お母さんのお誕生日大作戦だから

小学5年生の飯高安和(いいだかやすのり)は、…夕ごはんを食べた後宿題の算数を解いてゆた。

…「直方体の体積はたて×よこ×高さだから、まだいたいこのぐらいかな?」

安和は若干の後ろめたさと共に…、ノートと教科書を閉じる。

「宿題は今日はいいんだ、もっと大切なコトがぼくを待ってるんだから…」

妹と一緒の2階にある子供部屋を出て、…階段を降りる安和。

…「安和、宿題終わったの〜?それなら…、早くお風呂に入っちゃって」

安和のお母さんが声をかける、普段ならゆう通りするのだが…。

「智美(ともみ)、…ちょっと話がある。部屋まで、来てくれ…」

と…、妹の智美を子供部屋に呼んだ。

…「ブー、何でちお兄ちゃん話って?」

智美はTVを観てゆる途中だったから、…続きが気になって仕方ない。

「いいか智美、明日はお母さんの誕生日だろ…?」

智美は…、嬉しそうにバンザイした。

…「そうでち、お父さんが美味ちいケーキを買って来てくれるんでち。」

安和は、…真剣な面持ちで智美に告げる。

「だからぼくは、カレー・ライスを作ってプレゼントしようと想うんだ…。明日智美が帰って来たら…、ぼくはカレー・ライスを作ってる。…だから、そのコトは秘密にしておいてくれよ」

途端に、…泣きそうになる智美。

「お兄ちゃんまだ子供だから、ガス・コンロ使っちゃいけないんでち…。包丁だって…、あぶないんでちよ」

…うつむきながら、安和は確信を込めた。

「ぼくなら大丈夫、…一度家庭科の調理実習で演ってるから。そんなコトよりもバレたら全て終わりだ、黙っててくれよ…?」

智美はコロッと泣きやむと…、途端に笑顔になる。

「…ぢゃあたち、お兄ちゃんのゆ〜コト聞いて。お手伝いするんでちブー、…何だか楽ちくなって来まちたね」

その時一階から、お母さんの怒る声が聞こえた…。

「よしわかった…、それでいいから。…明日帰って来たら、買い物にゆくぞ?」

そして、…安和はお風呂の支度をして下に降りる。

 

次の日、先に家に帰った妹の智美は安和を待ってゆた…。

「ただいま智美…、ちょっと待ってろ今お金を取ってくる。」

…安和は学習机の引き出しから、100円玉を五枚取り出す。

「これはこの日に備えて、…ぼくが一生懸命貯めた500円だ。これで、お肉とカレー・ルーを買うぞ…。」

不思議そうに安和を眺める…、智美。

…「お兄ちゃん、カレー・ルーなら戸棚に入ってるんでち?」

安和は、…首を横に振った。

「ウチにあるカレー・ルーは、甘口だろ…?お母さんは…、ぼくらに合わせて甘口を食べてるんだ。…ホントは大人なんだから、中辛の方が好きに決まってる」

…そして二人は、近所のスーパーまで歩いて出かけた。

中辛のカレー・ルーをカゴに入れると、…次はいよいよお肉売り場である。

「本当は牛肉が欲しいケド、ぼくのお小遣いじゃ買えないから豚肉の小間切れを買うよ…。智美…、脂身の多いお肉が美味しいってお母さんゆってたよ」

…困った顔で聞き返す、智美。

「ブー脂身って何でち、…お兄ちゃん?」

安和は、得意になって答えた…。

「お肉の白いトコロだよ…、お肉には赤いトコと白いトコあるだろ?…白い部分が多ければ多いほど、食べ応えがあるんだって」

しかしそ〜はゆってみたモノの、…安和にはどれがど〜違うのか見ても全然わからなかった。

安和は悩みに悩んだがこれ以上時間はかけられない、その時智美が一つのパックを安和に手渡す…。

「お兄ちゃん…、あたちが見た感じ。…これがイチバン脂身が多いんでちブー」

ゆわれてみれば確かに、…際立ってはいないがうっすらと白い部分が多かった。

安和は智美を連れて、レジを済ませるとおウチに帰った…。

 

おウチに着いた二人は…、早速キッチンに向かう。

…「智美ぼくはお米研ぐから、お前お野菜の皮をむいててくれ」

智美はキッチンまで背が届かなかったから、…床に新聞紙を広げボールを置いて。

ピラーで皮をむきはじめた、安和はお米を研ぎ始めたが…。

ある程度慣れてゆた…、何度か調理実習で演ってゆたから。

…研いだお米の入ったお釜を炊飯器にセットして「炊飯」ボタンを押すと、智美のむいたお野菜を手に取り。

包丁で切り始めた、…これは慎重に運ばなければゆけない。

まだ慣れてゆない安和は、時間をかけてお野菜を切ったが…。

ど〜にも形が均一にならない…、だがあまり時間をかけると。

…お母さんがお仕事から帰って来てしまう、だから遅くとも。

そこまでには、…お鍋を火にかけてゆる必要があった。

お野菜を切り終えた安和は、お肉とお野菜を炒める為にガス・コンロの火を点けようとする…。

「ダメだ…、何で火が点かないんだ?…まさか、故障してるのか」

安和が何度スイッチを入れても、…ガス・コンロはシーシーゆうばかりで火は点かなかった。

焦る安和、しかしその時家庭科の先生の顔が浮かぶ…。

「ガス・コンロは使い終わったら…、必ず元栓を締めるよ〜に」

…「それだ」と想った、お母さんは元栓を締めてるからガス・コンロに火が点かないんだ。

ガス・コンロの裏側を覗くと、…確かに元栓は締まってる。

指先でツまんで元栓を開き、スイッチを入れると…。

やっと火が点いた…、そして安和はお肉とお野菜を炒め始め。

…あとは順調に進む、さぁこれでお母さんの帰りを待つだけだ。

 

30分程待ってゆると、…やがてお母さんが帰って来る。

「ただいま〜、あれ何このいい香り…?あなた…、まさか早く上がったの?」

…キッチンにお母さんがやって来るのを、安和と智美はいまかいまかと待った。

「ジャンジャジャ〜ン、…お母さんお誕生日おめでとう!!!」

安和と智美は精一杯囃したが、お母さんは目の色を変えて怒る…。

「バカッ…、何やってんの!!…まだ子供なのに、包丁使って火を点けるなんて!」

智美は、…すぐに泣き出してしまった。

「びぇ〜ん、お母さんごめんなちゃい〜」

しかし、安和は負けずに自らの行為の正当性を主張する…。

「お母さん…、ガスも包丁も何度か調理実習で使ってるから。…それに見てよ、わざわざ中辛のカレー・ルーを買って来たんだよ?」

お買い物の話が出ると、…お母さんの怒りにますます油を注いだ。

「あなた、そのお金はど〜したの…?そんなお金…、持ってないでしょ?」

…安和は、「待ってました」と想った。

「貯めたんだよ、…お母さん。でもあんまり貯まらなかったから、こ〜ゆうプレゼントになったのさ…!!!」

それを聞いた時…、お母さんの怒りは解ける。

…「まぁそ〜よね、そんなに上げてないから。まぁもうやったコトはしかたないわ、…でももう二度としないでね。寿命が三年は縮んだわ…」

イタズラっぽく笑う…、安和。

「あれっ…、お母さん嬉しくないの?…まだ、お礼を聞いてないよ。」

お母さんは、…肩の力が抜けた。

「そうねゴメンなさい、ありがとうとっても嬉しいわ…。でもこれからは…、どんな理由があっても。…お父さんとお母さんの見てないトコロで、ガスと包丁は使っちゃダメよ。」

調子に乗った安和は、…軽口を叩いた。

「えっ、それじゃ調理実習はど〜するの…?」

呆れた顔で…、注意するお母さん。

…「へ理屈ゆ〜んじゃないの。ところで、…智美中辛のカレー・ライス食べられるのかしら?」

お母さんはそ〜ゆうと、お鍋からカレーのルーを小皿に一口よそって智美に渡した…。

「ブぎょぇ〜…、あたちまだ二年生でちから」

…お財布から千円取り出し、お母さんは安和に渡す。

「安和、…悪いケドこれから智美とスーパーにゆって。智美の好きなお惣菜を一つ買ってやって…。それから今日のプレゼントのお礼に…、二人共好きなアイス・クリーム買っていいわよ」

…安和は、飛び上がって喜んだ。

「ほらな智美、…ぼくのゆった通り。お母さん喜んだろう、さいくぞ…。何のアイス・クリームにしようかな…、そうだ今日の気分は丸永の"あいす・まんじゅう"だな!!!」

 

テーマ…

「Tell me baby」 Red Hot Chili Peppers

https://youtu.be/oDNcL1VP3rY