再臨物語again〜春馬町より愛を込めて〜 その3

電車は、…よ〜やく大宮駅へと乗り入れる。…良太はバック・パックから、春日部校でもらっておいた。大宮校のパンフレットを取り出した…、腕時計に目をやると。一時限目の授業が終わってしまうまで、あと15分しかない…。

「急がんといかんわ、…でも場所が」

駆け出したい気分の良太だが、…夏期講習は今日が初日。…大宮校にはまだゆったコトがなく、ついでに大宮にやって来るのも久し振りである。

「確か…、駅の反対側にあるんだよなこの階段か?」

東武野田線の改札をくぐり、細い通路を抜けると…。見えて来た階段をあがってみる、…すると人でごった返していた。

…「人がすげぇや、大宮は大きな街なんだな」

これでは…、さすがに良太も走りよ〜がない。人混みに流されながら、何とか西口に辿り着く…。西口には、…そごうと丸井があり人で賑わってゆる。…パンフレットの地図を、改めて確認する良太。

「ここから線路沿いに南と…、多分この道だろ〜と」

線路沿いに続く道には、あまり人がいなかったから…。良太は思いっ切り駆け出したのである、…普段から走り込んでゆるのだから。…すると、駅の喧噪から少し離れた。落ち着いた場所に建つ、大宮校が視界に入った。自分と同じぐらいの年頃の…、恐らく生徒が出たり入ったりしている。大宮校の3階まで一気に駆けあがると、良太は思った…。

(あれっも〜教室入んない方がゆいかな、…みんなの迷惑になるし?)

…授業の行われてる教室を前に、惑う良太。実際に…、時間はあと5分しかないのである。

「失礼しま〜す…」

でもここまで来たんだから、…と良太は教室の入り口を開いた。…あらかじめ指定されてゆる、自分の席に座る。隣の人のノートを覗くと…、書いてある書いてある。ど〜やら、充実した授業だったらしい…。

(もったいないな〜、…あそうだ)

…誰かにノート借りよ〜、そ〜想う良太。それで…、まるまる写して自習すれば授業出たのと同じジャン。ところが誰にしよ〜か迷う、そのウチに授業は終わり…。生徒達は、…次々と席を立ってゆく。

…(い〜や、隣の人で。断られたら…、他を当たろ〜)

「すいません…」

その時、…良太は初めて隣の席の人の顔を見た。

…(か、可愛い)

隣の席の娘は…、おとなしそ〜な雰囲気の。ショート・カットで、目が細く目じりが垂れてゆる…。この、…「目が細くて目じりが垂れてゆる」のが。…良太の好みの、ストライク・ゾーンド真ン中なのである。

「遅刻しちゃったんで…、一時限目のノートあとで写させてもらえませんか?」

良太は、内心の動揺を悟られないよ〜に努めて冷静に振る舞う…。

「あぁゆいですよ、…次の授業終わって昼休みなら」

…隣の席の娘は、二つ返事で快諾してくれた。

(嬉しいなぁ…、何て可愛らしい性格なんだろ)

彼女のその気前のよさも、良太の心を的確に捉えてゆる…。やがて始まった、…次の授業も引き続き英語だったが。…ほとんど何も、良太の頭に入って来ない。それは…、良太が英語を苦手にしていた所為ではないのだ。この一時限、つまり1時間半…。良太は、…何度も何度も隣の席の娘を。…ちらちら眺めては、全くうわの空で過ごしてしまう。意志の力で…、黒板に書いてある。内容だけは、一応ノートに書き写したが…。