西遊記〜一人と三匹の愉快な旅〜 その20

一人でふらふら…、三蔵法師の閉じ込められている奥の牢獄まで。歩いてゆく、じょうろ…。

「今さっき、…表が騒がしかったが。…もしかすると悟空がやって来たのかね、やり過ぎなければゆいんだが」

(また…、気を遣ってる)

それが、じょうろの神経を逆撫でしました…。

「えぇそ〜よ、…確かに孫悟空はやって来たわ。…でもおにいさまの軍勢に怖れをなして、猪八戒沙悟浄を連れて。逃げ帰ったの…、"これからはお師匠さま抜きで旅を続けよ〜"。ってゆってたから、あなた残念だったわね…」

とっさに、…ウソを吐いたじょうろ。

…「それは残念だ、でも仕方ない。私はここで倒れる〜運命〜でったのだろ〜…、それでもゆい。誰かが西天に辿り着きありがたいお経を持ち帰れば、唐の都のみんなは救われる…」

三蔵法師は…、うつむいてつぶやきます。

「そんなのウソよ、あなた死ぬのが怖いって…!!」

カッとなる、…じょうろ。

…「おや、ど〜してその話をご存知かな。いや全く恥ずかしい…、しかしあなたの仰る通りだ。私はこれから私を待ち受ける〜運命〜が怖い、今にも震えだしそ〜なぐらいに…」

じょうろは、…自分は勝ったと錯覚しました。

…「そ〜でしょ、じゃああたしに命乞いなさい!」

三蔵法師は…、目を伏せたままです。

「だケドね、私はあなた達に捕まって…。初めてわかったんだ、…死ぬコトより恥ずかしい方がツラいと。…私はありがたいお経が、唐の都に届けられないのが恥ずかしい。それを教えてくれたのは…、おじょうさんあなただよ」

地団駄を踏む、じょうろ…。

「ウソよウソ、…あなたはきっとウソから生まれて来たんだわ。…これ以上ウソを吐いたら、あなたの首筋を噛み切ってやるから!!」

視線を…、じょうろに合わせる三蔵法師

「おじょうさん、あなたの心には"善根"があるよ〜だね…。それが、…これまでの悪いおこないとぶつかってゆるのだろ〜」

…じょうろはハッとしました、思わず反論出来なかったのです。

「それは何よりだよ…、死ぬ直前にあなたに会えてよかった。妖怪の心にも"善根"は兆す、私は常々そ〜考えてゆたが…。実際目の当たりにすると、…それは清々しい」

…うつむく、じょうろ。

「じゃあ答えてよ…、妖怪は。ううんモチロン人間でもゆいけれど、何の為に生きてるの…?」

三蔵法師は、…しばらくの間黙って考え込みます。

…「そ〜だね、それは難しい。人によって色々だろ〜し…、人の数だけ生き方がある。それでも、イチバンシアワセなのは…。誰かの喜びに、…進んでご奉仕させていただくコトではないだろ〜か?」

…不意に悲しくなって、べそをかき出すじょうろ。

「やっぱりあなたはウソ吐きだ…、あたし騙された。みんな、自分の為に生きてるってゆ〜のに…」

憐れみの込もった目線で、…じょうろを見詰める三蔵法師

…「そ〜ゆう生き方もあるよ、でもそれはみ仏のお前では損な生き方だ。心とゆ〜のは…、誰かに喜んでもらうと。自分の心から、泉のよ〜に喜びが湧いてくるんだ…。そりゃあ、…自分を喜ばせる生き方のよ〜に。…一度にた〜っくさんは気持ちよくはならない、でも心の奥底からほんのりと温まれる」

じょうろは…、大きな声で泣き出しました。赤ん坊のよ〜に、「あ〜んあ〜ん」と…。騒ぎを聞きつけた妖怪が、…何体か奥の牢獄に入って来ましたが。…じょうろは、みんな追い返してしまいます。

「じゃあ…、あなたの言葉が本当だって。あたしに、証明してみせて…」

ひとしきり泣いて、…気分が落ち着くと。…じょうろは三蔵法師に近づき、その身を縛ってる縄を噛みちぎりました。

「あたしの化け術で…、あなたを首飾りに化かすから。そのまま、あのお猿さん達を近くまで運んであげる…」

三蔵法師は、…じょうろににっこりと微笑みかけたのです。