再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その40

「おっ何だ純平…、現在かかってるのStanley Turrentineじゃないか?」

季節は巡って、良太がフリーターになって2年目の春…。純平の車でかかるJazzに、…良太はそ〜ゆった。

…「さすがだな当たりだよ、Jazz聴き慣れてるだけのコトはある。お前からもらった…、カセット・テープ聴いてるウチに。何だかおれもよくなって来ちまってな、自分でも買ってみたんだ…。そうだ、…良太ダッシュ・ボードに入ってるチラシを見てくれ」

…良太が助手席のダッシュ・ボードを開けると、一枚のチラシがハラリと落ちる。眺めてみる良太だが…、暗くてよく見えなかった。

「そこは、春日部にあるいわゆるJazz・バーってヤツで…。普段はレコードでJazzをかけてるんだが、…毎月末の週末には。…何とプロのバンドを呼んで、生演奏を聞かせてくれるらしい。ど〜だ…、勝美さんも誘ってゆってみないか?」

興味津々の良太だが、勝美さんの件は断らざるを得ない…。

「勝美さんまだ大学生だから、…門限があるんだよ。…卒業するまでらしいケド、おれとしても。ご両親にご心配かけたくないしね…、二人でいこうゼ。チラシもらってもゆいかなぁ…?」

純平は、…うなずいた。

…「ただ良太、覚悟しろよ高いぞ。バーだからゆいお酒しか置いてないし…、Jazz・バンドが生演奏するからには。チャージ料もそれなりにかかる、一人2万円ってトコだな…。さすがに、…おれも出してはやれんよ」

…笑いながら、チラシをバック・パックにしまう良太。

「何ゆってんだよ…、おれもアルバイトしてっから。も〜おごってもらう必要なんてないさ、ただお給料出てからになっちゃうけれども…」

それから二月が経った、…月末の金曜日の5:30。…良太と純平は、春日部のJazz・バー「Marble」を訪れる(ちなみに今日は本格的に飲むつもりなので電車である)。

「いらっしゃいませお客さま…、二名さまですか?」

マスターに純平はうなずいた、開店したてのお店にはまだお客さんは他にゆない…。テーブル席に案内してもらう、…良太と純平。…外から見てもわかる、小さなお店で。中にはカウンター5席と…、テーブル席二つしかなかった。

「良太、あれ見ろよ…。Jazz・バンドが準備してるぞ、…カッコゆいよなぁ」

…純平に促され、良太が「Marble」店内の奥を見ると。これから演奏するのであろ〜…、Jazz・バンドがサウンド・チェック中である。「Jazzメン」とゆえば、これは良太にとっては…。神さまに等しい方々であった、…もし許されるのなら両手を合わせて拝みたい気持ちである。

…「申し訳ありませんが、お客さま。バンド・メンバーには…、くれぐれもお声をおかけにならないよ〜お願い申しあげます。」

お冷やを運んでくれたマスターに、良太と純平は頭を下げた…。

「取り敢えずビールでゆいよな、…マスター。…エビス・ビール二つと、何だろすぐ出て来る。そ〜だな…、ビーフ・ジャーキーもお願いします」

純平の声は、良太の耳には入っていない…。良太の耳が追ってゆるのは、…サウンド・チェック中のバンドの面々が鳴らす。…ピアノとウッド・ベース、それにドラムの途切れ途切れの音だ。

「おいおい…、今からそんなに興奮してたら。へばっちまうぞ、少し落ち着けよ良太…」

そ〜ゆいながらも、…純平自身も愉しみで仕方ない。…時間が経つにつれて、いつのまにかJazz・バー「Marble」は満席であった。やたらのどが乾いて…、ビールをぐいぐいあおる良太だが味が全然わからない。

「みなさんお待たせしました、これより"Stingray"の生演奏をスタートさせていただきます…」

良太と純平が心から待ち望んだ、…Jazz・バンドの生演奏のが始まる時間が遂にやって来た。…一発目に繰り出される、ドラムのフィル・インを聴いた瞬間。良太は思わず…、手にした「セブン・スター」を取り落とす。

「バカ良太何やってんだ、火事になっちまうだろ…」

すぐ気づいた純平は、…拾いあげて灰皿でもみ消した。

 

本日は"Stingray"の演奏をお聴きいただきありがと〜ございましたのテーマ…

Hank Mobley Quintet/Hank Mobley

  -5.Stella-Wise

  -6.Bass on balls

  -4.Startin' from scratch

  -1.Funk in deep freeze

  -3.Fin de l'affire

  -2.Wham and they're off

 

…(申し訳ありません、このプレイ・リストはループしません)

 

https://youtube.com/playlist?list=PLWCErtfD9n76S9k2FMn4y20AianrXZxCK