「ごめん、ちょっと待って…。アタシ…、も〜立てない」
…すっかり地面に座り込む、魔女ケレナ。
「どこかで少しやすも〜、…でも場所がなぁ」
聖戦士クリムは、頭をかきながら辺りを見渡します…。
「あっあそこはど〜でしょ〜…、さっきの魔物達の見回り小屋」
…手をポンッと打つ、神官マルミ。
「そ〜だねいってみよ〜か、…じゃあケレナぼくの背中におぶさって」
そ〜ゆうと聖戦士クリムは、背中のリュックを神官マルミに渡しました…。
「何ゆってんのクリム…、アタシそんなの絶対ムリ!!」
…魔女ケレナは、顔を真っ赤にして両手を振ります。
「何ゆってんの、…ケレナ。疲れた時はお互いさまだよ、誰も見てないんだし…」
魔女ケレナの前に…、聖戦士クリムはしゃがみました。
…「そ〜ですよ、ここじゃゆっくり出来ませんから。あそこなら、…"何か"食べるモノもあるでしょ〜」
「う…」
こ〜して聖戦士クリムは魔女ケレナをおぶり…、神官マルミは前後にリュックを抱えて魔物達の見回り小屋に歩いてゆきます。
…「あら意外、ケッコウ食材がそろってますよ」
魔物達の見回り小屋のキッチンを調べる神官マルミは、…嬉しそ〜な声をあげました。
「コッチは仮眠室みたい、あお布団も入ってる…」
キッチンの奥はたたみ張りの和室になっていて…、タンスを開けた聖戦士クリムはお布団を取り出します。
…「マルミ悪いケド、取り敢えずコーヒー淹れてくれない?」
イスに腰かけた魔女ケレナは、…そのままテーブルに突っ伏しました。
「ケレナさんが、コーヒー淹れるの人に頼むなんて…。初めてじゃないですか…、よほど疲れてるんですね」
…お湯を沸かしながら、神官マルミはついでにサンドウィッチをこしらえます。
「魔物達は戻って来ないみたいだし、…一晩ここでやすんでゆかない?ぼく、お布団干して来る…!」
聖戦士クリムは両手でお布団を抱え…、そのままお外へ出てゆきました。
…「さんせ〜、アタシは何でもゆいからとにかく横になりたい」
グッタリとした魔女ケレナは、…まるで青菜に塩です。ここで、少し時間が経過しました…。魔女ケレナはコーヒーを飲んでサンドウィッチを食べると…、そのまますぐ和室で横になります。…神官マルミはキッチンでお料理し、聖戦士クリムはパトロールがてら辺りを散歩しました。やがて、…日も暮れる頃。
「ちょっと早いケド、かんぱ〜い…!!」
勇者のパーティ一行は魔物達の見回り小屋で…、なみなみと注いだワイン・グラスをカチンとぶつけ乾杯します。
…テーブルにつく聖戦士クリム、神官マルミと魔女ケレナの前には、マルミが手間ヒマかけて煮込んだ。ビーフ・シチューと、…生ハムをスライスしたサラダが並びました。
「これ高級なワインですよ、年代モノだしお高いんじゃないですか…?」
神官マルミは…、しげしげとボトルを眺めます。
…「魔物達なんて、ど〜せ味なんてカンケーなんでしょ。だったらワインだって、…アタシ達に飲まれた方が喜ぶわよ。お酒はね、味わいのわかる本当の大人に飲まれたがってるの…」
すっかり元気になった魔女ケレナは…、グイッとワインをあおって飲み干しました。
…「うんそ〜だね、ホントのそ〜だ」
ワイン・グラスをクルクル回しながら、…聖戦士クリムは口を開きます。
「みんな、ここでしっかり元気をつけておこ〜…。明日は…、遂に最後の戦いだ。…きっと厳しい、激しい戦いになる。でも諦めず、…力いっぱい最後までがんばり抜こ〜!」
3人とも、わかっていました…。ここさえがんばり切れば…、あとはシアワセな日々が訪れると。