2015-01-01から1年間の記事一覧

Black Swan -overload- 15

ブラック・スワンとハウシンカとミミカの五人は、船に乗っている。 大陸と大陸を結ぶ商船で、客室もあった。 ゼクは甲板で、風に当たっていた。 …海はいい。 ゼクが物思いに耽っていると、甲板にローランドの声が響き渡る。 「ゼク、俺と勝負しろ!」 訳がわ…

Black Swan -overload- 14

五人はキャンプをたたんで、出発した。 先頭はゼクとローランド。 その後ろにハウシンカとミミカが続き、最後尾はソクロだ。 五人は黙々と進んでいく。 「今日中には、港に着くかしら?」 ハウシンカがゼクに尋ねた。 「昼迄には着くだろう。でも船は夕方に…

Black Swan -overioad- 13

ブラック・スワンの三人は、首都シュメクのザハイム研究所本部に向かって出発するハウシンカとミミカと共に、ヘムの村を発った。 ヘムの村からオルト山の麓の港まで、徒歩での移動だ。 ブラック・スワンの三人は自分で荷物を担いで歩くが、ハウシンカとミミ…

Black Swan -overload- 12

今は、聖コノン騎士団の作戦会議が行われている。 砦の会議室に隊長クラスの騎士達が集まり、テーブルを囲んでいた。 指揮官の騎士が、テーブル上の地図を指揮棒で指し示しながら、隊長達に現状を説明する。 「今回の、ザハイム研究所発掘現場への二個中隊の…

Black Swan -overload- 11

聖コノン騎士団の駐屯する砦は、ヘムの村から見てオルト山の反対側にあった。港町ミルムと隣り合っていて、物資などはそこから運んでいる。セトは砦の最上階の団長室で、事務仕事に追われていた。目を通さなければならない書類の山に囲まれて、頭を掻く。「…

Black Swan -overload- 10

「何よ、あなた!ついて来ないでったら。」 ハウシンカはプリプリ怒りながら、山道をヘムの村に向かって歩いて行く。 「しょうがねーだろ、これも任務なんだよ。」 ゼクはその少し後を、離れてハウシンカに着いて行く。 ハウシンカは、今日は非番だ。 ふわっ…

Black Swan -overload- 9

「ん、ここはどこだ…?」 ゼクが目を覚ますと、ミミカが甲高い声を上げた。 「気が付いたんですね、ゼクさん!よかった…。」 ゼクが周りを見渡すと、部屋には幾つかのベッドが設えられていて、薬の匂いが充満している。 ゼクの他に二人、ベッドに横たわって…

Black Swan -overload- 8

ゼクは、恐怖した。彼にはわかるのだ。奴には勝てない。しかし、退くことは出来なかった。…まあ、やれるだけのことをやるだけだな。狗香炉は、圧倒的な闘志を放ちながら、ゼクの前に立ちはだかっている。ゼクは、自分から仕掛ける。浅い間合いで、二、三刃を…

Black Swan -overload- 7

ゼクは、登山道の脇の茂みに潜んでいた。 みんなを配置してから、約一時間…。 馬の蹄が地面を蹴る音が響いてきた。 「来たな。」 針金のトラップは、成功だ。 目の前で二騎落馬した。 ゼクは飛び出そうとするが、再び蹄の音が聞こえてくる。 ゼクが茂みの中…

Black Swan -overload- 6

ハウシンカは再び横になり、毛布を体にかけようとした。 「主任、主任!開けて下さい、緊急事態です!」 声から察するに、ミミカ研究員だろう。 ハウシンカは、ゾッとした。 遺跡が、何かを起こしてしまったのでは? 急いでドアを開けた。 「あの…その…、大…

Black Swan -overload- 5

ハウシンカは、夢を見ている。あの日、転送機の試運転を行った時、先ず自分が乗った。その時に見えたビジョンが、繰り返し夢となって現れる。夜、どこかの土手沿いを青年が歩いている。青年は右手で大きな杭を肩に担ぎ、左手は胸の辺りで光り輝く「何か」を…

Black Swan -overload- 4

ブラック・スワンの三人は船を降りた後、徒歩でオルト山を登っていた。ヘムの村は、このオルト山の中腹にある。案内人は、慣れない山道を登るブラック・スワンを気遣いながら、ゆっくりとしたペースで進んでいた。「しんどい…。俺は反対したはずだ、初めから…

Black Swan -overload- 3

ブラック・スワンは、旅の途上である。 駅馬車に揺られながら、ヘムの村を目指していた。 他に乗客はいない、乗っているのは三人だけだ。 カトラナズの首都シュレクから、辺境の地にあるヘムの村までは、先ず駅馬車を乗り継いで港街オクトパス・ガーデンまで…

Black Swan -overload- 2

ゼク達は、カトラナズの国の王都シュメクに住居を構えていた。 カトラナズは平和な国ではあったが、様々な人々が住んでいたし、どこもかしこも清潔で清浄であった訳ではない。 やはり雑多な繁華街があり、冒険者の多くはそこに出入りしていた。 繁華街の外れ…

Black Swan -overload- 1

オープニング・テーマ… 「Bad」 The Bug ft.Flowdanhttps://youtu.be/b9_dD2wvhDI ここは、王ダヴィドの治めるカトラナズの国。 人々の記憶の中にある、もう一つの現実である。 その国で、彼らは冒険者と呼ばれていた。 依頼主から任務を引き受け、その達成…

寸劇 最高のプレゼント

以前勤めていた施設の友人に頼まれて、クリスマス会の演劇用の脚本を書いてみました。 ついでなので、アップしときます シーン1 今夜はクリスマス。 サンタのおじいさんは、トナカイの引くそりに乗って、夜空を忙しく駆け巡っておりました。 (サンタ、そりに…

再臨物語(Song About Distance) 後編

「にじぞう」 レイ・ハラカミこそ我が同胞だから https://youtu.be/xH6wEzLZ5S0 良太は、旅路の果てに、介護の仕事に就いた。 彼は、自分の性格上の長所それは才能なのかもしれないが、そういうものがあるならそれは、人からよく言われた「優しさ」しかない…

再臨物語(Song About Distance) 前編

オープニング・テーマ 「In 1 day(Whole world changed)」 Arrested Development https://youtu.be/rRFeXbdBFTE 今より少し前の、とは言っても現代の日本に、やがて主となる赤子が生まれました。 両親はクリスチャンで、正教会に通っていましたが、普通の人…

ちょうどいい隣人(Folding Space) 3

裕一は喫煙所で修司と、ソープランドの話に興じていた。 「いや〜、マジでよかったよ!最高だったぜ。」 「結構、ハズレも多いって言うからなあ…。」 裕一は、シュウェップスのシトラス味を、口にした。 「本当だよ、あんないい思いが出来るなら、また行って…

ちょうどいい隣人(Folding Space) 2

裕一は、御茶ノ水のディスク・ユニオンでバイトしていた。 店の中には、Stevie Wonder「Innervisions」のレコードが響いている。 友人の細川修司は、頭を揺ら揺らと動かしていた。 「いいレコードだよな!クソぅ、オレこのレコードマジで欲しいよ…。」 裕一…

ちょうどいい隣人(Folding Space) 1

オープニング・テーマ 「It runs through me」 Tom Misch https://youtu.be/ilNEqmfUyzI 遠藤裕一は、電話の受話器越しに、愛を告げた。 「愛穂、好きだ…。」 河原愛穂もまた、受話器に答えた。 「ゴメン…、裕一は大切な友達なの。」 裕一は受話器を置いて、…

すばらしい日々(Grunge Spirits) 13

ラフィーネは、ノートPCのIBM(Lenovo) ThinkPadを開きメールに添付してあるアドレスを、クリックした。 youtubeのサイトが開き…、それはゼロムの夏祭りの演奏だ。 拙いと演奏と、必死な歌声。 ゼロムという人柄が、そのまま現れたステージだった。 ラフィー…

すばらしい日々(Grunge Spirits) 12

夏祭りの準備は、順調に進んでいた。 広場の中央にはやぐらが組まれ、そこに大太鼓が設置されている。 屋台も幾つか並んでいて、カラフルな電球に照らされていた。 ゼロムは、緊張していた。 彼は上がり症で、吐きそうだった。 ステージの様な、大袈裟な物が…

すばらしい日々(Grunge Spirits) 11

ファロムは、ゼロムに連れられて野沢温泉村に、遊びに来ていた。 ゼロムはなんの計画も立てなかったから、到着した時はもうお昼になっていた。 「腹減ったよな〜。」 「当たり前でしょ!」 ファロムが突っ込めるのは…、ゼロムだけだ。 「どこで、食べよう?…

すばらしい日々(Grunge Spirits) 10

ラフィーネは、ゼロムが来るのを待っていた。サークルの仲間達は、既にタクシーに乗り込んでいる…。サークルの仲間達、特に彼女の恋人は、ラフィーネが何故こんなにもあの男に執着するのか疑問だったし、…勿論面白く思っていなかった。恋人は、ラフィーネの…

すばらしい日々(Grunge Spirits) 9

別荘でノンビリしているゼロムの元に、三人の女性が現れた。いや、正確に言えば四人である。一人はまだ幼く、お母さんの手にぶら下がっていた。残りの三人の女性は、自治会のご意見番だ。三者三様に気が強く、滅多な事では意見を曲げない。年の若い女性が、…

すばらしい日々(Grunge Spirits) 8

ファロムは、別荘にいるゼロムに水筒を届けた。 中身は、この間買ったブルーマウンテン…。 高かった。 お母さんにも、怒られた。 でも、飲んでみたかったのだ。 …美味しい、本当に。 ファロムは…、コーヒーにいつもオレオを二枚合わせた。 それで、ゼロムに…

すばらしい日々(Grunge Spirits) 7

夕方、ゼロムは隣の村の公衆浴場に居た。 人前で、裸を晒すのは恥ずかしい。 そう思ったのは最初だけで、今は何とも思わなかった。 子供に若者、おじさんもおじいさんもいる。 入湯料は、入り口に木箱が置いてあり、勝手に支払うシステムである。 木箱には、…

すばらしい日々(Grunge Spirits) 6

ゼロムは、散歩していて見つけたそば屋で、食事していた。 ゼロムは、長野にやって来るまで、食にはあまり興味を魅かれなかった。 しかし、空気も水も美味かったせいであろう、何軒かの美味しい定食屋さんに巡り会う内に、舌も肥え、美味しさという悦びを見…

すばらしい日々(Grunge Spirits) 5

ゼロムはよく、雑貨屋さんに立ち寄った。 彼はそれしか買わなかったが、お店のおばあちゃんもそれはよくわかっていた。 時にファロムは14才で、中学校に通っていた。 引っ込み思案ではあったが、友達付き合いも悪くはなくごく普通である しかし、何故か計算…