「Quality of Lifeは、略してQ.O.L.と呼ばれます…。これはご利用者さま一人々々の…、人生への満足度を示しますが。…それは、必ずしも物質的な対象に限定されません」
春日部にある福祉の学校に通い始め、…授業を受ける良太。大学生だった頃は授業とゆえば大体うわの空だったが、今は真剣だ…。
「現在の介護に於いて最も重要視されるのが…、Q.O.L.だとゆっても過言ではありません。…ご利用者さまの、生きがいや自己実現をどのよ〜に達成するか?が求められているのです。それでは、…そろそろ休憩時間に致しましょ〜」
授業一コマの50分は、良太にとってあまりにアッとゆ〜間である…。介護士をどこかで…、「肉体労働の延長」と思い込んでた良太には。…見るコト聞くコト新鮮で、なる程「介護士は興味深い」と想えた。
教室はビルの3階にあり、…その非常階段が喫煙所として設けられてゆたのだが。良太が「セブン・スター」を吹かしていると、他の生徒達も集まって来る…。
「あ〜かったりぃ…、ごたくはい〜から早く資格だけくれねぇかな」
…その中の一人、40代ぐらいの男はそ〜つぶやいた。
「ホントだよ、…介護なんて誰がやりたくてやるかっつ〜の」
そのつぶやきに、20代後半の男が相づちを打つ…。「聞きずてならない…」、パッと感じる良太だがど〜にもならない。
…「私は面白いよ、これからビジネスとして期待出来る分野だしね」
二人の男の話に、…こギレイな老人が混ざった。
「私は、建設業でずっと営業やってたんだ…。定年退職してウチにゆてもやるコトがなくて…、せっかくなら働こ〜と考えて」
…40代の男は、こギレイな老人に向かって返事をする。
「おじいさん、…お金持ってるんでしょ?どこで働いてたのか、知らないけれど…」
煙草の煙を吐き出す…、こギレイな老人。
…「会社名は出せないケド、まぁそこそこ知られた会社で。私は営業部長だったから、…あるモノはあるよ」
それを聞いて、20代後半の男はうらやましそ〜な目で見詰めた…。
「それなら面白いでしょ…、他人ゴトだモノ。…おれらはこれから食ってかなきゃならんのですから、そんな気持ちのゆとりはありません」
聞きたくなくても、…やり取りは自然耳に入って来る。「これも現実なんだ」、良太は考えていた…。介護業界の人手不足には…、働き手を選ぶ余裕はない。…だから自然、ありとあらゆる人々がありとあらゆる場所から集まって来るのだ。それを気に食わないとゆ〜のであれば、…良太が引き退る他はない。
「ケア・マネージャーの資格を取っちゃえば、そこそこ稼げるんじゃないの…?」
こギレイな老人は…、ど〜やらそれなりに事情に通じてゆるよ〜だ。
…「いや、そんなに儲からないみたいですよ何件も抱えて、…忙しい割には」
「ここの講師だって、ケア・マネージャーでしょ…?そんなに儲かってたら…、講師なんてやってないでしょ〜」
…とは考えるモノの、やはりゆい気分にはなれない。何にせよさっさと吹かしていってしまお〜、…と良太は決めた。
「そ〜いやそ〜だ、それならおれ…。先生に直接聞こ〜かな…、手取り幾らぐらいですか?って」
…40代ぐらいの男の話を、楽しそ〜に聞くこギレイな老人。
「それはさすがに教えてくれないんじゃないかね、…私も多少興味はあるが」
苦しみにあえぐよ〜に、20代後半の男は語る…。
「家族がいるから…、やっぱり25万は欲しいんだ。…でもそ〜なると、よほど忙しいトコでないと」
…良太は「セブン・スター」が半分ぐらいまで燃えると、もみ消して教室に戻った。残りの時間は…、先程の授業の復習に充てる。