再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その65

「大丈夫良太くん、…ずい分眠そ〜だけれど」

…仮眠の一時間は、アッとゆ〜間である。携帯電話のアラームが鳴って起きた良太は…、目をこすりながら飯高主任の待機する食堂へ戻った。

「取り敢えず煙草吹かして来れば、ぼく待ってるから…」

お言葉に甘える良太、…庭に通じるガラス戸を引き開けると。…冬の冷たい夜風が吹き込み、気持ち目が覚める。

「おれはも〜ダメだ…、何ならここでさえ眠れそ〜だから」

「セブン・スター」に火を点けると、ニコチンは頭に回った…。そしても〜片手で、…「濃いめのマキシム」の残りをまとめて流し込む。

…「これさぁ、あんまり体にはよくないと想うんだ。だからおススメ出来ないケドも…、もしそんなに眠いなら飲んでみる?」

良太が食堂に戻ると、飯高主任はアルミのシートに包まれた茶色い錠剤をテーブルのうえに広げた…。パッケージを取りあげると、…その名も「エスタロン・モカ

…「へ〜、何ですこれ?」

パッケージの説明を読む…、良太。

「これカフェインの塊なんだ、それにあんまり飲んでると体が慣れて…。効かなくなちゃうから、…ぼくは今時分に一錠だけ飲むんだよ。…眠気には効くから、それに安いし」

わらにもすがる想いで…、良太は一錠わけてもらう。給湯室でコップに水を汲んで服用し、それから飯高主任の持つP.H.S.を受け取った…。休憩室で仮眠に入る飯高主任、…良太は食堂で待機してゆたが。…眠くてしょ〜がなく、「何でもゆいからとにかくコール入鳴らないかなぁ」と期待する。ところがやっぱり何事もなく…、40分ぐらい過ぎた辺りで気がついた。

「あっ、そこまで眠くないや…」

パッチリとお目々がさえてるワケではないが、…頭がもげそ〜な程眠くもない。…良太の心に、希望の光が灯った。

(これなら…、起きてられる)

そのまま、自動販売機で缶コーヒーを買い足す…。

「仮眠明けは、…やっぱりダルいね。…こればっかりは、ど〜しても慣れない」

食堂に戻って来る飯高主任…、飯高主任も起きて「エスタロン・モカ」を飲んだそ〜だ。良太は午前三時になると、またしても巡視を回り…。午前四時半ぐらいから、…じょじょに既にめを覚まされてる入居者さんを。…車イスに移乗し、お顔を拭いて食堂に連れて来て差しあげる。

「良太くんごめん…、T.V.つけてもらってゆい?あぁそんなに急がなくてゆいから、8:00までにみんな起きてれば…。もし何なら、…途中自分のタイミングで一服してもかまわないよ」

…7:00ぐらいになると、頼みの「エスタロン・モカ」も効果が怪しくなって来るが。早番の安野さんが…、それより少し早めに来てくれた。

「うわっ、すごい眠そ〜じゃない…。まぁでもも〜ちょっとだから、…飯高主任と相談して朝ごはん食べて来なよ」

…夜勤の介護士は、早番が到着したら朝ごはんを食べる決まりである。そして8:00から…、入居者さんたちの朝ごはんが始まり。召しあがられた方から、順次おトイレで用を足されお部屋で再びやすまれるのだ…。これまで良太もずっとそ〜だったが、…8:30になると日勤がやって来て。…今度は朝の引き継ぎである、昨晩の入居者さんのご様子はほとんど飯高主任がまとめてくれて。良太はほとんど報告した記憶がない…、ただそれでも。「エスタロン・モカ」さえあれば起きていられる、「あとは何とか慣れるだろ〜」そ〜信じて…。