ダンツは荷物から「癒しのお経」の巻き物を取り出すと、…倒れてゆるザハスに駆け寄りました。
…「な、何をする気だ」
息の絶えかかる…、ザハス。
「ゆ〜までもなかろ〜、お主の傷口をふさぐのよ…。お主の罪を裁くのは、…わしらではなく僧正さまじゃからな」
…巻き物を、開くダンツ。
「やはり…、お前は愚か者よ。私は既に人間であるコトを捨てている、やれるモノならやってみろ…」
ダンツはお経を唱えますが、…手のひらが温かくなって来ません。
…「一体何故、こんなのは初めてじゃ」
お経を…、何度も唱えるダンツ。
「魔人と化すのは、闇の誘惑によって堕落する程度とは違う…。私自身が、…本当にそ〜望んだからなのだ」
…アーシャは、二人のやり取りを聞くウチに。ザハスは…、ダンツに嫉妬しているのでは?と想います。
「ザハス、一体何故じゃ…。お主は、…何故そこまで!!」
…諦め切れないダンツは、繰り返し繰り返し唱え続けました。
「私は聞いてしまったのさ…、ネルムはお前を自分の後継者に据えると」
ダンツは、想像すらしたコトも無い事実です…。
「お主、…何をバカな。…次の僧正はお主だと、みんなゆっとるじゃないかい!」
体が砂になり…、崩れてゆくザハス。
「噂などに、何の意味がある…?お前ごとき、…下賤の者に仕えるぐらいなら」
…ザハスの体は完全に砂になり、吹いて来た風に飛ばされてしまいました。
「プイプイ…、プイプイ!!」
一生懸命、アーシャの傷をなめるぺぺ…。
「すまんな、…アーシャ殿。…遅くなってしも〜た」
アーシャは…、力なく地面にへたり込んでゆます。何度となく、お経を唱えてアーシャの傷を癒すダンツ…。
「お経の力で傷口はふさがったが、…まだまだ動いてはいかんわい。…まぁ、もはや急ぐ必要もないからの。あとは…、工作隊のお仕事じゃよ」
工作隊の職人さん達は、早速神さまの像の修復に取りかかってゆました…。アーシャの隣に、…腰を下ろすダンツ。
…「ザハスは、よ〜頭の切れる男じゃったんじゃ。わしと来たら…、いまだにこ〜して巻き物を持ち歩いとる。ところが、あいつは…。どんな難しい文言も、…一度読めばスラスラじゃった」
…何と声をかけたモノか、迷うアーシャ。
「この南の大陸でも…、有数の名家の一人息子だったんじゃザハスはな。その財産を全て捨ててまで、修行の道程を選んだとゆ〜に…」
ダンツは、…地面の一点をじっと見詰めてゆます。
…「ダンツさんは、ザハスさんを尊敬してたんですね」
アーシャの言葉は…、ダンツの怒りに火を点けました。しかし、それはアーシャへの怒りではありません…。
「わしだけじゃないわい、…みんながみんなそ〜だったんじゃ!…わしが、次の僧正だなんぞ。あいつの聞き違いに決まっとる…、こんな不出来な坊主が」
アーシャは、この数日間ダンツと共に旅をして…。「やはり僧正さまは、…よくお人柄をご覧になっていらっしゃるのだな」と納得しました。