…「介護のお仕事調子はど〜ですか、良太くん?」
今日はお仕事おやすみなので、…良太は勝美とおやすみ合わせてデートである。
「おれさ、昨日初めておムツ交換入ったんだ…」
勝美と春日部駅で待ち合わせし…、東武伊勢崎線のホームで電車を待ってゆた。…本日のデートはお茶の水にある、Disk UnionのJazz専門館でレコードを漁るつもりなのだ。
「キレイな話じゃなくて申し訳ないんだケド、…尿をとるパッドにおしっこが出ちゃってたんだ」
介護のお仕事について語れば、ど〜しても尿や便がつきまとう…。それは仕方ないのだが…、勝美にすまないと想う良太である。
…「そんなの気にしないで下さい、私だって保育士志望です。赤ちゃんのおムツ、…開けたりしますから」
そんなお話が勝美に通じるのが、良太にとっては何よりだ…。
「尿をとるパッドに…、おしっこ出てるの見た時。…"人間ってお水飲むとおしっこ出るんだ"って気がついたよ、当たり前なんだけれども」
ホームに電車が到着し、…良太と勝美は乗り込む。平日の東武伊勢崎線上りは、そこそこに混んでゆて座れなかった…。二人は並んで…、吊り革をつかむ。
…「いつも自分でしてるのに、そんなの全然意識したコトなかったんだ。あのさ、…人間はお水飲まないと死んじゃうジャン?」
勝美はうんうんうなずいた、良太は自分の話が面白いとゆ〜自信がない…。
「その飲んだお水が…、体の中で摂取されて。…こんな風に排出される、いやそりゃキレイなモンじゃない。でも、…人間の体はそ〜ゆう構造になってるんだよね」
自分の伝えたいイメージを、頭で必死にまとめる良太…。それを黙って…、勝美は耳を傾けた。
…「うまくゆえないけれど、T.V.をつけるとニュースやってるじゃない?事故があったとか政治がど〜の、…みたいな。でもそれはヴァーチャルな情報でさ、人間は先ず"お水飲んだらおしっこ出る"んだよ…」
ピンと勝美には来る…、それは良太にもわかった。
…「それがわかった時に、"人間は自然の中で生きてて。そのサイクルで循環してる"のが、…おれにとってハッキリしたのね。それが、事実なんだって…」
良太は…、自分の話にまとまりがないと自覚している。…しかし保育士を目指す勝美には、他人事ではない現実として受け取られた。それからも二人は、…取りとめもなくおしゃべりを続ける。その中には、こんな話題もあった…。
「私今度大学卒業したら…、一人暮らし始めるんです」
…また一歩自分の先を進む勝美に、驚く良太。
「えっ勤める保育園が、…ご実家から遠いの?」
困ったよ〜に、勝美は笑った…。
「何ゆってるんですか良太くん…、まだ何も決まってないですから。…ただ私のお父さんが、"大学出たら一人暮らしなさい"って。"お金は少しぐらいなら出してあげるから"、…ってゆってたんです」
良太は、「鈴代家厳しいなぁ」とまたしてもびっくりである…。
「だって勝美さん…、ご実家の家事手伝ってるんでしょ。…それは、ど〜するの?」
おずおず尋ねる、…良太。
「そんな、だってウチのお母さんはまだまだ元気ですモノ…。私の手伝いなんて…、なくてもど〜にでもなっちゃいますよ」
…う〜んとモヤモヤする良太、良太自身も一人暮らしに憧れはあったが。300枚を超えよ〜とする、…レコード・コレクションをど〜したモノかわからなかった。