どらねこクエスト〜はらペコ勇者の大冒険!!〜 その58

「熟したカツオブシ号」は、…パウル島を離れ遥か洋上にありました。…その甲板には、聖戦士クリム、神官マルミ、魔女ケレナ。そしてパイプを吹かすベテラン船長と…、たくさんの船員さん達の姿があります。潮風を涼しそ〜に浴びる聖戦士クリムに、神官マルミが話しかけました…。

「クリムさん、…遂に最後の戦いが近づいてますね」

…船のへりに手をつく聖戦士クリムは、海を眺めたまま返事をします。

「そ〜だね長い旅だったよ〜なそ〜でもないよ〜な…、不思議な気持ちだよ」

魔女ケレナは、マストの支柱に寄っかかってゆました…。

「何ゆってんのクリム、…年寄りじゃないんだから。…アタシ達これからでしょ、花の咲くのは長いんだから」

指を一本立てる…、神官マルミ。

「それでも、私達のにゃん生で最も大きな戦いになるのは間違いないでしょ〜…。何しろ、…あの地獄の破壊ねこ"メギムトゥ"と戦わなくてはならないんですから」

…振り返って拳を握り締めた聖戦士クリムは、悔しそ〜に語ります。

「それにまだ…、雷の悪魔ねこ"カミマル"がゆる。ぼくはカミマルと決着をつけなくちゃならない、あの時にぼくが倒していれば…」

フワ〜っとあくびをする、…魔女ケレナ。

…「そ〜だったね、クリムは一度カミマルに敗れてるんだっけ。でもさ…、現在なら楽勝なんじゃない?クリムも相当強くなってるし、アタシ達もいるし…。それに何より、…"おおトロの剣"もあるんだから」

…聖戦士クリムは、ニッコリ笑って力こぶを作りました。

「そ〜だよどんなに苦しくても…、みんなで力を合わせればきっと乗り越えられるさ!!」

ツられて、神官マルミも魔女ケレナもニッと笑います…。

夜、…聖戦士クリムは自分の船室でお酒を飲んでゆました。…銘柄は、「三毛」の本醸造。「三毛」は聖戦士クリムの生まれ故郷である…、キトランの村に蔵元があり。メルマク山のキレイな雪解け水から、醸造されているのです…。だからキトランの村の戦士ネコミミ達は、…誰もがみんな「三毛」を愛飲してゆるのでした。

…「ふぅ、やっぱり美味しい」

グイッと飲み干したおちょこを…、聖戦士クリムは机のうえにおきます。色々なコトが、思い出されました…。これまでの冒険、…どこか憎めない「うひょねこ団」。…キトランの村の戦士ネコミミ達、しかし何よりお母さんがしのばれたのです。

「お母さん元気かな…、心配なんかしてないとゆいケド」

聖戦士クリムは、ずっとお母さんにお手紙を送り続けていました…。港街メンムに長く滞在した時、…一度その返事を受け取ったのですが。

…「元気だから、心配しないで」

とだけ…、書かれていたのです。

「素っ気ないんだもん、お母さん…」

聖戦士クリムのお母さんは現在でこそ主婦ですが、…その昔は。…バトル・アックスを両手で振り回す、それはそれは勇猛果敢な戦士ネコミミでした。そんな聖戦士クリムのお母さんが…、クリムに教えたのは一つだけ。それはどんなコトも決して諦めてはならない、でした…。聖戦士クリムは自由奔放に育てられましたが、…クリムが「何か」投げ出しそ〜になると。…お母さんは烈火の如く怒り出し、決して許さなかったのです。

「そ〜だ…、どんな時も決して諦めちゃダメだ!ラルム、ぼくに力を貸して…」

その時、…トントントンとドアをノックする音が聞こえました。…聖戦士クリムがドアを開けると、そこには神官マルミと魔女ケレナが立っています。

「や〜ぱり…、1人で飲んでましたねクリムさん。食堂へゆきましょ〜よ、シェフが新鮮なおすしを握って下さってるんです…」

既に出来あがってる、…魔女ケレナ。

…「ちょっとクリム、アンタ付き合い悪くない?何さ1人でなんか飲んじゃって…、そんなシケたお酒のどこが美味しいのよ。ゆいからこっち来て、アタシの注いだお酒を飲みなさ〜い…」

聖戦士クリムは笑いながら、…神官マルミと魔女ケレナと一緒に食堂へ向かいました。