石造りの床のうえに放り出された「おおトロの剣」を…、戦士クリムは拾いあげました。そのまま「おおトロの剣」を天にかざすと、剣の間にかけられた鍵が、カチリと音を立てて外れます…。戦士クリムは、「おおトロの剣」をたずさえて、…剣の間の扉を開きました。
…「よかったクリムさん、無事で」
戦士クリムが剣の間を出ると…、すぐに神官マルミが駆け寄ります。神官マルミは戦士クリムの両手を掴むと、上下にブンブン振りました…。
「お話は大巫女サレムさまから聞きました、…勇気の試練では。…実体化した心の闇を征せねばならないと。でも…、大丈夫だったんですね」
神官マルミの肩に手を置き、戦士クリムは大巫女サレムさまに向き直ります…。
「お世話になりました、…大巫女サレムさま。…ぼくは無事、勇気の試練を乗り越えました」
相変わらず厳しい大巫女サレムさまの表情でしたが…、どこか笑いを含んでいるよ〜にも見えました。
「クリムさん、あなたは勇気の試練を乗り越えました…。しかし、…聖戦士の儀式はまだ終わってゆませんよ。…一度その"おおトロの剣"をねこ女神"オー・ラロル"さまにお返しして、改めて聖戦士に叙任されるのですから。それでは中央神殿の中心…、大聖堂に向かいましょ〜。そこで、聖戦士の儀式を完了させるのです…」
こ〜して大巫女サレムさまを先頭に、…5人は大聖堂に歩き出します。
…さて戦士クリムと神官マルミは、中央神殿の休憩所「あま夏堂」でお茶しています。聖戦士の儀式の準備が整うまで…、まだ時間がかかりました。
戦士クリムは、緑茶と草団子…。
神官マルミは、…お抹茶とごまだれ団子をそれぞれいただきます。…よほどおなかが空いたのか、戦士クリムは草団子をパクパク食べてはおかわりしました。
「何だか安心しました…、いつものクリムさんに戻ったみたいで」
口のなかいっぱいに、戦士クリムは草団子をほおばります…。
「そ〜、…何かヘンだったぼく?」
神官マルミは、…お抹茶をすすりました。
…「そ〜ですね、いつ頃からでしょ〜。私が覚えてる限りでは…、ラルムさんと出会った辺りから様子がおかしかったです。何だかふさいでらっしゃるコトも多くて、私はてっきりラルムさんがいけないのかと…」
学生ラルムの名前が出ると、…戦士クリムは草団子を食べる手を止めます。
…「ぼく、勇気の試練の途中でラルムの姿が浮かんだんだ。ラルムも戦ってる…、ラルムにしか出来ない戦いを。そしたら、ぼくも勇気が湧いた…。ラルムだってがんばってる、…ぼくだって負けるワケにはいかないよって!!」
…お抹茶のお椀をテーブルに置いて、神官マルミは静かに語りました。
「ラルムさんはきっと…、本当にクリムさんを愛してるんですね」
戦士クリムは顔を真っ赤にして、笑います…。
「アハハ、…そ〜かな?…何だか、照れくさいね」
2人にの会話に…、少しだけ間が開きました。やがて戦士クリムの表情に、真剣さが戻ります…。
「ぼくはラルムが好きなんだ、…いつか一緒に暮らしたいな!」
…神官マルミには、戦士クリムは本当に「何か」を乗り越えたんだと実感されました。ど〜声をかけたら…、と想いましたが。
「応援します、友人として…」
これでゆいんだ、…と納得出来たのです。
…そんな2人の様子を、ねこ女神「オー・ラロル」さまも微笑んで見守っていました。