面の態度と、その裏にある愛情に、少しずつ気が付いていました。