再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その57

「今日からおムツ一人でやってみよ〜よ…、良太くん?ぼく村田さん入るから、良太くん梅沢さんお願い…」

グループ・ホーム「幸楽苑」に良太が勤め始めて、…そろそろ一ヶ月になる。…トレーナーの近藤副主任は、そんな良太に「一人おムツ」を指示した。

「もし手に負えなかったら…、ぼく村田さんのあとそっちにゆくから。手分けしてやっちゃおう、取り敢えずトライトライ…」

替えの尿取りパッドを、…おムツ庫に取りにゆく良太。…その内心は、タイヘンな緊張である。近藤副主任と…、約一ヶ月の間一緒におムツ交換に回ってゆるから。大体の様子は予想がつく、恐らく梅沢さんは量は多いが尿だけだ…。それでもやはり、…初めての「一人おムツ」である。

…「こんにちは梅沢さん、おムツを交換しますからベッドに横になってもらえませんか?」

替えの尿取りパッド、使い捨てのおしり拭き、替えたおムツや尿取りパッドを捨てるバケツを…、ディスポをした両手に抱え。良太はノックしてから、梅沢さんのお部屋に入ってあいさつした…。梅沢さんは、…身体能力からいえば当然リハビリ・パンツ(…腰にゴムの入った、脱ぎはきしやすい。紙製の使い捨て下着…、中に尿取りパッドがセット出来る)なのだが。ある程度認知症が進んでゆる為、尿意がひどくあいまいで…。何よりおしっこの回数が多く、…総じて尿量が多い。…モチロン介護士からは、「それでもリハビリ・パンツにするべきだ」ととゆ〜意見も聞かれた。

「おしっこ出ちゃってるかも知れないわ…、何だかスッキリしてるから」

梅沢さんに、ベッドに横になってもらう良太…。梅沢さんのズボンを下ろすと、…下っぱらの辺りのおムツのマジック・テープを外して開ける。…パッドを確認すると、よかった失禁(この場合…、パッドが尿を吸収し切れなくておムツが汚れてしまうコト)していない。

(うんうん、ラッキー…)

介護士にとって、…いくらお仕事とはゆえ。…他人の(自分のだって)尿や便に触れるのは、決して気持ちゆくはない。ただある程度場数を踏むウチ…、慣れるのも本当だ。正直にゆって、初めておムツを開けて便を見た時の気持ちは何ともゆえないモノがある…。しかしやはり、…理想論に聞こえてしまうかもわからないが。…おムツ交換されるのは恥ずかしいのだ、そこまで良太が配慮出来るのはまだ先のお話である。

「右向きになってもらえませんか…、梅沢さん?」

良太はベッドの左側に立っているから、梅沢さんは良太に臀部を向ける格好になった…。

「おしり拭きが当たりますからヒヤッとしますよ、…ごめんなさい」

…使い捨てのおしり拭きを数枚使い、良太は梅沢さんの臀部と陰部を丁寧に拭う。使い終わったおしり拭きをバケツに入れると…、今度は尿取りパッドを広げて。良太は、やはり臀部と陰部に沿わせる形で…。ギャザーまでキチンと広がるよ〜、…当てた。…それからまた、梅沢さんに仰向けになってもらって。おムツのマジック・テープをくっつけていると…、ドアからノックの音が聞こえ。あいさつと共に、近藤副主任が入って来る…。

「うまくいったみたいだね、…良太くん」

…「本当にうまく出来たかど〜か?」、一抹の不安を口にする良太に近藤副主任は明るく笑った。

「わからないけれど…、多分大丈夫なんじゃないかんなぁ。良太くん丁寧だし、焦らなければ問題ないよ…。おムツ交換はすごく早い人もゆるケド、…もれちゃったらその分また手間がかかるからね。…これからも、丁寧に一つ頼むよ」