アーシャ南の大陸に舞う その14

…ホレロ、アーシャ、ぺぺの3人は、さわやかな秋晴れの下。丘を越えてゆきました、…聖なる山アルクロドまであと少し。

「アーシャはエスタフ高原で育ったから、大きな山は見慣れたモノだろ〜…。ど〜だい…、疲れてやいないかい?」

…ぺぺを振り返る、アーシャ。

「私は大丈夫です、…ぺぺは?」

「プイプイ♪」、ぺぺはあまりに過ごしやすいので歌ってゆました…。

「ホレロさん…、聖なる山アルクロドに兆す。…闇の気配とは、いったいどんなモノなのですか?」

ホレロは振り返りません、…前を見ています。

「私も、詳しくは知らないんだ…。ただ…、何でもある夜突然稲妻が落ちて。…アルクロド山頂の、神さまの像が破壊されてしまったらしい。そして、…その時からお坊さん達の闇への堕落が始まったと。ど〜やらその稲妻は、自然現象ではなくワレラ星人からの攻撃だとゆ〜んだね…」

疑問に想ったアーシャは…、ホレロに問い返しました。

…「ワレラ星人に襲われたのは、何故ダオカーナ寺院ではなかったんでしょうね?」

ホレロは、…困った顔をします。

「私にはわからないなぁ、でもアルクロド山頂の神さまの像は…。ダオカーナ寺院を始めとする…、全ての修行するお坊さん達の。…心の拠りドコロなのさ、お坊さん達のお祈りは。私達の心に、…愛や勇気をもたらし。闇を退ける、そこを挫こ〜としたんじゃないだろうか…?アーシャ…、少し休も〜」

…ホレロは近くの木にらくだを結びつけ、アーシャとぺぺは道の脇に荷物を降ろしました。

「アーシャ、…落ち葉を集めてくれないか?それからぺぺ、その背中に山のよ〜に背負ってるサツマイモを…。二、三わけておくれ…、焼き芋にしよ〜」

…辺りには涼し〜風がそよそよ吹いています、アーシャは心秘かにメリクルを想ってゆました。

そ〜こうしてる間にも、…おイモは焼き上がります。

「これも、美味しい…!!ど〜してこ〜…、この南の大陸は食べるモノが何でも美味しいんでしょ〜♪」

…ほくほくの焼き芋を、ほお張るアーシャ。

「このサツマイモ自体は、…他の大陸でも栽培されてるけれど。こんな食べ方をするのは南の大陸だけだね、美味しいだろ〜…?」

ぺぺは…、ばふっとおならをしました。

 

ぺぺのおならのテーマ…

Let's get it on/Marvin Gaye

https://youtu.be/54LgyqSPfsQ

 

…「ホレロさんって、お住まいはどちらなんですか?」

アーシャは、…ずっと疑問に想ってゆたコトを思い切ってぶつけます。

「昔は、東の大陸の外れに実家があったんだがが…。今はないよ…、も〜処分してしまったんだ」

…この答えには、アーシャもびっくりでした。

「えっ、…それじゃぁずっと旅を続けてるんですか?」

ホレロは、ニコッと答えます…。

「気楽でゆいだろう…、世界中を回って。…こ〜して、美味しいモノを飲んだり食べたりして」

アーシャには、…ちょっと想像がつきませんでした。

「でも、アーシャに付き添っているのも…。決してボランティアじゃないんだよ…、これも商売のウチなんだから。…このらくだに積んである荷物、これをダオカーナ寺院のお坊さん達に売るんだ。お坊さん達は、…厳しい神さまの戒律を守ってる。だから、神さまのおん前で恥にならない…。気晴らしが必要なのさ…、例えばこれ。…これはアーシャにはただの薬草だろう、でもこっちでは花実草とゆって。よく水洗いして、…"おミソ"とゆ〜のをつけて生でかじるんだ。栄養満点で、とても元気がでるらしい…」

アーシャは…、思わず聞き惚れてゆます。

「…ホレロさんって、何でもご存知なんですね」

「プイプイ」

納得してうなずく、…ぺぺ。火を点けた落ち葉も、すでにあらかた燃えてしまいました。

「さぁ、ゆこうアーシャ、ぺぺ…。聖なる山アルクロドまで…、あと少し!」

…ホレロは、靴で踏んで火を消します。

 

 

 

おまけ

こんにちは、…鈴木よそゆきどぇ〜っす!!

「アーシャ南の大陸に舞う」、楽しんでいただけてますか…?

ここまで…、3曲程DJさせてもらいましたが。

…エンディングに向けて、一足早くYoutubeプレイ・リストを発表しました!

その名も、…「"アーシャ南の大陸に舞う"公式Sonud track」!!

もしよろしければ、お聴きいただいて最後の曲がど〜かかるのか…?

ご想像してもらうのも…、作者としては何よりの喜びです!

…それでは、よろしくお願いします!!!

 

「アーシャ南の大陸に舞う」公式Sound track…

https://youtube.com/playlist?list=PLWCErtfD9n75NUwwVYny7ZQUngBeBJXg0

 

アーシャ南の大陸に舞う その13

トコロ変わって、ここはダオカーナ寺院の僧房…。ダオカーナ寺院の僧房は…、倉庫の代わりも兼ねていましたから。…神さまに捧げる、さまざまな宝物に囲まれて。た〜っくさんの僧が、…お布団をしいてゆわば縦横に並んで寝ておりました。

「う〜んう〜ん、誰か誰か助けてくれ…」

そのウチ…、一人の僧がうめき始めます。…しかしまだ、誰もそれには気づいてはいなません。

「いったいここはどこなんだ、…誰かいないのか!!?」

僧は、夢を見ていたのでした…。光の一筋も射さない…、洞窟の中をひたすらさまよっています。

…「わしは、ど〜なってしまったんじゃ。みんなはど〜した!?」

ひたすら、…前に向かって歩みを進めると。どこからともなく、女性の声がしました…。

「誰かの声がする…、お〜いわしの名はダンツ。…もし、わしの声が聞こえるのなら返事をしてくれぇ!!」

声を頼りに前進し続けると、…ほのかな光が目に入ります。それは、うずくまってゆる女性でした…。彼女が…、光輝いていたのです。

…「先程から聞こえていたのは、あなたの声だったか。申し訳ないが、…わしにはワケがわからん。あなたは、"何か"ご存知ないだろ〜か…?」

「よく…、存じておりますわ。…ここは、私とあなたさまの永遠の楽園でございます」

光輝く彼女が、…面をあげるとそれは息を飲むよ〜な美しさでした。ダンツは、身を震わせると思わず見入ってしまいます…。長い金髪に…、真っ白なお肌。…パチッとしたお目に、スッと通る鼻立ち。

「何ゆうとるんじゃ、…わしは僧じゃぞ!」

気持ちを惹き込まれたのも束の間、ダンツはすぐに正気を取り戻しました…。しかし…、金髪の彼女は両の腕をダンツの首にしなだれかけます。

…「私達は、神さまからのご祝福により。夫婦となるべく、…運命づけられておりますの」

ふとダンツが目をやると、金髪の彼女は薄いローブを羽織ってゆるだけで…。その他には…、何も身につけてはいませんでした。

…「結ばれましょう、ダンツさま!!さぁ、…早く誓いのキスを!」

とっさに、金髪の彼女を突き飛ばすダンツ…。

「バカゆっちゃいかん…、わしは神さまに一生を捧げたんじゃ。…女体なぞ、言語道断!!」

ダンツは、…反対の方向に一目散に駆け出します。

「あらあら…、ツれないお方。でも、私から逃げよ〜なんて…。あまりにも、…甘いお考えね」

…金髪の彼女は、その淫らな表情をあらわにし。美しく見えた金髪は…、一斉にどこまでも伸びてダンツを追いました。

「神さまわしをお助け下さい、わしはこれまで一心にあなたのお為に精進してまいりました…!」

懸命に走るダンツの足元に、…彼女の金髪が巻きつきます。

…「ダンツさま、早く私を愛して下さいまし。私の胸は…、熱くあなたさまを望んでおります!!」

「おいっダンツしっかりしろ、ダンツ…!」

ダンツの意識は、…急に現に引き戻されました。…僧房の僧達は、みな心配そ〜にダンツの周りに集まってゆます。

「わしは…、わしは。あぁ、何じゃ夢じゃったか…。しかし、…これでわしは7日7晩同じよ〜な夢をみておる。…これが、わしの本性なんじゃろか?」

ダンツは…、そ〜思うと恥ずかしくて死にたくなりました。

「弱気をゆうな、ダンツ…!!僧正さまが仰ったろう、…これはワレラ星人の呪い。…ワレラ星人は、今お前を闇に堕落させよ〜と狙っているのだ」

別な僧が…、口を挟みます。

「しかし、この夢何とかならないのでしょ〜か…。始まりは、…ザハス殿から。…すでに、何人が闇に堕落させられたコトか。もしこの聖なる山アルクロドから祈りが失われれば、世界中の人々の心は闇に染まってしまう…」

また…、別な僧が発言しました。

…「みんな、元気を出せ!僧正さまが仰ったろう、…中央大陸のラパダーナ王国を救った。あの伝説の勇者アーシャさまが、こちらに向かわれてゆると…。それまでの辛抱だ…、あと少しだぞ!!」

…「伝説の勇者アーシャ」、その名が出るとどの僧もみんな勇気が湧いて来たのです。

 

アーシャ南の大陸に舞う その12

アーシャは…、墜落したメカ・ブラックドラゴンのコックピットから。気を失った、ボヘムを救出します…。

「プイプイ」、…ぺぺが倉庫で見つけてくれた長めのロープで。…も〜これ以上悪さをさせないよ〜、ボヘムをぐるぐるに縛りました。

「ぺぺ…、ど〜したらゆいんだろう?ボヘムは身動きが取れなくても、呪文を唱えてモンスターを喚び出すかもわからないし…」

「口をふさげば(殺してしまえそんな意味ではありませんよ)」とも、…アーシャの頭をかすめましたが。…そこまで、手荒な真似をするつもりはアーシャにはありません。

「プイプイ」…、ぺぺは気楽に答えます。

「そ〜よね、一度タマラン村に戻りましょう…。村長さんや誰か村の人が、…"何か"ゆい知恵をお持ちかもしれないし。…ぺぺ、ボヘムを運んでくれる?」

ぺぺはぐるぐるに巻かれたボヘムを担ぐと…、アーシャと共に「竜の角」を降ってゆきます。

「あ村長さん、いらっしゃってたんですか…?」

ぺぺが破壊した、…「竜の角」の入り口に村長さんが頭を丸めた男と共に二人を待っていました。

…「村の者がね、アーシャさまがきっと魔法の呪文でお困りになるだろうと。それで…、私は準備をして少し前に到着したんだよ。では、先生よろしくお願いします…」

村長の前に、…頭を丸めた男が一歩前に出ます。

…「そんな、村長さん私は先生と呼ばれる程の者ではありません。伝説の勇者アーシャさま…、お初にお目にかかります。私の名はマヘロ、タマラン村のすぐ近くのお寺で修行してゆる僧です…」

あいさつを受け、…アーシャは(ぺぺも)頭を下げました。

…「この度は、タイヘンなご迷惑をおかけしました。ボヘムのよ〜な堕落僧は…、本来私達僧自身が取り締まるハズを」

少し話が長くなりそ〜だな、とアーシャは思ったので要点を切り出します…。

「あの〜、…魔法の呪文はど〜すれば?」

…マヘロは、懐をゴソゴソやってお札を一枚取り出しました。

「実は…、魔法の呪文を唱えるのは。口ではなく心なのですよ、だからもし…。さるぐつわを噛ませたにしろ、…それは意味がないのです」

…ボヘムの額に、マヘロはお札を貼りつけます。

「これは"禁呪のお札"…、これでも〜ボヘムはモンスターを喚び出せません。ありがとうございましたアーシャさま、ボヘムの身柄は…。私達が責任を持ってお預かりします、…ダオカーナ寺院で厳しく罰していただくとしましょう」

…こ〜してアーシャとぺぺは、村長さんに連れられてタマラン村に帰って来ました。ソーナを助けてもらったタネシとフレルは…、是非自宅でアーシャ達をもてなしたいと願い出ます。

「タネシ、お前さんの気持ちはよくわかる…。だが、…お前さんのおウチにはお客さんをもてなす程大きさはないだろう。…ウチも大して変わらんが、お前さんのトコよりはな。今夜は私のおウチで…、アーシャさまご一行を歓待させていただくとするよ。よかったら、お前さんも来るとゆい…」

アーシャとぺぺは、…ホレロと共に村長さんのおウチでもてなされるコトになりました。

…「そりゃあご苦労だったね、ボヘムはなかなか手強かったワケだ」

ホレロがパイプの火を灰皿に落とすと…、村長の奥さんの声がします。

「みなさん、お食事のご用意が出来ましたよ…!!」

村長さんのおウチのお座敷にアーシャ達が座ると、…も〜お膳は据えられていました。

…「これが、ごはんですか?」

ごはんを初めて見るアーシャはど〜したらゆいかわかりません…、村長さんやタネシ達は2本の棒を器用に操って食べています。

「アーシャはおはしを使ったコトはないだろうから、自分のスプーンとフォークを持っておいで…。それで、…食べたらゆい」

…ホレロさんは、村長さんやタネシと一緒に。

村長の奥さんからお酌してもらって…、「何か」のお魚を突きながら。

お酒、「コマドリの鳴き声」を一杯飲ってゆました…。

縁側に座り、…お庭に積まれた。

…山のよ〜な、サツマイモをモリモリいただくぺぺ。

「アーシャさん…、このお魚は"アジ"ってゆ〜んですよ。味がゆいから"アジ"って呼ばれるぐらいですから、さぁごはんのお供に…!」

村長の奥さんにすすめられて、…アーシャは骨取りしてある「アジ」をフォークでほじり。

…ごはんにのせて、スプーンでパクリ。

「あぁ〜…、美味しい!!」

村長の奥さんも、思わずにっこりのアーシャの反応です…。

「そ〜でしょう、…このごはんは今年とれたばかりの新米ですからね。…こんなに美味しい想いが出来るのは、今だけですよ」

アーシャは…、すぐにごはんをたいらげると。村長の奥さんに、「おかわりください-!」

と、…元気よく告げたのでした。

 

アーシャ南の大陸に舞う その11

アーシャは…、やっつけたブラック・ドラゴンに歩み寄りました。しかし、突然の爆発がやっつけたブラック・ドラゴンに起きます…。

「何、…一体!!?」

…アーシャは驚いたモノの、体はとっさに反応し盾で爆発の炎を防ぎました。その隙に…、ボヘムがブラック・ドラゴンの頭に取りつきます。

「ハ〜ハッハ、ブラック・ドラゴンは不死身だ…。こ〜なったら、…私自身の手で決着をつけてやる!」

…ブラック・ドラゴンの頭は、コックピットがむき出しになっていました。ブラック・ドラゴンは…、古の勇者ブックに倒されたドラゴン同様。実はメカだったのです、ボヘムはコックピットに乗り込むとすぐに起動させました…。

「メカ・ブラックドラゴン、…発進!!」

…両足からジェットを噴射して、飛び立つメカ・ブラックドラゴン

「ボヘム…、そ〜はさせない!」

力いっぱいアーシャはジャンプして、掴まろうとしましたが…。

間一髪の差で、…メカ・ブラックドラゴンは浮上します。

…「メカ・ブラックドラゴンの力、今見せてやる。ふっふっふ…、覚悟するがい〜伝説の勇者アーシャ。死ね…!!」

ズギューン!、…アーシャはとっさに「魔法の盾」を構え「何か」を弾きました。

…「危なかった、これは火の玉だわ!!」

メカ・ブラックドラゴンは…、鼻先から火の玉を発射したのです。

「まだまだこんなモノじゃないぞう、逃げまどうがい〜…!!」

顔の先端の鼻の穴が機銃になってゆる、…メカ・ブラックドラゴンは。…左右交互に、連続して射撃がおこなえるのでした。

「必ずどこかに隙があるハズ…、それを見つけ出せば」

しばらくすると突如、メカ・ブラックドラゴンの機銃の発射がやみます…。

「くっそ〜、…やはり火の玉の再装填に時間がかかるか」

…ボヘムはその間も、ゆうゆうとメカ・ブラックドラゴンで空中を泳ぎ。アーシャに向かって…、今度は違う角度から銃撃を浴びせました。

「何とか防ぎ切れないコトはないわ、でもこのままでは反撃が出来ない…」

メカ・ブラックドラゴンの火の玉の機銃は、…属性が「火」ですから。…アーシャの構える、「魔法の盾」を貫けはしないのです。しかし何とゆっても…、メカ・ブラックドラゴンは近づいて来ませんから。反撃の手段が、アーシャにはありませんでした…。

「いつまで我慢が続くかな、…アーシャ?…今からでも遅くはない、降参して我が花嫁として。迎えられれば…、命だけは許してやろう!」

ドカ〜ン、その時です…!!

「ぺぺ!」、…ぺぺが大広間の扉を破壊して突撃して来たのです。

…「ぺぺ、お願い!!私が合図したら…、メカ・ブラックドラゴンに向かって私を投げて!」

ボヘムは、メカ・ブラックドラゴンを操縦し…。ぺぺに向けて、…火の玉の機銃を発射しました。…みなさんはご存知ですね、ぺぺろぐぅは熱いモノが大好きなのでだから通用しません。

「フン…、伝説の勇者が聞いて呆れるわ。そんな青いぺぺろぐぅに守られて、情けないとは思わんのか…?」

そのウチに、…メカ・ブラックドラゴンは火の玉機銃を再装填します。

…「今よ、ぺぺ!!」

ぴゅ〜い…、と口笛を吹くアーシャ。ぺぺはアーシャを両手で優しく担ぎ上げると、メカ・ブラックドラゴンめがけ大きく振り被って放りました…。アーシャの小柄な体は、…くるくる回って放物線を描きます。

…「ゲッそんなバカな、機銃を発射しろ急げメカ・ブラックドラゴン!」

ボヘムは操縦桿の…、機銃発射スイッチをガチャガチャしますがど〜にもなりません。

「観念しなさいボヘム、とりゃぁ〜…!!」

コックピットに、上空から「下突き攻撃」を二度決めるアーシャ…。

…ボヘムは気を失い、コントロールを奪われたメカ・ブラックドラゴンはあえなく墜落しました。

アーシャ南の大陸に舞う その10

ボヘムの喚び出したブラック・ドラゴンは、羽ばたいてゆっくり宙に舞い上がります…。言葉はしゃべれない…、ブラック・ドラゴンですが頭の中ではこんなコトを考えていました。

…「こんな小さな、それも女性なんぞを相手にするのにわざわざわしを喚びよって。しかし、…契約は契約だ。どれさっさと、力で捻りつぶしてやろう…」

アーシャの上空まで飛来すると…、ブラック・ドラゴンはゆっくり降りて来て。…両手のかぎ爪で引っかこ〜とします。

「すごい力、…さすがにドラゴンね!!」

アーシャは、少し後ろに退がると盾で受けとめました…。ブラック・ドラゴンは…、そんなアーシャを見てこのまま押し切れるだろ〜と考えます。…そこをかみ殺してやろ〜と、首を伸ばしました。しかし盾を捨てたアーシャは、…勇気を抱いて素早くブラック・ドラゴンの懐に飛び込むと。おなかめがけて、「上突き攻撃」を繰り出します…。

「グァっ!」…、思わず呻き声をあげるブラック・ドラゴン。…鱗におおわれていないおなかは、どのドラゴンにとっても弱点の一つでした。ブラック・ドラゴンは、…受けたダメージよりも。こんな小さな女性に傷つけられたコトに、腹を立てます…。

「このわしに痛い思いをさせるとは…、許されん。…どれわしの息吹で、一思いにドロドロに溶かしてくれる!!」

ブラック・ドラゴンは再び上昇し、…アーシャから少し離れました。すると空中で羽ばたいて、風を起こしたのです…。

「すごい風…、これでは身動きが」

…アーシャの足が止まったのを確認すると、ブラック・ドラゴンは満足そ〜に息を吸い込みました。アーシャは、…その瞬間たまたま足元にころがってゆる。酒びんの一つを、足先で宙に蹴り上げると…。落ちてきたトコロに合わせ…、ブラック・ドラゴンに向けてボレー・シュートを放ちます。

…「ゲゲっ!」

アーシャの蹴った酒びんは、…真っ直ぐブラック・ドラゴンの頭に直撃して粉々に砕けました。ダメージそのモノは大したコトはありませんが、ブラック・ドラゴンはクラクラして地上に降りて来ます…。

「これで条件は5分よ…、さぁいざ勝負ブラック・ドラゴン!!」

…アーシャは盾を拾って突撃すると、そのまま盾で体当たりをぶちかましました。

「グルルルゥ〜」、…ブラック・ドラゴンは体勢を崩しながらも反撃を試みます。ブラック・ドラゴンの両のかぎ爪を、その場で踏ん張って盾と剣で防ぐアーシャ…。しばらくの間…、ブラック・ドラゴンの両手のかぎ爪とアーシャの剣と盾で。…一進一退の攻防が。繰り広げられました。いつまでも決着がつかないのに焦れたブラック・ドラゴンは、…も〜一度長い首でアーシャにかみつこ〜とします。それをバク転でかわしたアーシャは、着地と同時に前にジャンプしてブラック・ドラゴンの頭を打ちました…。この時…、ブラック・ドラゴンは気がついたのです。

…「しまった、このわしでは。このちびスケに敵わない、…何とかして逃げなくては!」

…二、三歩後退りしたブラック・ドラゴンは、息を吸い込むと無理に息吹を吐き出そ〜としました。

「この時を待ってたの…、この勝負もらったわ!!」

アーシャは、先程ブラック・ドラゴンが息吹を吐き出そうとした時にピンと来たのです…。

「息吹を吐こうとする、…ドラゴンの開いた口こそ弱点だ」と。

…稲妻のよ〜に目にも留まらぬ速さで踏み込むと、その勢いのままに大きくジャンプしました。そしてブラック・ドラゴンが息吹を吐き出そ〜としたのと同時に…、開いた口に「カリフの剣」を突き立てたのです。

「グワッ、グワッ、グルワァ〜…!」

ブラック・ドラゴンは、…長い断末魔ののち地響きを立てて崩れ落ちました。

 

…こんにちは、トンデモあた坊やです。

申し訳ありません…、この一つの前の話。

「アーシャ南の大陸に舞う」 その9で、アーシャはペペを呼びます…。

そのぺぺは何をしてるのか、…この展開ではわからないですよね。

…本当は、どこかにボヘムとボヘムの配下のやり取りで。

「タイヘンですボヘムさま…、突然青いぺぺろぐぅが乱入し大暴れしてゆます!!」

とゆ〜のが入り、つまり現在「竜の塔」の下の階でモンスター達と戦ってるんです…。

いや、…忘れてたんですホント申し訳ありません!

 

アーシャ南の大陸に舞う その9

…アーシャは、サイクロプスの引く車に乗せられ。そのまま、…出迎えの僧と共に「竜の角」まで連れて来られました。

「さっさと、降りろ…!!」

出迎えの僧は…、アーシャにムチをピシャリとくれます。

…「失礼致しました、申し訳ありません」

本当なら、…アーシャはこんなユルいムチはいくらでも防げるのでした。しかし、今はソーナの代役…。悔しさをこらえ…、黙ってムチを受けたのです。…出迎えの僧の後ろについて登ってゆくと、やがて「竜の角」の大広間に出ました。

「ボヘムさま、…ただ今無事ソーナさまをお連れしました」

「おぉ、我が花嫁ソーナ…!遂に…、私の愛を受け入れる決心をしてくれたのだね」

…ボヘムと呼ばれる闇に堕落した僧は、何だかなよなよして少しもアーシャのタイプではありません。

「よしソーナ、…すぐに酒宴の準備をさせよ〜!!さ諸君座に着いてくれたまえ、祝杯だ…!」

アーシャは…、ボヘムに近づくとそっと耳打ちします。

…「あなた、早く二人切りになりたいの」

それを聞いたボヘムは、…好色にニヤリとしました。

「ソーナ、私の愛がそんなに待ち切れんか…?ゆいだろう…、たっぷり可愛がってやる。…諸君酒宴はまた後日とする、取り込み事ができたのでな」

ボヘムに仕える、…僧やモンスター達はみな不満そ〜でしたが。逆らうコトは出来ず、すごすご引きあげてゆきます…。

「ではアーシャ…、寝室へ参るとしよ〜。…その前に、誓いのキスを済ませんとな。これでお前は、…飽きるまで私のモノだ」

ボヘムはアーシャに近寄り、そのヴェールをあげよ〜とします…。

ガツン…、その時でした!!

…アーシャは、ボヘムに膝蹴りを入れます。

「グェっ、…な、何をする」

うずくまるボヘムの、胸ぐらを掴んだアーシャは…。そのまま…、豪快に一本背負いで投げ飛ばしました!

…ここで、少々解説させていただきます。何故アーシャは、…あんな言葉を口にしてまで。ボヘムに、酒宴を開かせまいとしたのでしょうか…?それは崇高にして勇気みなぎる…、アーシャらしい考えがあってのコトなのでした。…酒宴を開けば、ボヘムは必ずお酒に酔うでしょう。お酒に酔わせてしまえば、…アーシャが勝つのは実にたやすくなるハズ。しかし、アーシャは伝説の勇者として尊くて清い神さまに…。身も心も捧げてゆましたから…、それは卑怯者のするコトだと。…あえて、さけたのです。

「貴様何者だ、…さてはソーナではないな!!」

花かんむりとブーケを投げ捨て、スカートとヴェールを引きちぎったアーシャは…。「ぴゅ〜い」と口笛を吹き…、ぺぺに合図を送りました(ぺぺはどんなに離れてゆても心でアーシャの口笛を聞き取るのです)。

…そして、「カリフの剣」を引き抜き魔法の盾を構えて大きな声で名乗りました。

「私は、エスタハーンのアーシャ…!あなたの悪行を、…私は見逃してはおけません!!」

ボヘムは、よろめきながら立ち上がると…。優男だった表情が…、敵意と反感に醜くゆがみます。

…「おのれ〜、貴様が伝説の勇者と呼ばれるアーシャか!私の手で血祭りにあげてくれる、…そ〜すればあのザハスに代わって。聖なる山アルクロドは、私に支配されるのだ〜…!!」

ボヘムが呪文を唱えると…、大広間に魔法陣が浮かび上がりました。…そこから現れたのは、何とあのブラック・ドラゴンです!ブラック・ドラゴンは、…古に伝わる勇者ブックに倒されたドラゴンよりは、一回り小ぶりですが。それでも…、充分に危険な敵に違いありません。

「ボヘム、あなたがどんなモンスターを喚んでも…。私は背中を見せたりはしません、…さぁかかってらっしゃい!!」

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その8

夜が明けて、…タマラン村の村長のおウチはすぐにアーシャの花嫁準備に使われました。…男性陣お断り、とゆ〜コトでホレロも村長もぺぺまでもが外に放り出されてしまいます。

「ど〜も…、これはタイヘンなコトになってしまった」

ホレロは、お気に入りのパイプを取り出すと火を点けました…。

「珍しい香りですな、…それはそ〜と。…まさか、アーシャさまはまだご結婚なされていますまいな」

村長は…、心配気にホレロに尋ねます。

「東の大陸で作られてる煙草でして、私のお気に入りなんです…。アーシャならまだですよ…、それが何かお気になるコトでも?」

…ぷかぷか煙を吐き出しながら、ホレロは答えました。

「ならゆいのです、…もしご結婚なさってゆるなら。いくら村の為とはゆえ、こんなコトはさせられませぬから…」

村長は…、安堵して胸を撫で下ろします。

「いやいや、むしろ想い人の一人もいなくては…。アーシャはゆい娘なのは間違いない、…伝説の勇者としての責任もある。…とはゆえ、ぺぺ何か知らないかい?」

「プイプイ?」

と、首を傾げたぺぺ…。

その時です…、村長のおウチから花嫁姿に身を包んだアーシャがしずしずと姿を現しました。

…「おぉ〜(プイプイ!!)!」

ホレロ、村長、ぺぺの三人は、…そのあまりの荘厳な美しさに声をあげます。

 

アーシャの花嫁姿のテーマ…

「東京は夜の七時(インストゥルメンタル)」 小西康陽

https://youtu.be/037NaO-yJdg

 

純白のドレス、花かんむり、手にしたブーケ、表情はヴェールで覆われてゆる為ハッキリしません…。

「ど〜ですかみなさん…、アーシャさまの花嫁姿は。…立派でしょう、これが本当のご結婚ならどんなによかったか」

アーシャの着つけた、…村長の奥さんがあとから出て来ました。

「アーシャさま、このドレスは特別に縫った品でして…。スカートの部分は…、力を込めれば引き裂けます。…決して、戦いのお邪魔にはなりません」

アーシャは、…コクンとうなずきます。

それからしばらくすると、モンスター達を引き連れた僧が…。

サイクロプスの引く車に乗って現れます…、村長と村長の奥さんは出迎えると。

…「これらの品々は、この村に古くから伝わる。遠い異国のモノでしてな、…ご結婚をお祝いして。引き出物として、花嫁に持たせたいと想います…。いえいえ花嫁は…、ボヘムさまをお慕いするあまり。…じかにお渡ししたいと、よろしいかな?」

僧は、…地面にツバを吐きました。

「勝手にしろ、ジジイ俺は忙しいんだ…!!時間を取らせるな…、さぁゆくぞソーナ!」

…村長と村長の奥さんは、こ〜してまんまとアーシャに。

愛用の「カリフの剣」と「魔法の盾」を持たせるのに、…成功したのです。