どらねこクエスト〜はらペコ勇者の大冒険!!〜 その28

…「すき焼き大作戦」のあと片づけを終えると、戦士クリムはおなかいっぱいなのですぐにテントでぐーぐーねてしまいました。神官マルミと魔女ケレナはまだ起きてゆて、…たき火を囲んで折りたたみ式のイスに座っています。2人共無言でしたが、いがみ合うよ〜なトゲトゲした気持ちはも〜ありません…。何か話そ〜と想い…、神官マルミは思いつくままを口にしました。

…「ケレナさんはコーヒー、ブラックしか飲まれないんですか?」

急に話しかけられて魔女ケレナもビックリしましたが、…深く考えず返事をします。

「お砂糖とかミルクは、太っちゃうから…。アンタはど〜なの…、やっぱりレモン・ティーが好きなの?」

…特にこだわりはない、と神官マルミは説明しました。それからも、…ネコミミ娘同士のおしゃべりは続きます。好きな食べモノについてや、いってみたい観光地…。好きなタイプの人についてなど取りとめのないお話でした。そのウチに…、戦士クリムが話題にのぼりました。…戦士クリムの勇気や穏やかさ、それにちょっとおトボけなトコ。そしてさっきのすき焼きのお話になり、…それからお母さんのお話になります。神官マルミは、魔女ケレナに打ち明けました…。

「私のお母さんは…、とってもしつけに厳しかったんですよ。…家族でゆてもいつも敬語座ったらいつも正座、お家に帰ればずっとお手伝い。逆らうなんて思いもよりませんでした、…ケレナさんのお母さんはどんな方ですか?」

それを聞くと、魔女ケレナは一瞬言葉に詰まります…。やがて口を開くと…、こ〜語り始めました。

…「アタシのお母さんは、"オー・ラロル"に成っちゃったんだ」

いけないコトを尋ねてしまった、…神官マルミはすぐに気がつきます。

「ごめんなさいケレナさん、何も知らなくて…。つい…、許して下さい」

…再び顔をあげた魔女ケレナは、朗らかでした。

「ゆいの、…も〜昔のコトだから」

2人の間に、再び沈黙がよこたわります…。たき火はまだ燃えていますが…、だいぶ火は弱くなってゆます。…魔女ケレナは立ちあがると、サーバーに残ってるコーヒーをマグ・カップに空けて。冷え切ったコーヒーを一口口にすると、…折りたたみ式のイスに戻り再び口を開きました。

「アタシが、ウンと小さい頃の話…。お母さんは占い師で…、よく当たるって評判だったんだ」

…神官マルミのカップに残るレモン・ティーも。もはや温かくはありません。

「ある日お母さんの占いに、…街に洪水がおし寄せるって出たの。そして街の人達を逃す為に、必死に駆け回って…。気がついたら自分が逃げ遅れてた…、そんなお母さんだった」

…何か慰めの言葉を、とも神官マルミは思いましたが。それは却って失礼な気がして、…静かに魔女ケレナのお話に耳を傾けます。

「それから、アタシは一人ぼっち…。生きてく為にはドロボウもしたよ…、仕様がなかったんだ。…そして魔法を覚えた、自分の力で生きていく為に。アタシに先生はゆない、…自分で学んだんだから」

夜空には星がチカチカ輝き、まるで満天の星が2人のお話に耳を傾けているかのよ〜でした…。改めて魔女ケレナに謝る…、神官マルミ。

…「ケレナさん本当にごめんなさい、私あなたについて何も知らないのに勝手に決めつけて。話して下さってありがと〜、…あなたの人柄が少しだけ理解出来ました」

魔女ケレナは、照れたよ〜に頭をポリポリかきました…。

「そんな別に大した話じゃないよ…、誰にだってツラいコトも悲しいコトもあるんだ。…でもアタシは負けない、絶対シアワセになってやるんだ!!」

久し振りに、…神官マルミは微笑みを取り戻します。

「これからもよろしくお願いします、力を合わせて地獄の破壊ねこ"メギムトゥ"をきっと倒しましょ〜…!」

片方の手をだ差し出す…、神官マルミ。

…その手をしばらく魔女ケレナは眺めていましたが、意を決してバシッと取りました。

「こちらこそ、…でもアタシが仲間になったからには。バンバン稼ぐからねモタモタしてんじゃないよ、しっかり着いて来てね神官さん…」

神官マルミはよ〜やく…、魔女ケレナのいい方を理解したのでした。