再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その75

「そらいくど〜、…はてさてすいかはどこかな〜?」

…咲華との出来事から数年が経ち、良太もも〜30前である。季節は夏まっ盛りで…、グループ・ホーム「幸楽苑」はすいか割り大会で盛りあがってゆた。企画したのは良太で、この頃の良太は入居者さんに親しんでもらえる…。話し方を色々試行錯誤した結果、…どこにも存在しない独自のなまりでお話ししていたのである。

…「あらあらご〜めんごめん、間違って石井さんぶっ叩いちまった」

企画としてはこ〜なのだ…、フツーのすいか割りと同じよ〜に。食堂のテーブルを片づけ、すいかを中心にみなさんに丸く座っていただく…。そして介護士一人が目隠しをし、…入居者さん達の声かけを頼りにすいかを叩いて割るのだが。…この目隠しに細工がしてあって、実は全部見えているのだ。このすいかを割る介護士は…、モチロン良太自身が引き受けるのだが。入居者さんたちの声かけに、わざと間違ったりおどけたりしながら笑いを取るそんなレクリエーションである…。

「みなさんお待ったせ、…今日のおヤツは。…今割りたてのすいかだよ、たくさんあるからたっぷりお召しあがりくらっせ〜」

そして最後は…、軽くすいかを叩く。すいかの表面に割れめが入るぐらいにして、それを厨房に運んで切ってもらうのだ…。

「あこのすいか美味しい、…良太くんこのすいかどこで買って来たの甘〜い」

…良太が用意したすいかは、大玉丸々一つだから。職員達もご相伴に預かった…、早番の安野さんは早くも二切れめに手を伸ばす。

「日づけを指定させてもらって、ウチの近所の八百屋さんで頼んだんですよ…。おっちゃんに施設のみんなで食べるってゆったから、…ゆいヤツ用意してくれたんだな」

…勝美とは、二年前に結婚した。お互いの職場への通勤しやすさを考慮して…、春日部に2LDKのアパートを借りて生活している。さすがに春日部から、幸手までランはシンドいので…。良太はそんなに高くないロード・バイクを買った、…それ以来気に入ってしまい現在ではサイクリングは趣味の一つである。

…みなさんがすいかを食べ終わると、すいか割り大会も終わりだ。日勤の良太は…、生活記録に今日のすいか割り大会でのみなさんのご様子を書き込んでゆる。すると、遅番の飯高主任が良太にこんなコトをゆった…。

「すいか割り大会ご苦労さま、…良太くんお話があるんだお仕事中だけど喫煙所までいこ〜よ」

…飯高主任のあとに続いて、良太も外の喫煙所に出て煙草に火を点ける。

「良太くんも知ってるかもわからないけれど…、そろそろ近藤副主任が定年を迎えられるんだ」

マルボロ」を吹かす飯高主任、そのお話なら良太も知ってゆた…。今年の12月で、…65歳になられるらしい。

…「近藤副主任は定年後も"幸楽苑"で働いてくれるってゆ〜から、戦力的には心配いらない。ただ雇用の契約が変化するから…、副主任の役職を続けるコトは出来ない」

うんうんうなずく良太、世の中は「何か」とややこしい仕組みになっているモノなのだ…。

「だから、…良太くん近藤副主任のあとを継いで。…副主任お願い出来ないかな、既にぼくから推薦して。施設長、安藤ケア・マネージャー、課長の賛成はいただいてる…、あとは良太くんのお気持ち一つなんだ」

驚いた良太は、思わず手から「セブン・スター」を取り落としてしまう…。

 

「ぼくが副主任ですか?」のテーマ…

お陽さまみえたらふとん干して/明和電機

https://youtu.be/Guvj_207MXA

 

               おわり