アーシャ南の大陸に舞う その19

アーシャ達は、…ダンツを先頭に。…工作隊のペースに合わせ、ゆっくり山道を登ってゆます。

「そろそろ休憩しましょう…、まだ先は長いわ」

工作隊の職人さん達に無理をさせたくないアーシャは、提案しました…。

「そうじゃな、…急いでも始まらん。…ここは、じっくりゆくとしよう」

アーシャ、ぺぺ、ダンツ…、それから三人の職人さん達は。それぞれ、道端に座りやすみを取ります…。

「あれっ、…何の香りだろう?」

…荷物から水筒を取り出し、水を一口含んだアーシャは。とてもゆい香りがするコトに…、気がつきました。ところが、辺りには短い草は生えていても特にそれらし〜モノは見当たりません…。

「あっ、…ダンツさん?」

…ダンツは返事をしません、手を組んで瞑想してゆます。小さな炉にお香を焚いている…、ダンツ。

「プイプイ…」

ぺぺは、…「ダンツさんは修行中だから話しかけてはゆけませんよ」と。…アーシャに、注意したのでした。

「そ〜ね…、ごめんなさい。うっかりしてたわ…」

しばらくしてお香が燃え尽きると、…ダンツは立ちあがります。

…「そろそろゆこう、も〜充分やすんだじゃろ」

アーシャの鼻の奥に…、先程のお香の香りが残ってゆました。

「ダンツさん、さっきのお香は何の香りですか…?」

変わらない速度で歩く、…ダンツ。

…「あれは、スヌーヤ杉のお香じゃよ。わしは瞑想する時…、必ずあれを焚く。集中力が、高まるんじゃ…」

アーシャは、…「すごくゆい香りでしたよ」と伝えたかったのですが。

…「またダンツさんがおヘソを曲げたら」と思い、黙ってしまったのです。山道を登ってゆくと…、行く手に背の高い木々が見えて来ました。歩きながら、アーシャはダンツに質問します…。

「ダンツさん、…何故聖なる山アルクロドは。…神さまに守られてゆるハズなのに、ワレラ星人に攻撃を許してしまったんでしょうね?」

袖の中に手を通し…、両腕を組むダンツ。

「それは、現在ダオカーナ寺院で調査中じゃ…。そ〜なんじゃよ、…アルクロド山は神さまのお姿そのモノ。…神さまが、ワレラ星人に負けるコトなど。絶対に…、ありえんのじゃ」

ホレロのお話を、思い出すアーシャ…。

「ところが稲妻が落ち、…神さまの像は破壊されてしまった」

…ダンツは、アーシャにうなずきました。

「あの稲妻は…、ワレラ星人の宇宙船から発射されたビーム光線だったらしい。わしとしては、こんなコトは考えたくはないが…。わしら僧の中に裏切り者がいて、…誰かが手引きしたのかも知れんな。…ムッ、何の音じゃろう?」

ゴロゴロと地響きのよ〜な音が…、少し離れたトコロから鳴っています。

「いけない、あれがこちらに転がって来たら…!!」

とっさに、…駆け出すアーシャ。…その先には、巨大な岩を転がす2体のゴーレムがゆました。

「ダメ…、間に合わない。ぺぺ、お願い…!」

アーシャは、…ぴゅ〜いと口笛を吹きます。

…巨大な岩は下り坂に差しかかり、遂に工作隊目がけて転がり始めました。

「プイプイ!!」…、ぺぺは雄叫びをあげると。こちらに転がって来る岩に向かって、体当たりを喰らわせます…。

「プイプイ!」、…両手でげん骨を作り。…振り下ろすぺぺ、ぐわぁ〜んと大きな音がして。巨大な岩は…、粉々に砕けました。

「待ちなさい、逃さないわよ…!!」

逃げ出した、…2体のゴーレムにあっとゆ〜間に追いつくアーシャ。…そのウチの1体は、遅れて転びます。

「あなたの相手はあとでしてあげる…、待ってなさい!」

もはや逃げられないと悟ったゴーレムは、地面を叩いてアーシャを攻撃しよ〜とします…。しかしアーシャは、…ジャンプしてかわすとそのまま「下突き攻撃」をお見舞いしました。

「グワっ!!」…、ゴーレムはそのまま地面に倒れました。

転んでゆたゴーレムも立ちあがり、アーシャに向かってパンチを繰り出します…。

「そんなのわかりやすいの、…通用しないわそれっ!」

…アーシャは盾でパンチを受けとめると、懐に潜り込んで一本背負いを決めました。そして再びジャンプすると…、も〜一度「下突き攻撃」でやっつけたのです。

 

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その18

工作隊を組織する、職人さん達と資材が手配される間…。数日が流れ…、アーシャ達は遂にある日の早朝出発します。

…「では参ろう、アーシャ殿。わしが、…先頭に立つ」

パーティの順番は、ダンツ、アーシャ、ぺぺ…。それから最後尾に…、三人一組の工作隊でした。

…「よしゆくぞ、そ〜れ!!」

工作隊は、…資材車を。

前の一人が引き、後ろに二人着いて押し始めます…。

「もしよければ…、ぺぺにお願いしてはど〜ですか?…ゆいわよね、ぺぺ」

「いや、…それはまずいじゃろ〜」

アーシャは、何の気なく工作隊の職人さん達が…。気の毒だったから提案したのですが…、ダンツはすかさず否定しました。

…「モンスター達は、いつ襲ってくるかわからん。その時に、…ぺぺ殿の手がふさがっていては対処出来ん」

正直にゆえば、「またダンツさんはかんしゃく玉を爆発させたのかな…?」

アーシャはそ〜思ったのです…、しかしお話を聞けば全くもっともでした。…アーシャ達は、工作隊が車を押すペースに合わせ。ゆっくり山道を登ってゆきます、職人さん達は…。資材を運ぶのは慣れてゆても…、山道を登った経験は。…あまりありませんから、ど〜しても時間がかかるのです。

「アーシャ殿、…モンスターじゃぞ!」

ダンツが声をあげました、アーシャ達のゆく手をさえぎるよ〜に…。ゴーストが3体…、スライムが1体現れます。

…「ぺぺ、ぺぺは工作隊のみなさんを守って。ダンツさん、…ゆきますよ!!」

ダンツは棒術の使い手です、長い棒をくるくる回すと…。

「合点じゃ!」…、アーシャのあとに続きました。…モンスター達も、アーシャ達の動きに合わせて応戦します。ゴースト2体はアーシャへ残り1体はぺぺに、…スライムはダンツに向かいました。

「空中だからって、安全じゃないのよ…!!」

ひらひらと空を舞うゴーストに…、アーシャはすかさず「上突き攻撃」で打ち落とします。…ゴーストは何とかかわそうと、回避運動を取りますが。アーシャの動きの方が、…ずっと鋭いのでした。

「プイプイ…」

身構えるぺぺに…、ゴーストは炎を身にまとって突撃します。…しかし、ぺぺろぐぅは熱いモノが大好き。体に当たって、…ぼよよんと跳ね返ったトコロを。ぺぺは、鋭い爪で一かきにやっつけました…。

「わしだって…、戦えるトコロを見せちゃる!!」

…ダンツは、スライムを必死に棒で引っ叩いたり突いたりします。

「これで終わりよ、…覚悟なさい!」

跳び上がったアーシャは、空を舞うゴーストを空中で斬ってやっつけました…。

アーシャが振り返ると…、ダンツも引っくり返りながら何とかスライムをやっつけたよ〜です。…よく見ると、ダンツは足に傷を負ってゆます。しかし、…アーシャが手を貸そ〜とすると。

「女性は、わしに触れるんじゃない…!!ちょっと待っとれ…、わしにはな」

…荷物の中から、巻物を取り出し。お経を唱えながら傷口に手をかざす、…ダンツ。すると、傷口は、たちまちにふさがり癒えてしまったのでした…。

「軽い傷なら…、こ〜してわしが治せる。…余計な気遣いは無用、お主は自分の戦いに専念するがゆい」

アーシャの心には、…まだダンツへのわだかまりが残っています。しかしあまりにも熱心なその態度に、どこかしら「尊敬の念」も抱きつつあったのでした…。

 

アーシャ南の大陸に舞う その17

顔を益々真っ赤にして怒る…、ダンツ。

「何を仰られるのですか、僧正さま…!!ゆ〜にコト欠いて、…まさかこのわしに女性と聖なる山アルクロドに登れとは。…ダオカーナに入門した時の、わしの誓言をお忘れですか!?」

アーシャだって負けてはいません…、釣り込まれてついカッとなってしまいます。

「僧正さま、私だってこんな偏屈な方はごめんです…!!"女性だから聖域には入ってはいけない"、…そんな考え時代錯誤だと思います」

…ネルムは、扇子を取り出し鷹揚にあおぎ始めました。

「ま、ま…、ゆいから。とにかく、お二人共お座んなさい…」

角の立たないネルムのゆい方に、…二人は勢いを削がれてつい従ってしまいます。

…「ゆいか、これはわしの考えだが。現在大切なのは…、一にも二にもアルクロド山頂の。神さまの像を修復するコトであろう、違うかな…?」

ダンツは、…渋々ですがうなずきました。

…「全く仰せの通りでございましょう、神さまの像さえ元に戻れば。その威光は地の彼方まで満ち…、僧達の悪夢もやむのですから。」

扇子を、ひらひらさせるネルム…。

「だから私は、…職人さん達と資材を積んだ車から成る。…工作隊を出発させたいのである、では何がその問題になるかなダンツよ?」

ダンツにはモチロン面白くはありませんが…、ネルムのゆい分は筋が通ってゆます。

「それは、当然聖なる山アルクロドに溢れる…。モンスター達の脅威です、…工作隊を出発させる。…そのお考えはまことに結構ですが、とても生きては辿り着けますまい」

ネルムは…、ニンマリと笑いました。

「で、あろ〜…?だからこその、…アーシャさまとぺぺさまなのだよ。…お二方に協力を要請し、工作隊を防衛していただければ。工作隊はアルクロド山頂に到着できる…、それとも"何か"の?お主ら僧達に、工作隊を守り切れるとでもゆ〜気かの…?」

悔し涙をこらえるダンツ、…しかし出来ないモノは出来ないのです。

…「残念ですが、不可能です。わしらにも武術の心得はありますが…、とても力及びませぬ」

ネルムは、扇子をピシャリと閉じました…。

「ダンツ、…お主にももはや依存はあるまいな。…アーシャさまぺぺさま、私から改めてお願い申す。このダンツと工作隊を…、アルクロド山頂までお届けしていただきたいのです」

慇懃に頭を下げるネルムに、アーシャは少し困ってしまいます…。

「そんな、…私こそカッとなってしまって。申し訳ありませんでした…。当然ですが、…お引き受け致します。…そ〜だ、僧正さま私からも一つお願いがあるのです」

ネルムは…、扇子を懐にしまいます。

「ありがとうございます、このダオカーナには…。モンスター達と渡り合って、…自分自身の身を守れるのは。…ダンツ一人だけなのです、そしてこのダオカーナもいつ闇の勢力に攻撃を受けるかわかりませんから。…、これ以上の手は割くのは難しいのですよ。ところで、アーシャさまの頼み事とあれば何なりと…」

アーシャは膝を揃えて正座し、…両手を着いて頭を下げました。

…「私が所持してゆる、伝説の装備三点セットを。このダオカーナ寺院に奉納していただきたいのです…、やはり神さまのみ元にお返ししよ〜と想うので」

ネルムは、嬉しそ〜に笑顔になります…。

「それはそれは、…素晴らしいお心がけです。…伝説の装備は、元々このダオカーナ寺院でお預かりしていたモノ。そ〜でしたか…、アーシャさまの手元でワレラ星人を退けたなら。伝説の装備にとっても、本望だったでしょう…」

ホッとするアーシャ、…伝説の装備をいつまでも。…自分のトコロに引き留めておくのは、不遜な気がしてゆたのでした。

「話は決まりましたな…、ではアーシャさまとぺぺさまは。出発の日まで、私の部屋をお使い下さい…。

ダンツも、…腹に据えたのか面をあげます。

…「それでは、僧正さまはどちらで休まれるのですか?」

既に…、立ちあがってゆるネルム。

「そりゃあ、僧房しかなかろう…。ずい分久し振りであるが、…キレイにしてあるかのう?」

アーシャ南の大陸に舞う その16

…アーシャがぺぺと控え室で待っていると、扉が開き。小間使いの僧が、…お辞儀をして入って来ました。「僧正さまのご準備が整ったのかな?」、と想うアーシャ…。

「お茶のおかわりは…、いかがですか?」

…アーシャは、手をふりふり遠慮をします。

「大丈夫です、…それより僧正さまはいかがされました?」

小間使いの僧は、丁寧な口調で受け応えしました…。

「も〜少々お待ち下さい…、じきご修行も終わりますから」

…それだけ伝えると、頭を下げて退出します。

「せっかくだから、…ゆっくりさせてもらおうかぺぺ?これを逃したら、次はいつになるかわからないし…」

アーシャがうとうとし始めた頃…、再び控え室の扉が開きました。

…「タイヘンお待たせ致しました、僧正さまも是非早くお会いしたいとの仰せです」

小間使いの僧に案内され、…渡り廊下を通って本堂に向かうアーシャとぺぺ。本堂の神さまの像の前は、アーシャとぺぺをいまかいまかと待つ僧達で溢れ返ってゆます…。

「お待ちしておりましたアーシャさま…、私が僧正のネルムです。…ま、ま、こちらにお座り下さい」

…ネルムは、藍色の鮮やかな僧衣を羽織ってゆました。アーシャとぺぺは、…促されるまま座ぶとんの上に腰を下ろします。

「不肖この私、僧正などとよばれておりますが…。まぁ大した者ではありません…、ごくつろぎ下さいアーシャさま。…今、お茶を運ばせますから」

アーシャが「せっかくですが」と口にしかけると、…ネルムはそれを手で制し。

「ご遠慮召されるなアーシャさま、伝説の勇者であらせられる以上…。本来なら盛大におもてなしたいのですが…、あいにくとここはお寺ですからな。…それは、大祭の時に」

すぐアーシャとぺぺの前に、…それぞれお茶が運ばれて来ました。

「その代わりとゆってはなんですが、ウチのお茶はちょっとこの辺では味わえませんぞ…。何しろ一大産地である…、ヌーテノア地方から直に取り寄せてますから」

…ほっこりするアーシャ、それはお茶が美味しかったからだけではなく。

ネルムが、…気性の難しい人では無かったからでもあります。

「ど〜ですかアーシャさま、南の大陸は…。まぁ中央大陸とは何もかも違いますから…、勝手の違いに戸惑われてなどおりませんか?」

アーシャはお茶を飲み干し、お茶碗を置きました…。

「とんでもありません、…南の大陸は食べ物や飲み物が美味しくて。…どれも、初めて味わうとは想えません」

ネルムは…、ハッハッハと快活に笑います。

「水がキレイなのです、この大陸は…。そして量が豊富でもある、…人々の暮らし振りは慎ましいモノですが。…とはゆえ、それが何よりでしょう?それこそ…、まさしく神さまの恩寵ですからな」

「そろそろ」、と想い本題を切り出すアーシャ…。

「ところでネルムさま、…この聖なる山アルクロドに兆す闇の気配について」

…その時です、顔を怒りで真っ赤に染めた僧が。一人…、本堂に怒鳴り込んで来ました。

「僧正さま、わしは断じて認めませんぞ…!!伝説の勇者などと呼ばれておっても、…所詮は女性に過ぎませぬ。…我らが聖なる山アルクロドに、決して入れてはなりますまい!」

アーシャは…、あまりに突然だったのでぽかんと呆気に取られてしまいます。

「ムムッ、よくよく見れば…。お主こそ、…伝説の勇者アーシャとやらではないか!!…ならば、手間が省けるとゆ〜モノだ。聖なる山アルクロドに…、女性が登るなど言語道断!さぁさ、早急に荷物をまとめられよ…!!」

ネルムは、…怒れる僧に顔色一つ変えません。

…「ちょうどゆい、ダンツお主にも話さなければな。座りなさい…、お主にアーシャさまとぺぺさまのご案内を引き受けて欲しいのだ」

「えっそれはちょっと!」と、アーシャは想いました…。

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その15

ホレロ、アーシャ、ぺぺの三人は、遂に聖なる山アルクロドの玄関口…。

ダオカーナ寺院の山門まで…、やって来ました。

…「やっと、ダオカーナ寺院まで辿り着いた。アーシャ、ぺぺ、…私は商売があるからここで失礼するよ。健闘を祈ってる、それじゃあね…」

ホレロはらくだを連れて…、僧房へと向かいます。

…「ホレロさんもお元気で、ここまでありがと〜ございました!!」

「プイプイ!」、…アーシャとぺぺはホレロを。

手を振って送りました、そして山門を潜ります…。山門は…、木を組んで作られていてとても巨大でした。

…「おい、あれはきっと」

「そ〜だ、…そ〜に違いない」

境内の中の参道を歩いてゆくと、多くの僧や巡礼者達とすれ違います…。ところが…、僧達の様子が「何か」変なのでした。…アーシャとぺぺを眺めては、ひそひそ小声で話し合ってゆます。アーシャは、…「ひょっとすると闇の気配?」と思いこ〜しました。

「私は、エスタハーンのアーシャ…。みなさん…、"何か"ご用ですか!!?」

…「エスタハーンのアーシャ」、そ〜聞くと僧達は一斉に歓声をあげます。

「みんな出て来い、…こちらのお方が伝説の勇者アーシャさまだぞ!これでこれで、ワレラ星人の闇の誘惑に対抗出来る…!!」

あちらの建物からもこちらの建物からも…、大勢の僧達が溢れるよ〜に集まって来て。

…アーシャとぺぺはすっかり取り囲まれてしまいました、中には感激のあまり泣き出す者もゆます。

「ご無礼、…タイヘン申し訳なくつかまつりました。我ら女性に慣れておらぬ故、どのよ〜にお声がけしたモノか迷っていたのでござる…。重ねてお詫び申し上げます…、みっともない真似を」

…それを聞くと、アーシャも疑いが解けてにっこりしました。

「私は気にしてませんから、…みなさんもお気になさらぬよ〜。それより、私がやって来た理由をご存知ならば…。僧正さまの元へと…、取り次いでもらえませんか?」

…別な僧が進みでます。

「私が、…ご案内致しましょう。我らもモチロンですが、僧正さまはワレラ星人の攻撃に、格別心を悩ましておいでです…。アーシャさまがいらしたと聞けば…、何よりお喜びでしょうから。…さ、みんな勤行にもどるんだ。あとは、…私が引き受けた!」

本殿へと案内される、アーシャとぺぺ…。本殿もやはり木を組んで作ってあり…、これもやはり立派でした。

…「こちらが、我がダオカーナの本殿なのですが。僧正さまは、…ただ今修行の最中でして。控室へご案内します、そちらで、しばらくお待ち下さい…」

本殿は入り口の扉が開いており…、アーシャが少しのぞくと。…中では多くの僧達が、神さまの像の前で座禅を組んでゆます。神さまの像も、…それはそれは立派で。本体は大理石で出来ており、黄金でふち取ってありました…。僧達はみな赤みがかった茶色の僧衣を着ていますが…、神さまの像の前に立ってお経を読み上げてる僧だけは。…鮮やかな藍色です、あの方が僧正さまでしょうか?大きな本殿の脇にある、…よく整理の行き届いた。こ綺麗な小屋に案内される、アーシャとぺぺ…。アーシャとぺぺが荷物を降ろして…、足を伸ばしてゆると。…すぐに、お茶が運ばれて来ます。

「あっ、…お気遣いなく。でも、ありがと〜ございます…」

小間使いの僧が退出すると…、アーシャはお茶を一口飲んでぺぺに告げました。

…「ねぇぺぺ、私この緑色のお茶。気に入っちゃった、…初めての時は"渋い"と想ったケド。口の中がとてもスッキリする、南の大陸のみなさんってグルメよね…?」

「プイプイ」…、荷物の中からサツマイモを取り出したぺぺは。

…そのまま、かぶりつきます。

 

 

 

 

アーシャ南の大陸に舞う その14

…ホレロ、アーシャ、ぺぺの3人は、さわやかな秋晴れの下。丘を越えてゆきました、…聖なる山アルクロドまであと少し。

「アーシャはエスタフ高原で育ったから、大きな山は見慣れたモノだろ〜…。ど〜だい…、疲れてやいないかい?」

…ぺぺを振り返る、アーシャ。

「私は大丈夫です、…ぺぺは?」

「プイプイ♪」、ぺぺはあまりに過ごしやすいので歌ってゆました…。

「ホレロさん…、聖なる山アルクロドに兆す。…闇の気配とは、いったいどんなモノなのですか?」

ホレロは振り返りません、…前を見ています。

「私も、詳しくは知らないんだ…。ただ…、何でもある夜突然稲妻が落ちて。…アルクロド山頂の、神さまの像が破壊されてしまったらしい。そして、…その時からお坊さん達の闇への堕落が始まったと。ど〜やらその稲妻は、自然現象ではなくワレラ星人からの攻撃だとゆ〜んだね…」

疑問に想ったアーシャは…、ホレロに問い返しました。

…「ワレラ星人に襲われたのは、何故ダオカーナ寺院ではなかったんでしょうね?」

ホレロは、…困った顔をします。

「私にはわからないなぁ、でもアルクロド山頂の神さまの像は…。ダオカーナ寺院を始めとする…、全ての修行するお坊さん達の。…心の拠りドコロなのさ、お坊さん達のお祈りは。私達の心に、…愛や勇気をもたらし。闇を退ける、そこを挫こ〜としたんじゃないだろうか…?アーシャ…、少し休も〜」

…ホレロは近くの木にらくだを結びつけ、アーシャとぺぺは道の脇に荷物を降ろしました。

「アーシャ、…落ち葉を集めてくれないか?それからぺぺ、その背中に山のよ〜に背負ってるサツマイモを…。二、三わけておくれ…、焼き芋にしよ〜」

…辺りには涼し〜風がそよそよ吹いています、アーシャは心秘かにメリクルを想ってゆました。

そ〜こうしてる間にも、…おイモは焼き上がります。

「これも、美味しい…!!ど〜してこ〜…、この南の大陸は食べるモノが何でも美味しいんでしょ〜♪」

…ほくほくの焼き芋を、ほお張るアーシャ。

「このサツマイモ自体は、…他の大陸でも栽培されてるけれど。こんな食べ方をするのは南の大陸だけだね、美味しいだろ〜…?」

ぺぺは…、ばふっとおならをしました。

 

ぺぺのおならのテーマ…

Let's get it on/Marvin Gaye

https://youtu.be/54LgyqSPfsQ

 

…「ホレロさんって、お住まいはどちらなんですか?」

アーシャは、…ずっと疑問に想ってゆたコトを思い切ってぶつけます。

「昔は、東の大陸の外れに実家があったんだがが…。今はないよ…、も〜処分してしまったんだ」

…この答えには、アーシャもびっくりでした。

「えっ、…それじゃぁずっと旅を続けてるんですか?」

ホレロは、ニコッと答えます…。

「気楽でゆいだろう…、世界中を回って。…こ〜して、美味しいモノを飲んだり食べたりして」

アーシャには、…ちょっと想像がつきませんでした。

「でも、アーシャに付き添っているのも…。決してボランティアじゃないんだよ…、これも商売のウチなんだから。…このらくだに積んである荷物、これをダオカーナ寺院のお坊さん達に売るんだ。お坊さん達は、…厳しい神さまの戒律を守ってる。だから、神さまのおん前で恥にならない…。気晴らしが必要なのさ…、例えばこれ。…これはアーシャにはただの薬草だろう、でもこっちでは花実草とゆって。よく水洗いして、…"おミソ"とゆ〜のをつけて生でかじるんだ。栄養満点で、とても元気がでるらしい…」

アーシャは…、思わず聞き惚れてゆます。

「…ホレロさんって、何でもご存知なんですね」

「プイプイ」

納得してうなずく、…ぺぺ。火を点けた落ち葉も、すでにあらかた燃えてしまいました。

「さぁ、ゆこうアーシャ、ぺぺ…。聖なる山アルクロドまで…、あと少し!」

…ホレロは、靴で踏んで火を消します。

 

 

 

おまけ

こんにちは、…鈴木よそゆきどぇ〜っす!!

「アーシャ南の大陸に舞う」、楽しんでいただけてますか…?

ここまで…、3曲程DJさせてもらいましたが。

…エンディングに向けて、一足早くYoutubeプレイ・リストを発表しました!

その名も、…「"アーシャ南の大陸に舞う"公式Sonud track」!!

もしよろしければ、お聴きいただいて最後の曲がど〜かかるのか…?

ご想像してもらうのも…、作者としては何よりの喜びです!

…それでは、よろしくお願いします!!!

 

「アーシャ南の大陸に舞う」公式Sound track…

https://youtube.com/playlist?list=PLWCErtfD9n75NUwwVYny7ZQUngBeBJXg0

 

アーシャ南の大陸に舞う その13

トコロ変わって、ここはダオカーナ寺院の僧房…。ダオカーナ寺院の僧房は…、倉庫の代わりも兼ねていましたから。…神さまに捧げる、さまざまな宝物に囲まれて。た〜っくさんの僧が、…お布団をしいてゆわば縦横に並んで寝ておりました。

「う〜んう〜ん、誰か誰か助けてくれ…」

そのウチ…、一人の僧がうめき始めます。…しかしまだ、誰もそれには気づいてはいなません。

「いったいここはどこなんだ、…誰かいないのか!!?」

僧は、夢を見ていたのでした…。光の一筋も射さない…、洞窟の中をひたすらさまよっています。

…「わしは、ど〜なってしまったんじゃ。みんなはど〜した!?」

ひたすら、…前に向かって歩みを進めると。どこからともなく、女性の声がしました…。

「誰かの声がする…、お〜いわしの名はダンツ。…もし、わしの声が聞こえるのなら返事をしてくれぇ!!」

声を頼りに前進し続けると、…ほのかな光が目に入ります。それは、うずくまってゆる女性でした…。彼女が…、光輝いていたのです。

…「先程から聞こえていたのは、あなたの声だったか。申し訳ないが、…わしにはワケがわからん。あなたは、"何か"ご存知ないだろ〜か…?」

「よく…、存じておりますわ。…ここは、私とあなたさまの永遠の楽園でございます」

光輝く彼女が、…面をあげるとそれは息を飲むよ〜な美しさでした。ダンツは、身を震わせると思わず見入ってしまいます…。長い金髪に…、真っ白なお肌。…パチッとしたお目に、スッと通る鼻立ち。

「何ゆうとるんじゃ、…わしは僧じゃぞ!」

気持ちを惹き込まれたのも束の間、ダンツはすぐに正気を取り戻しました…。しかし…、金髪の彼女は両の腕をダンツの首にしなだれかけます。

…「私達は、神さまからのご祝福により。夫婦となるべく、…運命づけられておりますの」

ふとダンツが目をやると、金髪の彼女は薄いローブを羽織ってゆるだけで…。その他には…、何も身につけてはいませんでした。

…「結ばれましょう、ダンツさま!!さぁ、…早く誓いのキスを!」

とっさに、金髪の彼女を突き飛ばすダンツ…。

「バカゆっちゃいかん…、わしは神さまに一生を捧げたんじゃ。…女体なぞ、言語道断!!」

ダンツは、…反対の方向に一目散に駆け出します。

「あらあら…、ツれないお方。でも、私から逃げよ〜なんて…。あまりにも、…甘いお考えね」

…金髪の彼女は、その淫らな表情をあらわにし。美しく見えた金髪は…、一斉にどこまでも伸びてダンツを追いました。

「神さまわしをお助け下さい、わしはこれまで一心にあなたのお為に精進してまいりました…!」

懸命に走るダンツの足元に、…彼女の金髪が巻きつきます。

…「ダンツさま、早く私を愛して下さいまし。私の胸は…、熱くあなたさまを望んでおります!!」

「おいっダンツしっかりしろ、ダンツ…!」

ダンツの意識は、…急に現に引き戻されました。…僧房の僧達は、みな心配そ〜にダンツの周りに集まってゆます。

「わしは…、わしは。あぁ、何じゃ夢じゃったか…。しかし、…これでわしは7日7晩同じよ〜な夢をみておる。…これが、わしの本性なんじゃろか?」

ダンツは…、そ〜思うと恥ずかしくて死にたくなりました。

「弱気をゆうな、ダンツ…!!僧正さまが仰ったろう、…これはワレラ星人の呪い。…ワレラ星人は、今お前を闇に堕落させよ〜と狙っているのだ」

別な僧が…、口を挟みます。

「しかし、この夢何とかならないのでしょ〜か…。始まりは、…ザハス殿から。…すでに、何人が闇に堕落させられたコトか。もしこの聖なる山アルクロドから祈りが失われれば、世界中の人々の心は闇に染まってしまう…」

また…、別な僧が発言しました。

…「みんな、元気を出せ!僧正さまが仰ったろう、…中央大陸のラパダーナ王国を救った。あの伝説の勇者アーシャさまが、こちらに向かわれてゆると…。それまでの辛抱だ…、あと少しだぞ!!」

…「伝説の勇者アーシャ」、その名が出るとどの僧もみんな勇気が湧いて来たのです。