どらねこクエスト〜はらペコ勇者の大冒険!!〜 その49

自分の船室に戻った戦士クリムは、荷物の中から学生ラルムのお手紙を取り出します…。お手紙の封を切って中の便箋を開くと…、そこにはこんなコトが書かれてました。

…「愛する勇者クリムさんへ、こんにちはクリムさん。いえ伝説の勇者クリムとお呼びすべきでしょ〜か、…ぼくはどちらでもかまいません。ぼくは1人のネコミミとしてのクリムさんをモーレツに愛し、勇者クリムの大ファンでもあるからです…。もしぼくのクリムさんへの愛が…、泉だったらど〜なるでしょ〜?…たちまち溢れて"ねこねこファンタージェン"を飲み込む、ちょっとした大洪水になりかねません。そしたらクリムさん2人で方舟にのって脱出しましょ〜、…そ〜して2人っ切りでずっと愛し合うのです!!ぼくは一度、"わんわんワンダーランド"の"ワンだふる大学"に戻ります…。今度の旅の研究結果をまとめなければなりませんから…、ぼくもここががんばりドコロ。…ぼくだってがんばりなら、クリムさんにも負けません。2人で、…がんばり競争をしましょ〜!」

便箋の隙間から、「何か」がポロッと落ちます…。戦士クリムが拾いあげると…、それは「雨の雫石」がはめ込まれたペンダントでした。…「雨の雫石」は旅の安全を願う、ねこ女神「オー・ラロル」由来の宝石です。革の胸あての下にペンダントを、…しまうよ〜に身につける戦士クリム。何だか、学生ラルムがいつも一緒なよ〜な気がしました…。

神官マルミと魔女ケレナは…、甲板でお茶してゆます。…神官マルミは設えられた長イスに、魔女ケレナは自前のハンモックを吊って揺られてました。

「マルミって何で旅を始めたの、…"何か"目的があって?」

何となく神官マルミに質問する、魔女ケレナ…。

「私達神官は…、一人前になる為に。…誰でも三年間は、冒険の旅に出る決まりになっているんです。冒険の旅の途中で鍛えられ、…色々な生き方があるコトを学ばなければならないんですよ。それなら、ケレナさんは何故旅をなさってるんですか…?」

神官マルミは…、揺れる船のうえでこぼさないよ〜慎重にカップのレモン・ティーを口に運びます。

…「アタシはただ、旅を続ける暮らしが性に合ってるんだ。一つトコロに長居すると、…ど〜も飽きちゃって」

話を続ける2人のトコロに、杖をついたベテラン船長さんがゆっくり歩いて来ました…。

「お二人さん…、ごきげんいかがでしょ〜かな?…クリムさんのお姿が見当たりませんが、どちらか心当たりはござらんか」

神官マルミは、…立ちあがります。

「今船室に戻ってます、ご用がおありならお呼びしましょ〜か…?」

パイプから煙をモフッモフッと吐き出す…、ベテラン船長さん。

…「おぉそ〜していただけると助かります、ど〜にも脚が悪くなってしまって。何大した用事ではありませんが、…先程カツオが獲れましてな。ウチのコックにタタキにさせてゆるのです、みなさんに是非お召しあがっていただこ〜と…」

魔女ケレナのひとみが…、キラーンと輝きました。

…「カツオのタタキなら、船長さん当然お酒も?」

ニッコリ笑うベテラン船長さんは、…ほがらかに答えます。

「そりゃあモチロンです、まさか海の男が…。タタキを出すのに酒を出さんとあっては…、タタキにされたカツオも面白くないでしょ〜。…本船はですな市長殿のご厚意で、あの幻の銘酒"ねこにこばん"を積んでおるのです!!」

魔女ケレナは、…も〜舌なめずりしてゆました。

「えぇっ、あの超レアな吟醸酒"ねこにこばん"…!ヤダァ船長さん…、わかってる〜」

…間もなく「熟したカツオブシ号」は帆を閉ざし、飲めや歌えの大宴会が開かれます。「ねこにこばん」を一升瓶から直にあおる、…魔女ケレナ。

「いよっ、さすが天才魔女…!!ネコミミ一の美人ケレナ…、ゆい飲みっぷりだねぇ!」

…またそれを船員さん達が、はやすのです。甲板の床にドンッと一升瓶を置いた魔女ケレナは、…大笑いでした。

「アッハッハ〜、お酒のコトならアタシに任せなさい…。ほらほら…、ドンドン持って来〜い」

…そんなに強くないのでウーロン茶を飲んでいる、神官マルミ。神官マルミがわきに座る戦士クリムを見ると、…何だかおちょことにらめっこしてゆます。

「ど〜なさったんですクリムさん、お酒あんまり進んでいませんけれど…」

「うん…、ウウン。…だ、大丈夫、アハハッ」

戦士クリムの横顔に、…神官マルミは強い決意を感じてゆました。